寿命持たぬ少女は生きるために悪人狩りをする。
ぎゅうどん
私は生きるために悪人を狩る。
"ぎゃぁぁ!!"
とある小さな村が盗賊団に襲撃されて、老若男女問わず無惨にも殺されていき、生き残ったのは近くの森に逃げた親子三人だけだった。
「村が真っ赤に燃えてるよ…」
「そうね…」
「盗賊達め、どこまで残酷な奴らなんだ…」
「村のみんな殺されちゃったのかな…?」
「アルア…」
そう尋ねる娘に母親が何も答えられない代わりに涙を流しながらそっと抱きしめた。
「お母さん…」
「あなた、これからどうしますか…?」
「親戚のロウ叔父さんの所に行こう、事情を話せば匿ってくれるはずだ。」
「わかりました、行くわよ、アルア。」
「うん…」
しかし、そんな親子の前に村から森に逃げた奴がいないか探しにきた盗賊団の男達三人が現れた。
「やっぱり森に逃げていた村人がいたぞ!」
「お頭の命令だ、一人残らず殺せ!」
「さっさせるかー!」
父親が落ちていた木の棒を握りしめて必死に振り回し男達に立ち向かった。
「あなた!」
「お父さん!」
「クレア!アルアを連れて逃げるんだ!」
「そんな!」
「早く!」
「くっ、行くわよ!アルア!」
「でもお父さんが!」
母親は娘の手を引くと走った。
「待ちやがれ!」
「逃がすと思ってんのか!」
「行かせるもんか!」
「邪魔だ!」
「グァッ!!」
「お父さんー!!」
振り向きながら走る女の子は父親が斬られて血を噴き出し死ぬ無惨な所を見て泣いて叫んだ。
その後、隠れるように母子は茂みに逃げ込んだ。
「うぐ、うぐっ…」
「泣いちゃ駄目よ、アルア…泣いたら盗賊達に見つかるわ…」
「お母さんだって泣いてるよ…?」
「そうね…」
すると茂みの近くで脱げた女の子の靴が片方落ちているのが見つかり
隠れているのがバレてしまい、母親が引っ張られた。
「こんな所に隠れやがって!」
「きゃっ!」
「お母さん!」
「逃げ切れなくて残念だったな?」
「お願いします!娘だけは殺さないで!」
「安心しな?」
「あんたを殺したら娘もすぐに後を追いかけられるようにしてやるよ?」
「人でなしっ!悪魔っ!」
「黙れ!」
「グハッ!」
「いやぁぁ!!お母さんー!!」
父親の次は母親がしかも目の前で刺されて倒れた。
「アルア…」
「いやだ!死なないでぇ!」
「逃げな…さい…あなた…だけ…でも…」
握りしめた手に力がなくなり、目を閉じて二度と目覚めることはなかった。
「残るはおまえだけだ、小娘。」
「すぐに親に会えるぜ、感謝しろよ。」
「おじさん達、どうしてこんなひどいことするの…?」
"ハハハッ!"
涙混じりの少女の質問を男達は残酷にも笑った。
「どうしてだとよ?」
「おまえのかあーちゃんが言ったみたいに俺らは悪魔なのかもな?」
「悪魔…」
「お話はここまでだ、じゃあな。」
無情にも振り上げた刀が女の子の首に向かう。
だが、斬られることはなかった。
逆に斬ろうとした男の首が吹っ飛び、噴水のように血が溢れて倒れて即死した。
「何が起きたんだ!ゴフッ!」
驚く男の胸に鋭利な何かが刺さって口と身体から血を噴き出すと倒れて即死。
「うわぁ!!」
「夢でも見てるの…?」
そして月夜の光に照らされて現れたのは
顔に返り血を浴びて黒い大鎌を持ったローブ姿の少女だった。
「てめえ!なんの恨みがあってこんなことを!」
「個人的な恨みなんかない。」
「ふざけるな!!」
「トロい。」
「ゴハァッ!」
ローブの少女は残りの男もあっさりと殺して
顔に浴びた返り血を拭い、大鎌をどういう原理かは不明だが
キーホルダー並みに小さくしてまるでペンダントのように首にかけた。
「今日の収穫はたった三人か、それもボーナスも出ない雑魚中の雑魚、ハァ、全くやんなるね。」
「私、助かったの…?」
「んっ?ほかに人なんかいたんだ?全然、気づかなかったや。」
「まさか私も殺すの…?」
「寝言は寝ていいなさい、お嬢ちゃん。私があなたみたいな小さい女の子を殺したりする人間見えますか?」
「見えません…?」
「でしょう、私はさっきの男達みたいな悪人だけを殺してる、人呼んで『悪人狩り』なんだよ、よく覚えておきな?」
「悪人狩り…」
「もしかして、この女の人って君のお母さんだった?」
「うん…」
「あっちの方で村人っぽい男の人の遺体もあったけど、君のお父さん?」
「うん…」
女の子は答えると涙を流した。
「仕方ないな、墓作りでも手伝ってあげようか?」
「うん…」
ローブの少女は村から置いてあったリアカーを持ってきた。
「これで村まで運べるでしょ。」
「盗賊団はもう居なかった…?」
「そんなの居なかったけど?あったのは大量の遺体だけ。」
「だったら…」
女の子は両親以外にも殺された村人達などの墓作りもお願いした。
「ふぅ、やっと終わった。」
「ありがとう、最後まで手伝ってくれて…」
「別に構わないけど、なんで自分の両親を殺した悪人の墓まで作ってあげたの?」
「可哀想に思えたから…」
「変わった子だね?私が君の立場なら絶対に許さないのに?」
「お姉さんに言われたくないかも、普通の人は人を殺して平然としてるはずないもん…」
「だって殺し慣れてるから。」
「やっぱりおかしいよ、お姉さんは殺人鬼かなにかなの…?」
「あのね、口には気をつけなさい?」
「痛たた!」
女の子の頬をつねった。
「痛いよ、おねぇしゃん…?」
「私が殺人を楽しむようなクレイジーに見えますか?」
「じゃあ、なんで人殺しなんか…?」
「私にはね、悪人を殺さなくちゃならない理由があるんだよ。」
「理由って…?」
「寿命を手に入れるためだよ。」
「えっ…?寿命…?」
女の子は意味がわからず目が点になった。
「そう、寿命。私は寿命を持ってないんだ、だから悪人を殺すことで寿命を手に入れてるんだよ。悪人を一人殺したら1日寿命が延びる的なね。」
「わっわからない…?」
「ふふふ、だろうね、理解してもらおうなんて思ってないよ。ただこれは神様から与えられた仕事みたいなもんでもあるのさ。」
「神様から…?お姉さんはやっぱり悪魔か何かなの…?」
「今すぐ天使に訂正しなさい?じゃないとまた頬をつねるぞー?」
「訂正します!訂正します!」
「あはは、嘘だよ。人殺ししないと生きられない私が天使なわけがない、それぐらいわかってるつもりだよ…」
ローブの少女はその時だけどこか切ない表情をした。
「お姉さん…?」
「さて、警察でも来られたらめんどいし、行きますかね。」
「まっ待って!」
「んっ?まだ何かあるの?」
「私を置いていくつもり…?」
「だってここ君の村でしょう?」
「でも私達以外の村人いないし、お金も食料も全部、盗賊団に持っていかれてるんだよ…?こんな子供の私が一人、生きていけると思う…?」
「うーん、確かにそうだけど、私、こういう普通の人間じゃない生き方してるし、君みたいな子供と旅するわけにはな?」
「ずっとじゃなくていいの!この村から少し離れたトーカって町にね、親戚のロウ叔父さんが住んでるんだ。だからその町まで私を同行させて欲しいの!」
「ほー、偶然だね?次に私が悪人探しに向う場所がそのトーカって町だったんだよ?」
「本当!」
「仕方ない、その町まで私の旅に同行することを許可します。」
「ありがとう!お姉さん!」
女の子は抱きついた。
「私はお姉さんじゃなくて、エルカって名前ね。」
「わかった、エルカお姉さんだね。私はアルアだよ。」
「アルアね。」
「うん!」
エルカはアルアに自分の家がもし無事なら着替えを持ってくるように言って、準備が出来たら出発した。
「君の家が無事でよかったじゃんか。」
「うん、着替え以外にもこれを持ってこれた。」
「百合の花の髪飾り?」
「お母さんのなんだ。これだけ盗賊団に持っていかれずに済んだみたい…」
「貸してごらん、つけてあげるよ。」
「お願い。」
髪飾りをつけてあげた。
「似合ってるじゃん、可愛い。」
「私、生きるよ、お父さんやお母さんの分も…」
「いい目標だね、100歳でも200歳でも生きてやりなよ。」
「200歳も生きたら化け物だよ。」
「私は悪人を狩り続ければ可能だけどな。」
「やっぱりエルカお姉さん、悪魔なんじゃ…?」
「なんだってー?」
「痛たた!ごめんなしゃい!」
二人の旅は始まった。しかしまだ知らない、この二人での旅はとても険しく長いものとなり、それによってエルカとアルアは旅仲間でも友人でもないもっと特別な存在になることを。
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