第9話 正義の鉄拳食らいマスカ?

「結界を張ってくれ!」

 聖騎士団長の指示に、多くの聖女たちはベソベソとその場に泣き崩れた。


「ぐすっ、無理ですぅ……もう魔法は使えません〜」


「呆れたものだ。結局、アストリア一人に任せきりで自分たちは楽をしてきたのか」


「団長! 剣も矢も通りません!」

 聖騎士団が絶望したその時、ヴェルミリオンが私の手を引いて一歩前へ出た。


「リア、いくぞ。世界の秩序を守るために」


「うん、ヴェル。私たちの平穏なる刻スローライフを守るために」

 私は左手に意識を集中させた。すると何もない空間から眩い光が溢れ出し、一振りの光の杖が現れる。


「無から聖具を創造した!? 伝説の聖女でも不可能と言われた神業だぞ!」

 集まった人間たちの驚愕きょうがく余所よそに、私とヴェルミリオンは同時に飛び出した。


 魔物の図体の大きさは過去一だけど、そんなことくらいで私たちは揺るがない。


「エターナル・ピュア・ラブ・リベレイション‼︎」


 ――きゃー! なんか勝手に魔法少女みたいな必殺技を口走っちゃったんだけど⁉︎

 これもヴェルミリオンの魔力の影響?


 杖から溢れた強烈な光は魔物の動きを止め、彼の闇の剣がその核を正確に貫いた。


『愛の共同作業、最高!』

 アビスが楽しそうに空中をくるくる飛び回る。


 魔物は霧散し、どさくさに紛れて逃げようとしていたゼレフィス様を、ヴェルミリオンが闇の鎖でぐるぐる巻きにして引き寄せた。


「待て、アストリア! 私は大神官だぞ、ひ、光魔法など効くはずが――」


「あなたに光魔法なんてもったいない」

 私は杖を消すと、渾身の力を込めて拳を繰り出す。


「私の退職願、受け取りなさい!」

 完全なるグーパンチがゼレフィス様の顔面にめり込み、彼はキリモミ回転しながら吹き飛んでいった。


「……いたたた、ちょっと力入れすぎたかな」

 赤くなった私の拳を、ヴェルミリオンがそっと取って優雅にキスを落とす。


「汝の傷は、我が愛で癒そう。よく頑張ったな、リア」


「ヴェル……ありがとう」

 瞬時に痛みは消え、心まで満たされた。


 一方、伸びた変態ゼレフィスと規律違反をした聖女たちは、騎士団によって芋蔓式に連行されていった。幽霊聖女は「清々したわ」と微笑み、光の中に消えていく。


「真の聖女アストリア様、どうかお戻りいただけませんか? 崩壊した神殿にはあなたが必要です」


「お断りします。でも、本当に困った時は駆けつけますよ。今までも、そうしてきたんですから、何も変わりません」

 私は晴れ晴れとした笑顔で返答すると、彼らを王国へかえした。

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