第7話 マッドサイエンティスト

あれから別の基地を2カ所経由して出発から3日目。ようやくカティーが見つけた遺跡入り口と思われる場所に到着した。


ガソリン缶も帰りの分も余裕で残っている。

ロイズの予報も変わることなく、このまま晴れが続くはずだ。なんとか1日で捜索を終えて、出来ればマナを目醒めさせたい。


途中、魔獣の群れに出くわすことが無かったのは逆に不安だったが。



亜音「なんだかインディージョーンズに出てきた遺跡を思い出すわね。こっちは全部氷だけど」


久音「はい、奥からは時々少し温かい風が出てきていますね」



その為か、周りの氷は何度も溶けてまた凍ってを繰り返したようで、ツルツルで光り輝いている。



久音「なぜ魔獣がいなかったんでしょうね…」


亜音「南極点で出会った群れ。むしろあっちのほうがイレギュラーだったのかもしれないわね」


久音「でも、この奥には何が潜んでいるか分かりません。気を抜かずに行きましょう」



近接戦は私の方が有利だ。いつでもAKSを撃てるように初弾を装填して背中に回した。

私を先頭にカティーと姉さんが続く。中の様子を確認するために、まずはマナは車に置いておき3人で進む。


入り口は人工的に作られたような氷の門だったが、そこをくぐるとすぐに自然の洞窟に変わった。



カトレア「奥から、魔力を感じます」



3人、慎重に奥へと進む。

変わったところは無いようなのだが……



カトレア『誰かいます!』



カティーの声で歩みを止めた。

3人ともライトを消す。



亜音『姉さん、いつでも撃てる準備を』



姉さんはコクリと頷いて私の横に立った。

私も背中に掛けていたAKSを前に持ち直し構える。こんなところにいるのは魔術師か悪魔召喚に関する裏社会の者か……



***



暗闇の洞窟の奥、広い空間のようで明るくなっている。青白い光で人工的な明かりだ。



久音『私が確認します』



姉さんが前に出て岩肌に背中をくっつけながら中を確認する。……と。



久音「ディーテさん!」



姉さんが声を上げて中に駆け込む。

すぐに姉さんの後を追うと1人の女性が振り向きざまに立ち上がった。ウェーブがかったロングの黒髪に白衣を羽織った背の高い女性だ。フチ無しの丸い眼鏡を掛け、いかにも化学者と言った風貌だ。だが、白衣の下は…女王様のボンテージ?



ディーテ「あれ?“後輩”くんじゃないか。久しぶりだね。まさかこんなところで会うとはね」


久音「ディーテさんこそ、どうして南極にいるんですか?」


ディーテ「そりゃあ恐らく後輩くんと一緒さ。謎の遺跡発掘のためだよ♡」



***



ディーテはクィンシーの仲間の1人。

姉さんもみんなも、まともに話をしたことが無いらしい。彼女は基本的に単独行動で、自分の意思優先。先輩さんも分かっていて放し飼い?にしているらしい。



ディーテ「いや、後輩くんがお友達を引き連れて来るとはねぇ。スナイパーらしくないね♡」



雰囲気は先輩さんに似ている。

が、ずっと絶やさない笑顔は何を考えているのかさっぱり分からない。それになんだろう、さっきからずっと私とカティーをチラチラ見ている。



ディーテ「セフレかい?」



???

私とカティーの頭のうえに、はてなマークが浮かび上がった。



久音「……!ディーテさん!すぐにそういう対象に見ちゃうのはやめてください!」


ディーテ「あ、違うの?あわよくば私も混ぜてもらおうかと思ったんだけどね♡」



…………!

始めは突然過ぎて言葉の意味が分からなかったが、まさか、そんな事を!?

カティーが顔を真っ赤にしている。



久音「こちらの日本人の方は亜音さん。今は私の妹ですよ。こちらのロリっ子美少女はクラウディアス教団の元教祖様のカトレアさんです」


亜音「私の名は間宮亜音。宜しくお願いしやす」


カトレア「ご紹介にあずかりましたカトレアです。カティーとお呼びください」



ディーテはニヤニヤと私たちを見ている。

そして……



ディーテ「あれだろ?亜音くんは中二病の軍事オタクで、カトレアくんはスケベなオタク聖女様なんだよね?」



なぜ知っている?



ディーテ「いちおう、クィンシー仲間の間で情報は聞いているし、先輩からも教えてもらった」



なんて紹介のされ方なんだ……

まあ、間違いは無いけれど。



ディーテ「あ、ちなみに私は天才科学者で冒険家、それとドMな謎の美女ディーテさんだよ。名前はエロスの女神のアフロディーテ由来さ♡」


久音「……はぁ。亜音さん、カティーさん。このディーテさんで私たちクィンシーの仲間は全員です。先輩、私、ロイズさん、ユーレカさん、そしてディーテさん。全部で5人。いつの時代もクィンシーは5人。そうやって今までやってきたらしいんです」



唐突にクィンシーについての条件を話してくれたが、まずは目の前の謎の美女ディーテだ。一体何者なんだ?



ディーテ「私は自身の知的欲求を満たす為だけにクィンシーになったんだ。魔術とか世界平和とかはどうでもいいんだ♡」



で、その服装は……

地熱があるからといっても、気温は10℃にも満たないはずなのになぜ露出多めなのか……。



ディーテ「いつでもどこでも『見られているかも知れない』という緊迫感が堪らなくてね♡」


カティー「素でボンテージを着ているとは……

クィンシーという肩書きが無ければただの露出狂ですね」



カティーも、クラウディアス教団元教祖という肩書きが無ければ、ただの限界クソオタクよ。



***



久音「やはり、ここが悪魔召喚の遺跡でしたか」



ディーテは、純粋な探究心から悪魔を召喚してみたくなってここに来たという。それで世界がどうこうなろうとは関係ないらしい。

彼女がもしもインペラトールの起動に興味を持ってしまったら、と思うと……



ディーテ「いや~、ちょっと離れたところから見ていたけど、エリア51しかり、インペラトールの鍵の奪還といい、後輩ちゃんは色んな厄介事に巻き込まれているね♡」


久音「ディーテさん、今は私はもう“久音くいん”というコードネームがあります。今後は久音とお呼びくださいね。それにしてもさすが情報通ですね。今までの行動を全部覗き見していたんですか」


ディーテ「本当は、覗きよりも覗かれる方が好きなんだけどね♡」



ドMで変態の女王様……

カティーとは違った方向でクセが強そうだ。



ディーテ「どうだい、寒かっただろう。1杯飲まないかい?温まるよ♡」



そう言って彼女は傍らに置いてあったリュックから、少し大きめの缶のボトルを取り出し渡してきた。磨き上げられたシルバーのスキットルには美しい女神の彫刻と宝石が装飾されている。


が、姉さんがすぐにそれを私から奪い取った。



久音「絶対にヤバいお酒ですよね!」


ディーテ「おや、抜かりないね♡」



そういえば前に姉さんの隠れ家でこっそり盗み飲みしたワイン。催淫効果があったな。ディーテから渡された物だったのか?

姉さんが困り顔で私とカティーを見る。



久音「ディーテさんから手渡されたものは、ぜーーーったいに飲食禁止ですからね。この人、普通に自家製のおかしな薬を混ぜて私たちで実験するヤバい変態さんなんですよ」


ディーテ「手厳しいね。変態って言われてゾクゾクしてしまったよ。久音くん♡」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る