第8話
エピソード8:近視遠望
配車先に現着すると、既に桂が待っていた。
お互いに無言で軽く会釈して車のドアを開ける。
「こんにちは。すみません、お呼びだてしてしまって、乗車してすぐですが、この先で車を停めてお茶でもしませんか?僕のよく行く喫茶店があるんです。」
そして郊外へと向かい、等海はタクシーのメーターを【回送】に切り換えようとした時、桂が「料金メーターはそのままで、凪海さんと時間を拘束するのですから、売上げの邪魔はしたくないので、だからメッセージアプリでなく無線室からお願いしたんです。」と桂が言った。
コインパーキングに車を停めると街外れの小さな古い喫茶店に入った。
「ここのコーヒー、なかなか美味しいんですよ。マスターのこだわりが半端なくて、、、。」
桂はマスターおすすめのキリマンジャロコーヒーを飲みながら、ボソッと話し出す。
「決して興味本位とかでなく、純粋に老婆心ながら、先日の凪海さんの事が気になってしまって、、、確かに凪海さんだって、ひとりの人間なんだから、本音と建て前があるのは当たり前だけど、この間の言動がどうしても気になってしまって、、、。」
「えっ!」等海は一瞬絶句した。
そして「そうかもしれませんけど、そんなの大きなお世話です!もう、推しのみなさんが知っている凪海はどこにもいないんです!私の名前は、千池等海です!だからもう凪海の事は忘れて下さい!!」
そう言い放つと、等海は席を立ち、ひとり店を去って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます