第1話 事前報告はきちんとしておこう


引っ越してから数日後。

村にある高校の入学初日。



「入学初日に寝坊して遅刻とか、ありがちな展開すぎるでしょ…」

息を切らし、苦しそうな顔で学校の廊下を走る。

しかも、寝坊のせいで朝から母に怒られてしまった。



彼女はは白羽しらばひまり。

くせ毛の茶髪に麻呂眉が特徴の高校1年。

親の都合でこの林種村りんしゅうむらに引っ越してきた。



今日は村にある林種高校の入学式なのだが、早速寝坊してしまった。

母にたたき起こされていなければお昼まで起きていなかっただろう。

……まぁ、正直その母のせいで遅刻したんだけど。

その話は、また今度。



もうホームルームが始まっているようで、廊下には誰もいない。

教室からかすかに声が聞こえる。



(着いた。ここが教室か。)

1-3の教室のドアの前に立つ。

心臓がドクドクとなる。

1度深呼吸すると、ドアを開けた。

「すみません!遅れまし……………」

ドアの先に広がっている光景に衝撃が走る。



普通の教室に

人から羽が生えていたり、耳がとがっていたり、動物の耳が生えていたり…

明らかに人間ではない生き物が制服を着て、椅子に座っていた。

教卓には先生がいて、彼も角が生えている。

静止画のように硬直している私に視線が向いた。





「「………………………」」













「……失礼しました…」

静かにドアを閉める。

驚きすぎて逆に冷静になった。



「なんだ、まだ夢の中か。」

「現実だ。」

自分の願望はドアを開けた先生によりあっけなく破られる。

やはり、彼に角が生えているのだ。

何度見ても、角が生えているのだ。



「白羽ひまり。入学早々遅刻だぞ」

「いや、遅刻どころじゃないですよ!

教室に入ったら角とか羽が生えている人を見た方の気持ちを考えてくださいよ!」

「お母さんからなにも聞いてないのか?」

「?何も聞いてないですけど。」

「なるほどな…」

先生はやれやれと呆れたように頭を抱えた。



「とりあえず、お母さんに説明してもらえ。

電話していいから。」

「わかりました…」

お母さんは知っているということだろうか。

自分のスマホを取り出しお母さんに電話をかける。



『もしもし、ひまり?

どうしたの?今、学校じゃないの?』

いつもどうりの母の声が聞こえた。

「お母さん?

この学校、明らかに人間ではない生き物がいるんだけど、

何か知ってるの?」

『あら、というか、この村には人外しかいないの、気付いてなかったの?

普通なら気付くと思ったんだけど。』

やはり、知っていたようだ。

母の声はあっけらかんとしていて、反省してなさそうだ。

「気付いてるかどうかの前に大事なことは事前報告しておいてよ!

っていうか、人外って漫画とかの世界にしかいないんじゃないの?」

『それが、意外といるものなのよ。

ほら、ここは小説の世界だし。』

「突然のメタ発言やめて!!」



『悪かったわ。じゃあ、説明するわね。』

『まず、林種村は人里から追いやられた種族、

人外たちが人目に付かずに暮らすために協力してつくった村なの。

そして、どんどん発展させていって現在のように豊かな村になったのよ。』

「…………」

そんな村が山奥にあったんだ。

というか、元々は人里にいただなんて。

理解が追い付かない。



『それと実は、私この村の出身なのよね。

それで、人間のお父さんと結婚したタイミングで人里に引っ越したのよ。』

「…………ん?」

突然、爆弾発言が投下された。

この村が人外の村ということは、まさか…



「ちょ、ちょ、ちょっと待って!

この村の出身ってことは、お母さんも人間じゃないってこと?」

お母さんの見た目は完全に普通の人間だ。

今までも違和感なく生活してきたはず。

『………それは、そのうち話すわ。』

母の声がいつもより暗く感じた。

(話をそらされた。)

完全に何かを隠している。



『とにかく、それでまあ…事情があって、家族でこの村に引っ越すことになったのよ。』

「事情ってなに?」

『…がきたら話すわ。』

今日の母は隠し事が多い。母らしくない。



「ねえ『とにかく、そういうことだから学校頑張って!』

「ちょっと!!」

ブツッ

母は早口でそう言うと、私が言う前に電話が切れてしまった。

何を隠しているのか気になるが、無理に聞き出すのもよくないだろう。



「まあ、そういうことだから。」

放心状態の私に先生が声をかけた。

「いや、そういうことだからと言われても…

突然、『引っ越し先、人外が住んでる村だから』って言われても、状況を飲み込み切れないですよ!

気になることも多すぎます!」

色々ありすぎて脳内はパニック状態だ。



「まあ、人生は何が起こるのかわからないものだ。

引っ越し先が人外の村だったことぐらい、きっとある。」

「いや、普通ないから!!あってたまるか!!

今、実際に起こってるけど…」

信じられない気持ちと裏腹に、目の前の現実は何も変わらない。



「そうは言っても、ここまで来た時点で手遅れだ。諦めることだな。」

「そんな……」

先生の冷たい言葉が突き刺さる。



「ということで、ようこそ。林種高校、1-3へ。」

(あぁ。どうか、夢であってくれ……)



こうして、私の奇想天外な生活が始まったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る