学園のS級美少女に頼まれた俺は、謎のS級美少女になる
ヘイ
第1話 もう一人のS級美少女
S級美少女と呼ばれる生徒がいる。
俺も一目見て「そりゃそう呼ばれるわ」と納得した。黒髪ショートに色白の肌。天使のような微笑み。
俺も、そこらの男子と同様に恋に落ちた。
「……
今日もかわいいなぁ、青海さん。
青海
「はぁ」
高嶺の花なんだよなぁ。
でもどうせ、青海さんには好きな人いるかもだし……いや、でも。
「どうしたもんかね」
新しい恋を始めようにも、惚れた相手が青海さんだからか、次に行けそうもない。それに俺はまだ、青海さんの好きな人を認識してない! そう! まだ可能性がある!
「────青海静希さん! 好きです! 付き合ってください!」
誰かの告白が聞こえた。
「ごほっ!?」
しかも相手は青海さんだ。
気になるやら、何やらとあったせいで、飲んでたコーヒー牛乳が変なところ入った!
「けっほ……げほ」
教室に居場所のない俺の逃げ場である校舎裏でまさか告白イベントがあるなんて。
「ご、ごめん。他に好きな人がいるから」
好きな人いるの!?
ぐぁああ……いや、わかってた。わかってたさ。そりゃ、みんなに好かれるにしても、青海さんだって一人の女の子なんだし。
誰かを好きになろうと、俺たちだって勝手に好きになってるんだし……それをどうこう言えるわけないじゃん。
「そっか」
すまん、顔も知らぬ男子よ。
君が振られて、俺はちょっとホッとしてる。
先輩だったらすみません。
「ふぅ」
とりあえず俺の緊張は解けた。
いやぁ、よかったよかった。美味しいご飯が食べれるよ。あ、別に人の不幸を喜んでわけじゃないんですがね?
「────空江……
あ。
「青海さん」
俺の咳き込みが聞こえてたのか?
「さっきの聞こえちゃってた?」
「…………」
なんて答えるのが正解なんだ!? 教えてくれ、神様! 無宗教の人間だけど! 後払いでよければ賽銭で五十円出すから!
「…………」
おお、神よ。
やはり答えてくれないんですね。
「空江くん?」
「あ、女神」
俺は青海さんの前で手を組んだ。
「空江くん!?」
「はっ……す、すみません。緊張しちゃって」
好きな人を前にして舞い上がっちゃったんだ。ごめんなさい。穴がなくても墓穴を掘って埋まりたい。生き埋めにしてくれ。
「えーと……さっきのって、告白のことですか?」
「そうそう。いつも決まり文句で断っちゃって……好きな人いるって言ってるんだけどさ」
「……そ、その!」
「ど、どうしたの?」
「……その、青海さんの好きな人って」
誰なんでしょうか、と聞く俺の声は尻すぼみになってくる。気になるような聞きたくないような。
「かっこいい人」
「かっこいい、ですか?」
なんか抽象的だ。
「もっとこう、具体的な感じの」
「私だけに聞くのはズルいよ。なら、空江くんも教えてよ」
あなたです、とは言えない!
それは……気持ち悪いってのは俺でもわかるぞ!
「か、かわいい人です」
逃げ道は幸い青海さん自身が用意してくれてた。
「つまり、私?」
「ぶほっ!?」
何を言い出すんだ!?
「げほ、げほっ」
青海さんは僕と視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「よく咳き込むね、空江くん」
だ、誰のせいですか、誰の!
僕は顔が熱くなるのを感じながら、顔をのぞいてくる青海さんを見る。青海さんは「あっついねー」と言いながら服の襟をパタパタとする。
「わ、私もさー……かわいいってよく言われるし? だから、どうなのかなって」
言いながら俺の横に座る。
「それは……はい、かわいいと思います」
これは世間一般での話であって、俺だけの意見じゃないですよ? いや、俺もかわいいと思ってますけどね。
「それにしても、ここ良いね」
「そうですか?」
人気はないし、日当たりも悪いし。
良い場所ってわけでもない。俺だって、別に教室に居られればここに逃げてくることはないのに。
「そう。人いないし」
「今日は……なんか特別でしたけど」
告白イベントあったし。それに今は……俺はチラリと青海さんを見る。青海さんは空を見上げてる。
「今は夏で、日当たり悪いから涼しくて良いですけど、普通に教室のほうが快適じゃないですか?」
「私……実はあんまり注目されるの好きじゃないかな」
俺はさっと目を逸らす。
ジロジロ見ててすんませんした。
「なんか、学校中で美少女だーとか言われると照れくさいような、嬉しいような感じなんだけど……その、全部の行動、全部の受け答えまで注目されちゃってるような気がしてさ」
気が抜けないんだよね、と青海さんが呟く。
「私、そこまで優しいわけじゃなくて、それに本当はズボラだし……女子力そんな高くないし」
苦笑いを浮かべながら言う。
「……もっとかわいい人とかいたら、ここまで注目されないのかなーとか考えちゃうし。結構、性格悪いけど……身代わり探してるんだよね」
青海さんよりかわいい人……は俺には思い浮かばない。青海さんがナンバーワンで、オンリーワンなんだ。俺が青海さんが好きだから、そう思ってしまう。
「…………」
「ど、どうしました? 青海さん」
俺をまじまじと見つめてくる青海さんに、少しのけぞった。
「いや、肌綺麗だなー……って。空江くんの顔、今まであんまり見れてなかったけど……中性的で、結構パーツ整ってるよね」
「ありがとうございます?」
「わっ、ほっぺ柔らかい!」
うおおおおおおっ!!! 青海さんの指が俺の頬に触れてるぅううう!!! ありがとう神! 今度から入信するんで名前教えろ!
「もっちもちだし」
も、もっと触ってくれても結構です!
「ねぇ、空江くん?」
「ふぁ、ふぁい?」
天国か? ここは天国なのか?
「……身代わりになってもらえない?」
「え?」
身代わりって、まさか……!?
「お、俺を……」
「私よりもかわいくする! ダメ?」
ふっ、決まってんだろ?
俺は男だ。そんで、好きな女の子からの頼みなら。
「やってやらぁ!」
断るわけないだろ!
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