名探偵津田の事件簿

タコウインナー

名探偵津田:老舗旅館の消えた遺産編

第1話 名探偵津田:老舗旅館の消えた遺産編

東京都のとある古びたビルの2階。

階段を上がると、そこには『津田探偵事務所』と書かれた看板が掛けられている。

その部屋で今日もある1人の男の文句が響いていた。


「あーもう!今日も全然依頼こぉへんやん!」


そう言って、キィーッ!っと癇癪を起こしながら髪の毛を掻きむしる男。

彼の名は、津田篤宏。通称、ダイアン津田。

かつてお笑いコンビ『コンビダイアン』のツッコミ担当として活動していた有名なお笑い芸人だったが、ある事件でコンプライアンス違反をしてしまい、現在は売れない探偵として活動している。


「もういい加減落ち着いてくださいよ……津田さん。」


そう言うのは、スキンヘッドに眼鏡を掛けた男。

彼の名は、南川 聡史。通称、みなみかわ。

お笑いコンビ『ピーマンズスタンダード』の津田篤宏と同じくツッコミを担当として活動していたお笑い芸人だったが、津田と一緒にコンプライアンス違反をしてしまい、現在は売れない探偵の津田篤宏の助手として活動している。


「落ち着けって言われても、無理なもんは無理やねん!なんかよく分からんコンプライアンス違反でみなみかわと一緒に芸能界追放されて、仕方なく勢いで探偵業を始めたってのに全然依頼はこぉへんしさぁ!」


「仕方ないですよ、最近は何処も不景気なんですから。僕達も探偵業を始めてまだ数ヶ月なんですから、こんなもんですって。文句言ってないで一歩ずつ頑張りましょ?」


みなみかわはそう言って、津田をなんとか落ち着かせる。

津田もブツブツと何か文句を言いながらも、何とか落ち着きを取り戻した。


「でも相変わらず、全然依頼は全然来ませんね。僕達一応それなりにテレビにも出てたお笑い芸人だった筈なのに。」


「だから困ってんねん。この部屋も賃貸やし最悪、俺たち2人とも破産やで?」


「やめてくださいよ……津田さん。僕にも家族が居るんですよ?そんな縁起でも無いこと……。」


「せやけど、ここを開いてから階段の足音一回でも聞いたか?聞いてへんやろ。」


「まぁ……そうですけど。」


そんな風にみなみかわと津田が話していたその時だった。

事務所の入り口のドアが開き、1人の来訪者が来る。


「すみません……津田さんはいらっしゃいますか?」


その来訪者は1人の女性だった。

綺麗な紅の着物姿をしており、結ばれた黒い艶のある髪の毛には珠の簪が刺さっている。

顔の方はかなり整っており、何処かのモデルと間違えそうなビジュアル。


「津田さん、この人知り合いですか?」


「え?いやいや、俺が知り合いな訳ないやん。えっとすみません、どちら様ですか?」


事務所に似合わぬその女性に恐る恐る津田が尋ねる。

着物姿の女性は静かに言った。


「数日前にご連絡した者です。今日は、津田さんに依頼をするために訪れました。」


「え!?俺、何も聞いてへんで!?ちょっとどういう事やねん、みなみかわ!」


津田はみなみかわに言う。

みなみかわは、この事務所では助手兼依頼のアポ取り担当。

あっ!と思い出すようにみなみかわが……。


「あ、そういえば……なんかそんな電話が来ていたような気が……。」


「ちょっ……!何で俺に伝えて無いねん!こういう事は俺にひと言でも言うべきやろ!」


「すみませんって……そんな、怒らなくても良いじゃないですか。」


津田は何とか落ち着き、依頼人の着物の女性を椅子に座らせる。

津田とみなみかわは女性と向かうように座り、早速本題に入った。


「とりあえず、お名前を聞かせてもらっても良いですか?」


「は、はい……大輪田姪と申します、京都の旅館の娘で今日は探偵の津田さんに依頼をしに此処に来ました。」


「わざわざ京都から……遠路遥々お疲れ様です。」


津田はそう言いながら、探偵ノートにメモを取り始める。

メモを書きながら津田は大輪田さんに質問をする。


「それで、大輪田さんは何の依頼で此処まで来てはったんですか?」


「実は、数ヶ月前に父が病気で亡くなりまして……。」


「あーそれは……ご愁傷様です。」


「いえ……それで依頼というのは、父に関しての事なんです。」


「大輪田さんのお父様について?それって具体的にどんな依頼なんですか?」


書く手をピタっと止めて、津田は大輪田さんの方を見る。

大輪田さんは裾をぎゅっと握りしめて、続けた。


「津田さんには、父の残した遺産を見つけて欲しいんです。」


「遺産ですか!?」


「遺産って……普通は、家族で平等に分配されるもんですよね。」


「そうなんですけど、実は……。」


そう言うと、大輪田さんが白い封筒を取り出して2人に差し出す。


「ちょっと拝見させてもらっても宜しいですか?」


「あ、はい。それはもちろん……。」


みなみかわが封筒の開くと、そこには一枚の手紙が入っていた。


「手紙?何て書いてはるん?」


「ちょっと待ってください。今、読みますから。」


そう言うと、みなみかわが手紙の内容を読み始める。


「えーっと……?『一族の血を引く者たちよ。私の資産についてだが、私が屋敷に隠した命よりも大切にしていた“ある物”を見つけた者にのみ、その全てを譲ろうと思う。』って、書かれてますよ。」


「胡散臭ぁ、何やねんソレ。そんな事せんでも公平に家族平等に分けたらええやん、ややこしくなるだけやのに。」


「あのー、失礼ですけど因みにその資産って一体どれぐらいの額で?」


みなみかわが恐る恐る、大輪田さんに尋ねる。

大輪田さんは少し躊躇いながらも、2人に言った。


「およそ、20億です……。」


「えぇっ!?20億!?」


驚きのあまり、津田が素に戻ってしまう。


「はい。それで今、家族は父の資産の件で揉めてまして………。」


「まぁ……かなりの額ですからね……。」


津田は何とか落ち着き、探偵ノートにメモを取りながら言う。


「それで、依頼ですけど大輪田さんのお父様の大切にしていた“ある物”を探すって事で間違いないですか?」


「は、はい……どうか、よろしくお願いします。」


大輪田さんはそう言うと、連絡先を渡して事務所を出た。

再び、津田とみなみかわの2人だけになった事務所。


「で、どうします?津田さん。」


「どうしたもこうしたも……もう行くしか無いやろ、京都に。」


「えぇっ……ちなみに、交通費って」


「そんなん自費に決まってるやろ!ロケちゃうねんぞ。」


「マジっすか……ハァ……。」


金欠なのか、ため息を吐くみなみかわ。

という事で、津田とみなみかわは京都に向かうことが決定した。

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