いつも視聴者10人くらいの底辺配信者の俺。実は視聴者の数に応じて強くなるスキルを持ってる

うにのさち

第1話 なんかステータスの割に強くね?


「さて、皆さんこんばんはー、ダークネス・リョウです。今日も配信やっていこうと思います。いつも通り東京第8区画、潜闇の小洞の地下一階です!」


 配信画面の視聴者数は11名。五年間続けてきた配信の、これが現実だ。


 俺の固有スキル【注目度比例アテンション・スケール】は、視聴者の数や熱狂をステータスに変える。だが、地味な俺の配信で熱狂など起きるはずもなく、俺のステータスはこんな感じだ。


 名前:佐伯 亮太

 Lv:254

 筋力:10

 体力:10

 魔力:10

 素早さ:10

 器用さ:10


 レベルが上がってもおそらく【注目度比例アテンション・スケール】の仕様によってステータスは固定されてしまう。


 よってLv.254というランカーでもなかなかいない高レベルなのに、一般人と変わらないステータスになっていた。


 一般人と変わらない身体で生き残るため、俺は敵を『見る』ことだけに執着してきた。



「じゃあ、サクッと終わらせちゃいます」



 目の前に一体のゴブリン。

 俺はショートソードを構え、歩くような動作で踏み込んだ。

 ゴブリンの棍棒が振り下ろされる。俺は首を数センチ傾けてそれをかわし、すれ違いざまにゴブリンの喉元の隙間をなぞった。

 一歩、二歩、三歩。

 ただ通り過ぎるような動きで、ゴブリンが地面に転がった。


「はい、お疲れ様でした。ここの個体はいつも通りですね」


 >>通りすがり:え、いま何した?

 >>新参者:なんかステータスの割に強くね?

 >>暇人A:通常運転乙

 >>リョウ様ガチ恋勢1号:リョウ様の指先、今日も綺麗……♡


「あ、通りすがりさん、新参者さん初めまして~。俺、このステータスで5年やってきてるんで、ゴブリンくらいずっと『見て』きたんで~」


 俺は倒れた死体を放置し、いつものように石床の傾斜を測り始めた。


 >>通りすがり:え、何してんの……?

 >>暇人A:計測だよ。この配信のメインディッシュ。

 >>新参者:魔石拾えよwwwなんで地面測ってんだよwww


「はい、今回の戦闘のデータ取りをいつも通りして行こうと思います。まずは床の傾斜から……」


 そこへ、金属音が響く。他のパーティだろうか?

 目線をそちらに移す。


「おい、どけ邪魔だ。地下一階で燻ってるような配信者はさっさとこのダンジョンから出ていけ」


 >>通りすがり:おい、あれランカーのブレイク・ソードのパーティだぞ!

 >>新参者:マジだ!本物じゃん!


 コメント欄が言うにはランカーらしい。

 ブレイク・ソードが俺を突き飛ばすようにして通り過ぎる。

 パーティの一人が、申し訳なさそうに俺に声をかけた。


「悪いな、ブレさんも悪気があるわけじゃないんだ。実は地下五階に岩石のゴーレムが出たんだ。本来はもっと深層の魔物なんだが……危ないから、念のため早めに切り上げたほうがいいぞ」


「……岩石のゴーレムですか、珍しいですね。ありがとうございます、お気をつけて」

 遠くの方から「ブレさん! あんな言い方するとまた炎上しますよ!」と聞こえてきた。




 気を取り直して検証を続けて、一時間後くらいだっただろうか。

【エモーション・ブースト発動:全ステータス+21】

 名前:佐伯 亮太

 Lv:254

 筋力:32(10 + 21)

 体力:32(10 + 21)

 魔力:32(10 + 21)

 素早さ:32(10 + 21)

 器用さ:32(10 + 21)

 視聴者数:218名。

「……急に賑やかになりましたね」



 >>ブレイクソードファンA:おい!誰かいないのか!

 >>ブレイクソードファンB:ブレさんが大変だ!!!

 >>匿名:救援頼む!ここから一番近い配信者ここか!?



 どうやらブレイク・ソードの配信がゴーレムとの戦闘中に急に切れて、近くにいた配信者の俺のところに視聴者が集まったらしい。


「ちょっと移動します。移動中は配信乱れるけど気にしないでくださいね」


 上がったステータスを利用して最短距離で地下五階に向かう。





「はい、つきました。ここは地下二階です」


 >>通りすがり:配信さっきまで見れんかったのおま環?

 >>ブレイクソードファンC:俺も見れんかった、てか着くの早くね?

 >>新参者:こいつさっきまで地下一階で地面測ってた奴だろ!?大人の人呼んで!!



 そこには大剣を折られ、満身創痍のブレイク・ソードと、巨大な岩石のゴーレムがいた。



 >>ブレイクソードファンA:あああブレさんの剣がまたブレイクソードしてる!

 >>通りすがり:いつも大剣を折ってるけどなんだかんだ無事、故にブレイクソード

 >>暇人A:様式美だな。でも流石に今回は相手が悪すぎる。



「大丈夫ですか」


「お前……っ。なんで来た! 早く、逃げろ!」


 ゴーレムが巨大な拳を振り上げる。

 俺はその動きを見て安心した。


(なんだ。ほぼ地下一階に出るサンドゴーレムと同じ動きだ。図体が大きい分、わかりやすいくらいだ。構造もサンドゴーレムと全く同じだ)


 ゴーレムの拳が叩きつけられる。

 俺はそれを剣の腹で受け、最小限の力で軌道を逸らす。

 巨拳が俺のすぐ横を粉砕した。続く攻撃を、俺は紙一重でかわし続ける。


「なっ……お前、なぜ当たらねえんだ……!?」


 サンドゴーレムはとても弱い。普通のステータスがあれば、ちょっと攻撃するとすぐサラサラと崩れて勝手に死ぬので、ランカーであるブレイク・ソードはこの動きを恐らく知らないのだろう。


「こいつの動きはずっと見てきた。だからどこに拳が来るかはわかります」


 俺にとって、これは呼吸と同じだ。なぜなら、普通のステータスがない俺はサンドゴーレムに攻撃が通らず、遭遇するたびに2時間死闘を繰り広げていたからだ。


「……おい! なら、俺に指示を出せ! 狙う場所さえ分かれば、俺ならぶち抜ける!」


「わかりました。次の攻撃を左に一メートル避けてください。そのあと、ゴーレムの左手首の隙間に、剣を立てて。力は三十パーセントでいいです。その方が入りやすいので」


 >>ブレイクソードファンB:力30%!?何言ってんだこいつ!

 >>通りすがり:指示が細かすぎて草


 三十パーセントという指示に一瞬怪訝な顔をするが、


「……っ、やってやるよ!」


 ブレイク・ソードが指示通りに動く。彼が添えるように突き出した剣は、ゴーレムの関節の隙間に吸い込まれるように噛み合った。


「あ、いい感じです。次は右足の付け根。そこは六十パーセントでお願いします」


「おおおおお!」


 轟音と共にゴーレムの足が砕ける。


「最後です。胸の装甲の隙間、斜め四十五度から。それで終わりです」


 ブレイク・ソードの一撃が核を貫き、巨大なゴーレムが崩壊した。



> > 新参者:……は?

> > ブレイクソードファンA:勝っちゃったよ……

> > 匿名:今の指示、予知能力か何かか?


「……助かった。だがお前、今の指示。あんなの一瞬で見抜けるもんじゃねえぞ」



「一瞬で見抜いたわけじゃないですよ。サンドゴーレムとは累計で約200時間くらいは戦ってるし、自分のアーカイブも何回も見直したから、全部で800時間くらいかけて見抜いたんですよ」


 俺はこの攻略法に気がつくまでは、ダンジョンの壁の硬いところにサンドゴーレムの攻撃を誘導していた。それで少し傷がつくので、ちょっとずつサラサラになって崩壊するのを2時間程度攻撃を避けながら耐える必要があったからこの方法は革新的だった。


 >>暇人A:ヒッ……

 >>通りすがり:800時間!?サンドゴーレムなんかに!?狂気だろ……

 >>新参者:こいつ、努力の方向性がヤバすぎる……


「……お前、本当に変な奴だな」



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