第16話 スクールボーイは奪いたい

「なあ!!霧矢!!!」

「はいはい⋯わかりましたよ…」

俺は犬が尻尾を振り、飼い主に散歩をねだるように寄り付いてくる矢口に手のひらを向ける。

「おすわり!」

言うと、矢口は目を光らせて椅子に座った。

はぁ…こいつ絶対今後何処かで騙されるだろ……


なぜだか知らんが、矢口が奏音と喋りたいらしいでとりあえず俺は奏音の席へと向かった。


まあ、もし矢口が奏音を狙っていたとしても奏音にはどうやら好きな人が居るみたいだが……


俺は考えつつ、自分の身支度を終えて、奏音の席へと……

って…!!!!人多いな!!!!!


俺は奏音の方へと目を向けるとそこには、女子の群れ。集合体恐怖症には少しキツそうだ。


中心には奏音とアズリアが居て、奏音は困り顔でアズリアはというと…寝ている……マイペースだ…


「奏音ちゃんって可愛いよね〜!」

「えぇ〜?そうかな〜?」

「彼氏とか居ないのぉ〜?」

「うーんとね〜まだ居ないかな〜」

「まだって言った〜!!!」

「これは好きな人が居る反応だね〜!!」

「アズリアちゃんも可愛いね〜」

「猫みたい〜い!!!」




「なんか…すごい事になってるな……」

言いながら、俺の肩に肘を乗せたのは隆一だった。


俺は隆一の肘をノールックで払う。

「案外あいつらってモテるのか?」

「お、お前マジか……中学の2年までは1週間に1回は誰か奏音に告白してたぞ……」

「は?知らないんだけどその話……」

隆一は額を手で抑えるとため息を吐いた。

そして俺の額に指を当てて、

「そういう所だよ、最上くん!」と言いながらその額を押す。

「は…?ど、どういうことだよ…」

「自分で考えやがれ、この鈍感野郎。」

な、何を言ってるんだ…?俺は鈍感ではないし、隆一の話のゴールが見えないぞ……?


……まぁ、いいか。

「とりあえず…俺は奏音に用があるから少し突っ込んでくる…」

俺はいうと、隆一が親指を立てて「グッドラック」の言葉を手向たむけた。


女子の群れの中をかき分けて、奏音へとたどり着く。

「あはは〜!そうなんだね!はぁ…」

俺は奏音の表情を伺って、疲労が出てきたことを確認。

「はいはい、今日はもう帰るぞ〜奏音様はおつかれだぞ〜」

「ええ?誰…?」

「奏音ちゃんの彼氏さん?」

「断じて違うぞ〜散った散った〜」

「奏音ちゃんまたね〜!」

「奏音ちゃんの夫〜?」

「は!?なんでそのあだ名を!?」

……奏音が首謀者…?


すると、集団の1人が奏音に向かって手を振ると、奏音も無言で手を振り返す。


「ふぅ…ありがとね。」

「お安い御用…なんで夫婦いじり知ってるんだよ…」

「え、えぇ?な、なんでだろうね…?」

奏音はカタコトな日本語で返す。まぁ、おそらく中学の同級生がバラ撒いたんだろう。いやなこった。

俺は続いて奏音の席で寝ているアズリアを起こす。

「ほら起きろ〜帰るぞ〜」

「んん〜?もうそんな時間…?」

「そんな時間だ。」

俺はとりあえず、やることを全て終え、休憩のような感覚で早速あのことを話す。


「あのさ、奏音、今日ちょっと一緒に帰らないか?」



「久しぶりに二人だけだと思ったんだけどな…」

「まあ、良いじゃんか!俺だって面白いぜ!!」

真ん中に奏音、端に俺と矢口でコンクリの上を歩きながら帰る。

ちなみに奏音は拗ねて口をフグのようにしている。


「ちなみに、あなた誰…」

威嚇するように奏音は矢口を睨むと、矢口はヘラヘラひょうひょうとした態度で、「矢口広!学校で一番モテる男だぜ!!!」と自己紹介と言えるかどうか怪しい自己紹介をする。


「自己紹介って正しいこと言わないとじゃねぇの?」


「まあまあ、偽りのステータスも大事だぜ?」

偽ってるじゃねぇか。

てか、それを奏音のいる前で言うのかよ。


「なあ、奏音ってさあ、すっごく可愛いな!」

すると、矢口は今までとは打って変わる。

なぜかニマニマとして、気持ち悪さが増す。

さっきまでは犬みたいに可愛かったのに。発情期だろうか。


「あー…はいはい、ありがとうね…」

奏音は適当に返して、スマホを開く。

「奏音…その歩きスマホは…」

「え?あ、ごめん…」

まあ、たしかに…こんな奴がいたらスマホにも逃げたくなるよな…


「え?奏音と霧矢って付き合ってんの?」

「……どうしてそうなる…」

俺は呆れつつも、矢口を見る。

「いやさ、なんか奏音が霧矢のことなら言う事すぐ聞くみたいだしさ」

「まあ、霧矢くんは私の信頼してる…えっと…その、友達…だもん…」

「へー、じゃあ、奏音は俺のこと好き?」

「す、好きって…?」

唐突な質問に奏音は戸惑いの色を見せる。


全く…自分勝手にも程度というものがあるだろ…

「いやさ、俺のこと恋愛的に見てるかな?ってさ。」

「べ、別に見てないけど…」

すると、矢口は何故か前髪を手で揺らす。

「いや〜でも俺と帰るってことはそういうことでしょ!だからさ、俺の彼女にならない?」

「矢口…お前そんなキャラだったのか…」

俺の言うことも無視しつつ、矢口はヘラヘラと笑いながら奏音の腕を掴んだ。

「とりあえずさ、俺の家行かね?そこでちょっと濃密な時間とか過ごそうや、二人だけでな」

こいつ…大阪のダルいチンピラみてぇな喋り方しやがって……

「わ、私は嫌だよ…」

「ったく…ツンデレだな〜」

矢口は奏音の手を無理矢理引っ張る。

「おい、矢口、奏音は嫌って言ってるだろ、話せよ。」

「は?なわけ無いだろ?ただツンデレなだけだ、俺がちゃんと正直にさせてやるよ。」

俺は、ため息を吐くと、矢口の掴んでいる奏音の手を取って、矢口の腕から引き剥がす。

「行くぞ奏音。」

「は!?お前ら!!!何処に!!!!!」

俺はそんな矢口の声を無視してその場を去った。







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