「諦めずに抗うことだけが絶体絶命を乗り切る唯一の方法」



「逃げて! はやく!」


 リナが叫ぶ。同時に地響きが僕たちを襲った。

 岩竜は確実に僕たちを見つけた。鋭い眼光に、思わず身がすくむ思いがした。


「リナ、先行して! マリエさんはリナの後ろに! 最後尾は僕が!」


 気が付いたら叫んでいた。

 リナはうなずくと同時に走り出して、一瞬遅れてマリエが走り出す。


 同時に、身の毛もよだつような咆哮が岩竜から放たれた。


 一瞬三人ともが動きを止められるが、振り切るように僕も走り出して、マリエの後ろにつく。


 トカゲの表皮を岩で覆って、それを巨大化させたような怪物。

 本来五層にいるはずのない岩竜が何故こんなところにいるのか――


 今はそんなことを考えている場合ではなかった。


 岩竜の足音と共に響いてくる地響きは、確実に僕たちを追っていた。

 四層へ戻る階段はそう遠くはない、そのはずなのに、いつの間にか無数の魔物たちが出現していた。


「やばいってこれ!」

「リナはマリエさんを!」


 素早く前に躍り出て、先頭のゴブリンを切りつける。

 だが浅い――


 追いついたマリエがそのゴブリンを鈍器で叩きつけると、ようやく絶命した。

 だが、まるで持ち場を守るように動かない魔物たちは、それでも確実に僕たちの行く手を阻んでいく。


 岩竜の確かな足音が近づいてくる。

 魔物たちがまるであざ笑うかのように声を上げていた。


「ちょ、これあいつが命令してるってこと!?」


 リナが悲鳴にも近い叫びをあげた。


「進むしかない!」


 様々な魔物が障害となって襲い掛かってくる。

 攻撃を受けるたびに、リナとマリエを包んでいる靄が薄くなっているような感覚を覚えた。


 でも、それを考えてる暇もなく、次々に魔物は増え続ける。


 僕たちは、遅々として階段へとたどり着けないでいた。


「アルトさん、後ろです!」


 マリエも必死で鈍器を振り回している。

 リナも飛び回って敵をかく乱しようとしているが、その顔には疲労の色が浮かんでいた。


 そして、ついに岩竜が僕らを捉えた――


 再び咆哮を上げると、魔物たちが呼応するかのように声を上げる。

 同時に、これまで動かなかった魔物たちまでもが、僕たちを一斉に見た。


「ひっ」


 その異様な光景に、リナが思わず小さな悲鳴を上げる。

 それが、一瞬静まり返った洞窟に、やたら大きく響いているように感じた。


 刹那――

 

 魔物たちが一斉に動き始めた。

 

 もうだめだ――でも、どうにかリナとマリエを逃がさなければ、例え自分がどうなっても。

 何か手はないか。


 そう思った時、一筋の光が走った――


 次の瞬間、魔物たちの群れが大きく盛り上がり――爆散するかのように弾けた。


「え……?」

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