このミステリーがひどい! 里中芋三郎の事件簿 [Season 2]

@panjizzz

第1話早すぎた男

【プロローグ】


深夜の都内某所。

静まり返ったビル街にサイレンが響き渡った。


暴力団組長・大熊剛三(55)が、事務所の窓から転落して死亡した。

窓ガラスは“内側から外側へ”割れており、まるで誰かに突き飛ばされたような痕。

しかし事務所は内側から施錠され、監視カメラも誰の出入りも捉えていなかった。


――密室殺人。


容疑者は、当日ビル周辺にいた敵対組織のヤクザ5名に絞られた。


その中でひとり、奇妙なアリバイを持つ男がいる。

だが、そいつは一言も話さず黙秘を貫いていた。


芋三郎刑事は、この不可解な密室事件――

そして沈黙の理由を暴くことができるのか。


【解明編】


◆取調室


バンッ!

机を叩き、広瀬が怒声をあげた。


「お前がやったんだろ、東郷!」


東郷は無言のまま広瀬を睨み返す。


その体躯は2メートル近く、肩幅も岩のように分厚い。

室内の空気が一瞬で冷えた。


広瀬は耐えきれず視線をそらす。

「……うっ」


東郷。武闘派として名を馳せる男。

この巨体なら、組長を抱えて窓から投げ飛ばすことも可能に思える。


広瀬は震える声で続けた。


「目撃証言によれば……

事件当日、金髪美女を二人連れてホテルに入ったな」


東郷は相変わらず表情を動かさず、沈黙。


警察官がヒソッとつぶやく。


「さすが東郷……豪快だな」


広瀬「しかしだな!」


広瀬はモニターの写真を机に叩きつけた。


「その10分後には、ホテル裏の監視カメラに、お前が出ていく姿が映ってた!」


「アリバイ作りのため“ホテルに入ったふり”をしたんだろ!!」


東郷の額にうっすらと汗がにじむ。

しかし、それでも黙秘を崩さない。


その時――

プルルルルル。


広瀬の携帯が鳴る。芋三郎だ。


「……はい、広瀬です」


芋三郎『広瀬くん。犯人は東郷ではありません。

証明しますので、現場に来てください』


「え……東郷じゃない!? そ、そんな……」


◆現場事務所(30分後)


広瀬は到着するや否や、芋三郎に呼ばれた。


「広瀬くん、悪いけどそこに乗ってもらえますかね」


そこにあったのは――ルームランナー。


広瀬「はい……これが何か?」


スイッチ、オン。


ドゴォォォォォッ!!


いきなり最高速度!!

広瀬は吹っ飛ばされ、そのまま窓から落ちかける。


「うわあああああ!!」


ギリギリのところで芋三郎が腕を掴んだ。


床にへたり込む広瀬。


「こ、これは……」


芋三郎「スイッチを入れたとん速度がMAXになるよう細工してあるんです」


そこへ警察官が駆け込んでくる。


「芋三郎刑事!ルームランナーのメンテ業者に確認取れました!

やはり後から改造されていました。依頼者は……大熊剛三の妻、紅子です!」


広瀬「なっ……じゃあ犯人は妻の紅子!?」


芋三郎「間違いないでしょう。

紅子は剛三と不仲でしてね。誕生日プレゼントが“ルームランナー”だったことが

相当腹立たしかったらしいですよ」


警察官「それで突っ返されてここにあるそうです」


広瀬「で、でも疑問が残ります。

東郷は犯人じゃないのに、なぜ黙秘するんですか?

無実なら話せば済むことじゃ……」


芋三郎「それはですね……“男のプライド”ですよ。

犯人だと思われてた方がまだマシだったんでしょう」


広瀬「プライド……?」


芋三郎は奥の部屋に向かって手招きした。


入ってきたのは――金髪美女二人。


「この二人は事件当時、東郷と一緒にいた女性です」


広瀬「え……じゃあ本当にホテルで……?」


金髪美女たち「東郷ちゃん、めっちゃ早かったのよ〜(×2)」


広瀬「は、早かった……?」


金髪美女たち「私ら、あれ以来“ゴルゴ13”って呼んでるの(×2)」


警察官「デューク……東郷……」


◆翌日


釈放される東郷。

しかしその表情はどこか影が落ちていた。


広瀬「……あ、あの、その……誰にも言わないから……」


東郷は無言のまま軽く会釈し、

沈む夕日の中へ歩き去っていった。


彼の背中は、ゴルゴ13にも負けない哀愁を漂わせていた。


パトカー「パーーッ……プー……」


――File No.11 完。

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