春夏秋冬

田中浅はか

春、

 まだ寒さの爪痕がそこかしこに残る中、君のいない隣を独りで歩く。


 まるで行く手を阻むかのように大量に散っていく花弁が、僕の視界を覆っては「前に進むな。」と引き留めてくるようだ。





 君の所為だ。





 きっとそう思いたいだけだった。気の所為だった。


 桃色の桜の木の下には死体が埋まっているらしい。と、そういえばいつか、誰かがつまらなさそうに言っていた。


 成程、とそれを見上げた。道理で血を吸う化け物が美しい訳だ。


 しかし結局、そんなことを考えながらも思い出すのは、君の八重歯の白さと笑った顔の眩しさだけだった。


二度と戻っては来ない、うつくしい君の、桃色の頬。

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