【BL】白髪の駆け出し冒険者、真っ黒オークに奪われる
椎葉たき
第1話 駆け出し冒険者、オークに襲われる
艶のある真っ白な髪を振り乱し、青い瞳で暗い森の先を見据え、ユーインはブラックドッグから必死に逃げる。
――こんな森の奥に来るはずじゃなかったのに!
森の入り口付近で一人、薬草採集をしていたところ、ブラックドッグに遭遇してしまった。ブラックドッグは群れで獲物を狙うモンスター。駆け出し冒険者のユーインが相手にするには、無謀な相手だ。
森の入り口だから、薬草採集だけだからと油断し、一人て来てしまった見通しの甘さが招いた結果がコレだ。
思えば、ユーインは故郷の田舎町に居た頃からそんな少年だった。
学校に通っていたときは、白い髪に青い瞳、小柄で細身な体躯の持ち物の彼は、可愛いと女子たちからモテた。
剣術科の成績は中の中。
小柄を活かした戦術にも限りがあり、体格に恵まれ、素早い動きも出来る男子には通用しない。
ユーインは両親を早くに亡くし、祖父母に育てられた。祖父母の家はポーション屋を営んでいて、手伝いをする中、冒険者との交流もあって、自分もになりたいと剣術科を選んだ。
剣術はパッとしないし、成績はど真ん中、可もなく不可もなく目立たなくても、容姿のお陰で女子から人気者だった。
ユーインには彼女が居た。いよいよ卒業となったとき、「卒業したら結婚しよう」とプロポーズした。
彼女の答えは、「ポーション屋を継がないなら嫌」だった。
剣術の成績が良かった男子たちは兵士になって安定した収入があるけど、冒険者なんてどうなるかわからない、付き合っているのなら良かったけど結婚は嫌だと断られてしまった。
ロマンに生きたいユーインと違い、彼女は堅実的に将来を見据え、地元の兵士団の事務に就職した。
他の女子たちもそうだ、学生の頃はモテたけれど、卒業した途端、夢見がちなユーインに関わらなくなり、堅実的に就職した男子と結婚していった。
十八歳でフラれ、十九歳で見返してやると決起して、田舎町を出て王都を目指しながら、ギルドで依頼を受けて路銀を稼ぐ日々だ。
その結果、現在、モンスターの群れに追われて絶体絶命だった。
ブラックドッグは獲物が森の外へ向かわないよう、奥へ奥へと追い詰める。
ユーインは息を切らして暗い森の中を走り続け、喉が貼り付く。脚は鉛のように重い。膝が笑って、もう走れそうもない。
ユーインを振った女たちが言った通り、地元でポーション屋を継いでいれば、モンスターに殺されずに澄んだ。
後悔しても、もう遅い。
遠吠えが側で聞こえ、ここで死ぬのだと覚悟した。
群れで獲物を狩る、狡猾なブラックドッグに囲まれ、震える手で剣を構える。
飛びかかってくる一匹に剣を振るも、身軽に躱され、右脚に食いつかれて激痛が走った。
脚に食いつくブラックドッグに剣を振り下ろそうとした腕を別の個体に噛まれる。
血のにおいに興奮したモンスターの群れに引きずられ、引き倒されて、肩口にも別の個体が噛み付いた。
実力もない、仲間も居ないユーインは為す術もなく、このまま食い殺されるのだと思い、脳裏に育ててくれた祖父母の顔が浮かび、心の中でゴメンと謝る。
ブォォォォォ……!
森の中、突如として地を這うような音が響いた。
ユーインに食いついていたブラックドッグたちが警戒し、全ての個体がある一方向に顔を向ける。
森の奥から、壁のような大きく真っ黒なモンスターが現れた。
突き出た腹、四本の牙に、鼻が特徴的な、豚の顔のようなイノシシのような、巨大なオークだった。
「ハイオーク……? なんで、こんなところに……」
真っ赤な瞳にギロリと睨まれ、逃げられないのだとユーインは悟る。
肥満体型に見えて、ハイオークの体は鋼の筋肉の上に脂肪という鎧を纏った、戦士として理想的なバランスをしている。
とてもじゃないが、駆け出し冒険者が相手に出来るモンスターではない。
ブオォォォォォォ……!!
空気を震わせる低重音が響き、威圧されたブラックドッグの群れが一斉に逃げ出す。
血を失い朦朧とする中、真っ黒なハイオークが巨体を揺らしながら近づいてくる恐怖が、意識を失う前の最後の記憶だった。
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