第4話 目的地をカーナビに入れ出発進行!


 私の名前は乗鞍のりくら 澄子すみこ

 ひょんなことから異世界に聖女召喚されるも、「聖女スキルを持ってないから」という理由で、森の中にポイ捨てされた。


 しかし私には【野外活動聖女】、および【野外活動車キャンピングカー】というダブルチートがあったのだ……!


「ふぅ……」


 水を飲んで、ほっとひと息つく。


「さて……これからどうしますかね」


 とりあえず、チートスキル&キャンピングカーのおかげで、異世界でも問題なく暮らしていけそうだ。


 魔物が出てきても、魔物ぶっ殺し光線ハイ・ビームでなんとかなるし。それに住むところも、飲み水も確保できてる。

 問題は……。


「お金……か」


 魔物を楽勝で倒せる。しかしドラ○エやF○のように、魔物を倒してもお金はドロップしない。

 KAmizonでの買い物にも、野外活動車キャンピングカーの燃料にも、お金が必要だ。


「お金ってどうやって稼ぐ……? 定番だと、街へ行って冒険者や、商人になるとか……かな……」


 いずれにせよ、チート持ちの召喚者であっても、生活していくためにはお金が必要なのだ。

 お金は魔物からドロップしない。となると……。


「街を目指す。そこで冒険者なり、商人なりになって、お金を稼ぐ」


 よし、とりあえずの方針は決めた。

 ……元の世界に帰りたい、という気持ちは、あんまりない。


 なぜなら私の両親および祖父母はみんな死んでしまってるし。

 カレシもペットもいないし。

 向こうで私を待つ人もいないうえ、仕事も……辞めたばっかりだ。


 相棒のキャンピー (※キャンピングカーの愛称) はこっちにあるし、向こうに帰る選択肢は……ない。

 そもそも、こういう時のお決まりとして、魔王を倒さないと現実世界に帰れないだろうけど (いるか解らんけど)。


 魔王なんて、倒さない。

 それは本物の聖女である、きらりんがなんとかするだろうしね。


「はいじゃあ、さっそく街へ向かいますかな」


 私は空のペットボトルを、アイテムボックスに収納する。

 ゴミを森にポイ捨てするのは、なーんか躊躇われる。


「っと、気軽に入れちゃったけど、このアイテムボックスって容量とかどんなもんなんだろう……。まさか無限なんてことはないだろうし……」


~~~~~~

【アイテムボックス (最上級)】

→召喚者の特典スキルその1。

 容量無限。質量を無視してなんでも入る。中の時間は凍結してるため、生ものでも腐らない。

~~~~~~


「無限なんかーい……!」


 ま、まあ……無限で悪いことはない。とても都合が良すぎるけども。


~~~~~~

【召喚者】

→異世界召喚された者の総称。鑑定、アイテムボックスがボーナスとして与えられる。また、本人の才能や潜在能力に応じた固有スキルが与えられる。

~~~~~~


 なるほど……。異世界に召喚された者、略して召喚者と。

 私の場合の固有スキルは、【野外活動聖女】と【野外活動車キャンピングカー】ってことか。


 ……ってあれ?


「きらりんは……? あいつ、固有スキルなんて与えられてなかったような……」


 いや、いちおう【聖女】スキルがあったか。でも私みたいに二つもなかったし……。

 才能や潜在能力に寄るって書いてあったし、固有スキルの数は人それぞれなんだろうな。


 はい、思考おしまい。さくっと街に向かっちゃおう。

 私はキャンピングカーの中に入る。


 運転席へと移動する。


「街へレッツらゴー……って言いたいけど、私、異世界の地理なんて知らないしなぁ……」


 ふと、私は気付いた。


「そうだ、カーナビついてるんだった」


 カーナビ搭載のキャンピングカーを買っておいて正解だったわ!

 ……まあ。


「現実世界のカーナビが、異世界でも使えるわけないよねー……」


 私はエンジンをかける。

 カーナビが起動すると……。


「ん? んんん!? カーナビ……映ってる……?」


 中央には、矢印マーク。そんで、周囲は緑色に塗りつぶされている。

 『奈落の森アビス・ウッド』と、書いてあった。


奈落の森アビス・ウッド……なんて、現実世界じゃあ聞いたことない……ってことは」


 私は縮尺を変えてみる。ぴっぴっぴ、と。

 森は、結構広範囲にまたがっていた。


 縮尺を変えていって……気付く。


「村や街の名前……どう見ても、日本のそれじゃあないわね」


 アインの村だの、ノォーエツだのと、聞いたことない名前が記載されていた。

 うん……。


「現実世界のカーナビ、異世界こっちでも使えるんかい……!」


~~~~~~

【異世界カーナビ】

→異世界の地理情報、およびGPS内蔵カーナビ。ルート検索も可能。

~~~~~~


 ……このキャンピングカー、やっぱ変。

 だって中は別空間のように広いし、水も給排水管がついていないのに垂れ流しOKだし、カーナビは異世界でも使えるし。


 私の買ったキャンピングカーがそのままこっちに来たっていうより……こっちに来る際に、特別な【野外活動車キャンピングカー】へと転生したのかも……。


「キャンピー、ありがとう。君がいればほんと、異世界らくしょーそうだわ」


 よしよし、とステアリングをなでる。


「そんじゃあ、まあ、近くの街まで……レッツらゴー!」


『目的地まで自動操縦します』


「え……!?」


 ペダル踏んでないのに、なんか車が勝手に動き出した!

 あ、あれェ……!?


~~~~~~

野外活動車キャンピングカー


 野外でのみ使用可能。森林、荒れ地、どんな場所も走破可能。


 異世界カーナビと連動して、自動操縦可能。

 また空間魔法が付与されている。中を自在にルームメイク可能。


 また持ち主が離れると自動施錠され、持ち主が許可しない限り無断で中に人が入れない。


 ガス・水道・電気は、大気中の火精霊、水精霊、雷を取り込み無限に使える。(燃料は別途購入)


 その他、ポイントを消費することで、さまざまな特殊技能を付け加えたり、設備を拡充させることも可能。

~~~~~~


「……キャンピー……もしかして君、ちょーチート?」

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