第23話 純粋ボーイは恋をする

いつからだろうか、俺がこんなにあの子の事を好きになったのは。


思えばそれは、明確な「きっかけ」は無かったように思える。


ただなんとなく気になって、それでいつの間にか好きになっていて、いつしか一緒に居たいと思う時間が増えた……そんな気がする。


別に他の奴と一緒に居たら嫉妬するとか、そんな事はなくて、なんとなく……ただなんとなく、あの子を見つめる時間とか、一緒にいる時間とか、笑いあえる時間が、少しでも伸びれば良いな、なんて事はよく思う。


多分これは、「恋」なんて言葉で表せると思うんだけど、これは叶わないのかもしれない。


でも、俺はこの恋が絶対叶ってほしいとは思っていない。


嫉妬とか無いし、不満もない。


本当はこれは、恋じゃないのかもしれない。

けれど思うことはただ一つ。


願わくば、一緒にいれる時間が、少しでも伸びるよう____



「私よりも寝るなんて〜隆一くんもなかなかだね〜」


「んぁ…?」

目を擦って机から顔を上げる俺。


「おはよ〜、隆一くん。」

俺の机の前に居たのはアズリア・ラングレー。

その人だった。


彼女はラングレー財閥と呼ばれる財閥の令嬢で、話によると許嫁も居るらしい。


目尻が少し下がりいつも少し微笑み、髪色はパステルグリーンという少し特殊な色で、その髪で輪っかを作って、後頭部に2つぶら下げている。


身長は低く、前に聞いた話だと142cmあたりだったはずだ。


まぁ、伸びてるかもしれないし縮んでいるかもしれないけど…


リスとかハムスターとかそういう小動物を彷彿させられるのは多分俺だけじゃないはず。


「どしたの〜?そんなに私の顔を見つめて〜何かついてる?」


俺はアズリアに言われて、「ああ」と言葉を漏らしながら目を離す。


「いや?特に理由は無いけど、あえて言うならそこに居たから?」


「ふ〜ん、隆一くんって、案外気分屋だよね~」


「それで…これってもしかして…」

俺は呟きながら周囲を見渡す。


空席ばかりの教室は赤く染まり、窓からは夕日が差し込む。


「もうみんな帰ったよ。隆一くんって、英語の時間はよく寝るよね〜。それもぐっすりと」


「は、はは…まぁ…分かんないからな…って!アズリアに関しては全部の教科寝てるだろ!」

俺は笑いながらツッコミを入れる。


「あ、そうだった〜」

えへへ、と応えるアズリア。


この時間が、永遠に続けば良い。

そう思った。


「さてと、そろそろ帰るか。」

俺は椅子から立ち上がってロッカーへと向かう。


「え〜、まだ話してたいなぁ〜」

アズリアは悪戯っぽく言う


「いやいや…アズリアが遅く帰ったらメイドさんに俺が怒られるから…」



俺はバックに必要なもの(弁当だけ、教科書は不要)を全て入れると、そのバックを担いで「じゃあ、行くか」とアズリアに視線を向けた。


「あーあ、またお母さんに勉強しろしろ言われるよ〜…」


「いや、アズリアは勉強した方が良いだろ…」


「私よりも成績低い癖に〜?」


「うぐっ…」



外に出ると、グラウンドからはまだ部活動をしている生徒の声が聞こえている。


赤と青の水彩絵の具のまだ混ぜきってないような空。

雲1つ無く、霧矢ならここでスマホのシャッターか、自前のフィルムカメラのシャッターを切っているところだ。


いや、家の中から撮ってるかもな。


「あれ、そう言えば、霧矢と奏音は?先に帰ったのか?」


「え?もちろん。2時間くらい前に帰ってたよ?」


「え、じゃあアズリアはずっと待ってたってことか?」


「まぁね〜」

アズリアは得意気に言うと、その小さな胸を張った。


そんな会話を交わしながら、やがて俺はアズリアの家のへとたどり着いた。

アズリアの家は大きく、洋館と呼ぶにふさわしい大豪邸だった。


家は白い石に囲まれて玄関は黒い門で仕切られている。


「それじゃあ、また明日〜」

アズリアは言いながら手を振ると、俺も「おう、また明日な!」と笑顔で答えた。


さてと…俺も帰るか…

現在時刻6時半、そろそろ妹が部活から帰って来ている所だ。




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