特別SS:ハーフエルフのサンタさん

 前書き


 どうも作者のイコです。


 メリークリスマス!


 本日は、クリスマス特別SSから投稿です。


 ちょっとおねだりも兼ねております。

 ここまで楽しんでいただいた読者様、この作品はカクヨムコンテスト11に参加しております。フォロー、星評価によって順位が変動します。


 どうぞみなさんの応援をよろしくお願いします。


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 Side:リア



 窓の外では、那須の山を包み込むような静かな雪が舞っていました。


 初めて日本という異世界にきた頃は驚きましたが、とても穏やかで素敵な場所です。


 領主様のお家では科学という力で、春のように温かな空気に満たされています。かつての私にとって、冬は死の季節でした。


 冷たい風が耳を刺し、空腹と孤独で体が震え、ただ「明日も目覚められるだろうか」と祈るだけの、昏く長い夜。けれど、今の私には帰る場所があります。


 温かいスープを作って待っていてくれる人がいて、私を「領民」だと言って守ってくれる、大好きな領主様がいます。


「ねえ、リア。こちらの世界には、『クリスマス』っていうお祭りの日があるんだ」


 数日前の夜。領主様がソファに座りながら、私の知らない魔法の箱タブレットというものを見せてくれました。


 画面に映っていたのは、真っ白な雪の中に輝く色とりどりの光。そして、赤い服を着て、大きな袋を背負い、子供たちに幸せを運ぶという伝説の聖人のお話でした。


「サンタ……クロース?」

「そう。良い子にしていた子供たちにプレゼントを置いていくんだ。一年に一度、みんなが笑顔になるための日なんだよ」


 領主様は少しだけ寂しそうに、でも誇らしげに笑って言いました。


 その時、私の心は決めていました。


 領主様に拾われ、アルマ君たちという家族ができたこの場所で、私も何かをしたい。あの子たちの絶望を拭ってくれた領主様のように、私も「笑顔」を運びたいと思ったのです。


 領主様にわがままを言って、私は日本側の『お店』という場所に連れて行ってもらいました。

 そこは、魔法の迷宮よりもキラキラしていて、目が回りそうなほどたくさんの品物で溢れていました。


「これ……なんて可愛い服なんでしょう」


 一角で見つけたのは、真っ赤な生地に、雪のように白いふわふわの飾りがついたお洋服。クリスマスの聖人が着るという、特別な衣装。


「リア、それが着たいのかい?」

「はい……! これを着て、あの子たちの『サンタさん』になりたいんです。領主様、ダメでしょうか?」


 私が上目遣いに尋ねると、領主様は顔を真っ赤にして、視線を泳がせました。


 それから、「……いや、似合うと思うよ。すごく」と、絞り出すような声で許可をくれたのです。


 そして、クリスマスの夜。


 私は邸宅の二階、自分に与えられたお部屋で、その赤い衣装に袖を通しました。


 鏡の中に映っているのは、いつもの作業着姿の私ではありませんでした。


 短いスカートから伸びる足。肩を飾る白い毛皮。そして、赤い三角の帽子。


 ハーフエルフの長い耳が帽子の端から少しだけ覗いていて、なんだか別の生き物になったような、くすぐったい気持ちになります。


「……領主様、喜んでくれるかな」


 心臓がトクトクと激しく脈打っています。


 私は意を決して、領主様が待つリビングの扉を開けました。


「領主様……お待たせしました」


 ソファで温かい飲み物を飲んでいた領主様が、ゆっくりとこちらを振り向きました。その瞬間、ガチャン、と領主様の持っていたマグカップがテーブルの上で音を立てました。


「…………リア?」

「はい。……どうでしょうか。変じゃ、ないですか?」


 私はスカートの端を少しだけつまんで、その場でくるりと回ってみせました。


 領主様は言葉を失ったまま、呆然と私を見つめています。その視線が熱くて、私の耳まで赤くなっていくのが分かりました。


「……ああ。ダメだ。……可愛すぎる」


 領主様が片手で顔を覆いながら、呻くように言いました。


 私はその言葉が嬉しくて、一気に勇気が湧いてきました。


「よかったです! さあ、領主様。子供たちのところへ行きましょう。プレゼントの準備はバッチリです!」


 私と領主様は、大きな袋を抱えて子供たちが眠るお部屋へ向かいました。


 アルマ君、ルナちゃん……九人の子供たちは、領主様が用意してくれたふかふかのベッドの中で、幸せそうな寝息を立てています。


 私は息を殺して、一人一人の枕元にプレゼントを置いていきました。


 日本のお店で見つけた、丈夫で温かな冬服。


 領主様の畑で獲れた、あまーいお野菜で作った特別な焼き菓子。


 そして、領主様が「あの子たちに似合うよ」と一緒に選んでくれた、色とりどりのぬいぐるみや、不思議な絵本。


 すると、一番耳が良いアルマ君が、むにゃむにゃと口を動かして目を開けました。


「……ん……。リ……ア……さん……?」


 寝ぼけ眼のアルマ君の視線の先に、赤い服の私がいました。


 私はそっと人差し指を唇に当てて、ウィンクをしてみせます。


「メリークリスマス、アルマ君。良い子にしていたご褒美ですよ」


 アルマ君は夢を見ていると思ったのか、ぽかんとした顔をした後、幸せそうにまた眠りに落ちました。

 

 その寝顔は、かつて森の木箱の中で見せた絶望の色なんて、微塵も残っていませんでした。


 任務を終えた後、私と領主様は誰もいないキッチンのテーブルで、小さなケーキを囲みました。


 日本で買ってきたという『ショートケーキ』。


 真っ白な生クリームの上に、赤いイチゴが乗っていて、まるで今の私の格好みたい。


「リア、お疲れ様。……みんな、明日の朝には驚くだろうね」

「はい。あの子たちの笑顔を見るのが、今から楽しみです」


 私は一口、ケーキを口に運びました。


 溶けるような甘さ。王国の貴族でも口にできないような、この世界の『幸せ』の味。


「ねえ、領主様」

「ん?」

「私にとってのサンタさんは、あの夜、私を助けてくれた領主様なんです」


 私は領主様の目を見つめて、ずっと言いたかった言葉を口にしました。


「あの日、死を待っていた私に、未来というプレゼントをくれた。……だから私も、あなたの領民として、この幸せをみんなに分けていきたい。……ずっと、そばにいさせてくださいね」


 領主様は一瞬驚いた顔をして、それから今日一番の優しい顔で笑いました。


「……当たり前だろ。君がいないと、この国は始まらない」


 領主様の大きな手が、私の頭を撫でてくれました。


 ハーフエルフの長い耳が、嬉しくてぴこぴこと動いてしまいます。


 空には、二つの世界の境界を越えて、同じ星が輝いています。


 私はハーフエルフのサンタさん。


 世界一幸せな領主様に仕える、世界一幸せな女の子。


「メリークリスマス、領主様」


 甘いケーキの匂いと、大好きな人の体温。


 これが、私たちがこれから作っていく『国』の、最初の冬の思い出になりました。


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 あとがき


 どうも作者のイコです。


 クリスマスプレゼントの星をお待ちしております(๑>◡<๑)

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