第7話 失恋ガールは伝えたい

離任式も無事終わった午後。

自転車小屋で私は、霧矢くんと合流した。

「あ!霧矢くん!」


「や、やぁ…奏音…」

すると、何故だかぐったりと肩を落とす霧矢くん。


「ど、どうしたの…?」

「あ…な、なんか…今日さ…ともりに話しかけようとしたんだけど…なんか…避けられてるっぽくってさ…」


霧矢くんは、「あはは…もしかしたら嫌われたかもな……」と呟いた。


そして、その言葉が私の胸を締め付ける。

霧矢くんに…好きなんて言えない…

私では霧矢くんに振り向いてもらえてないから…きっと…


「そ、そうだったんだね!それは災難だったね…まぁ…告白してフラれると…なんというか…気まずいし…普通の反応なんじゃないかな…」


ああ…私が告白したら…一緒にいられなくなっちゃうかもなぁ…


「はぁ…とりあえず…帰るか…」

言って、霧矢くんは自分の自転車に跨った。

私は「うん」と頷いてからそれに続く。


「そういえば…このセーラー服とも今日でお別れだなぁ…」

私はセーラー服を眺めて、呟く。


「あ、そうか…可愛いのに…残念だな…」

「ぁえ…?そ、そう…なの…?ありがと…」

流れるように放たれた霧矢くんの「可愛い」

私は、その言葉に少し頬を染め、心の中でガッツポーズをしていた。




そんなこんなで家へと到着。

家のガレージには車がないことからお母さんとお父さんはどうやら家に居ないみたい。


自転車をガレージの中に置く。

「腹減ったぁ、何食べようか…」

言いながらガレージを出る霧矢くん。

ガレージの中は私1人だけ。


今日…霧矢くんの瞳の中にはともりちゃんしか映っていなかった。

私ではなく、ともりちゃんしか…


霧矢くんの自転車のサドルに手を置いた。

その自転車を見下ろして、不意にともりちゃんとの恋愛話を霧矢くんが登校中にしていたのを思い出す。

「霧矢くん…私のこと…ちゃんと見てよ…」

「奏音何食べ__「ひやぁぁぁぁ!?!?」


私はその場に転がって、尻もちをつく。

「い、痛た…」

目を開けて真っ直ぐ前を見る。

「だ…大丈夫か…?」

心配する霧矢くんに「えへへ…」と呟いて、「大丈夫だよ」と言おうとしたその瞬間。


「危ない!!!」


目の前には私に向かって倒れ掛かる自転車。

そして自転車を抑える霧矢くん。


「危ねぇ…全く…いきなりどうしたんだ?急に叫んだりして…」

霧矢くんはエプロン姿のまま、自転車を立て直した。


少しドキッとしたけど、霧矢くんはそんな私を気にもしない様子。


「え?あ、あはは…その…あ、ありがと…」

私はモジモジしながらも、呟いた。


なんで…霧矢くんは…ともりちゃんの事を好きなんだろうなぁ…


「ね、ねぇ…霧矢くん…」


「ん?なんだ?」


「霧矢くんってさぁ…な、なんで…その…えっと…あの…」


霧矢くんは自転車から手を離して、私に向くと「なんだ?言ってみろよ。」と優しく笑いながら言う。


覚悟を決めて手を強く握った。

「あ、あのね…!霧矢くん!え、えっとね……!そ、そのぉ……」

口篭ったままの私に苦笑いをする霧矢くん。

「え?な、なんだよ…そんなに勿体ぶって……」


私はドキドキと鳴り響く鼓動で死んでしまいそうだけど、深呼吸をして空気を呑んで言葉を話す。


「な、なんで霧矢くんはともりちゃんに告白したの…?」

言ってしまった!!!

言葉として発した途端、何故私は言ってしまったのか疑問に思う。


「え…?ま、まぁ…好きだったんけだし…」


好きだった…それだけで…?

でも、私は霧矢くんに告白なんて多分できない…だって…きっとフラれちゃうし……


「でも…相手が好きかなんて…わかんないじゃん…」


「ま、まぁな…それに実際ともりは俺のこと好きじゃなかった訳だけど…まぁ、後悔はしてないな。」

ガレージに似合わないエプロン姿の霧矢くん。

驚く程に真っ直ぐな目をしている。


「え?」

そんな姿に一瞬戸惑いを隠せなかった。

私なら…きっと…霧矢くんと同じ立場なら後悔している…


「だって、卒業式を最後に別れ離れになるんだぞ?もう会えないかもしれない。俺はあの時までずっとともりに対してアタックはしてきたつもりだ。」

霧矢くんは一度エプロンを脱いでそれを畳む。


ガレージの地面を向いて言葉を続けた。


「だから、アタックしてきたんだ。だから、答え合わせをしたんだ。まぁ、不正解みたいだったけど…それでも、答え合わせをして、1点でも正解するんだったら、俺は0点じゃなくて、その1点に賭けたいんだ。」


「そ、そうなんだ…」


すると霧矢くんは頭を指で搔いた。

「あー…まぁ、要するに可能性が無い方より、可能性がある方を俺は選んだって訳だよな。うん!良い感じにまとめられたな!」


霧矢くんは苦笑いをして言うとなかなか見せない笑顔を私に向けた。


「あー…でも、やっぱり今になって後悔がゼロって言ったら嘘にはなるな…ははは…」

そんな事を付け足すと、霧矢くんはエプロンを再び広げて、ガレージと家を繋ぐ裏口のドアノブに手を掛けた。


「そうだ、奏音は何か食べたいのあるか?俺はチャーハンを作るつもりだけど…」


「え?あ、えっ…と…霧矢くんと同じもの!!」

すると、霧矢くんは「チャーハンな。」と言って扉を開けた。


「あ、ありがとう!!!」

「え?」

「ご、ご飯とか…さっきの話とか…」

「あぁ…まぁ、奏音も頑張れよ。」

「え?頑張れって…どういうこと…?」

「え?奏音お前好きな人が出来たんじゃ無いのか?」

「な、ななななななんでそれを!?」

「わかりやすく図星だな…まぁ、恋する乙女みたいな顔してたし、分かるわ。それくらい。まぁ、誰に恋してるのか、わからんけど…とりあえず頑張れよ〜」

「え?あ…うん…ありがとう…」

「まぁな。」

「それと……大好き………」

「ん?なんか今言ったか?」

「ううん!何も言ってないよ!私お腹すいたな〜」

「今作ってやるから待ってろよ。」




霧矢くんに言われちゃったら、諦められないじゃん










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