第29話 心臓の鼓動
俺達が入ったプラネタリウムは俺が子供の頃に行った近所のプラネタリウムとは違い、凄いお洒落な空間だった。親子連れは殆どおらず女性客やカップルしかいない。何か俺が思っていたプラネタリウムとは訳が違うんだが。
「ねえ、竹之内さんや」
「どうしましたか?」
俺の前を先導している竹之内さんは後ろを振り返って首を傾げている。うっ、振り向き顔も美人ですね。
「俺みたいなの場違いじゃないか?」
「そうですか?男性客も結構いらっしゃいますけど」
そりゃいるけどさ。周りを見渡すと彼女と腕を組んで歩いている人ばかりだ。男の一人もんなんて俺くらいじゃないの?俺はキョロキョロ周りを見渡す。傍目から見たら挙動不審で捕まるレベル。
「気にしすぎですよ。私と来ているんだから大丈夫ですよ」
「……」
それって付き合ってるカップルに見られるってことなのでは?竹之内さんもしかして分かって無いのか……。俺は諦めて竹之内さんの後ろをトボトボ着いていく。
「え〜と、私達の席はこちらですね」
「先に席予約してたん……だ……」
竹之内さんが案内してくれた席は所謂ペアシートというやつだった。円形のベッドの様な形になっており寝ながら頭上のプラネタリウムを観覧出来るようになっている。というより一つのシートに二人が寝る形なので凄いことになっている。
「た、竹之内さん?これって……」
「はい、ペアシートです。二人並んでみるならこれかと思いまして♡」
思いまして♡ではないですよ。竹之内さん。え、俺これからしばらく竹之内さんのすぐ横で寝ながらプラネタリウム見るの?俺死んじゃうんだけど。
「お、俺、今からでも一般シートに……」
俺達のペアシートの後ろには普通の椅子の一般シートがある。全然席に空席があるし俺だけそちらに移動すれば竹之内さんは一人でゆったり広いシートで楽しめるだろう。俺がそう提案すると竹之内さんは頬を膨らませた。
「駄目ですよ。このシート、競争率高くて大変なんですから」
そんなシート無理やり取らなくても良かったじゃんとは流石に言えない。俺は一般シートに移る、竹之内さんは一緒にペアシートに座ると聞かない。押し問答を数分した後、折角予約してくれた竹之内さんをたてる事になり俺は大人しくペアシートに行くことにする。
「さ、座りましょ」
竹之内さんはペアシートの右端に寝転がり、俺に手招きをする。え、俺この生殺し地獄を耐えなきゃいけないわけですか。俺は脳内で般若心経を流して煩悩を祓う。覚悟を決めて竹之内さんから数センチ空けて寝転がる。流石にくっつくとかは無理なので。
「もう、何で離れて座るんですか」
竹之内さんはそう言って俺のすぐ隣でくっつく形で寝転がる。え、もしかして俺に死ねとおっしゃってます?
「さ、流石に男女がくっついて寝転がるのはまずいんじゃないのかな?」
「何がまずいんです?」
え、鬼の頭領?てそんなボケをしている場合じゃないよ。すぐ横に竹之内さんの顔があって俺は先程から緊張で口の中が乾燥し心臓の音も騒がしい。
「い、いや、俺緊張しちゃってさ」
「私もですよ」
俺が「え?」と聞き返すと、竹之内さんは自分の胸に手を置き目を瞑って何かを考えている。どうしたんだろう。
「私の気持ちの名前をまだ知らないんですけど、でも」
「?」
竹之内さんの気持ち?俺は意味が分からず頭の中で混乱している。竹之内さんは目を開けて眼の前の俺の瞳を見つめる。
「あなたとこうしてすぐ近くにいるとドキドキするんです」
「そ、そりゃ俺もだよ」
女子とこんな近くで密着することなど人生で始めてだ。心臓に悪すぎる。
「……」
「?」
竹之内さんが何かを言った気がしたが何を言っているか聞き取れなかった。というか俺はこれ以上、竹之内さんの目を見ていたら頭がおかしくなってしまいそうだと思って真上のプラネタリウムを見つめる。まだ始まっていないから周囲の電気で見辛いが綺麗な星空が見えた。竹之内さんはふふっと笑って俺と同じように真上を見つめる。
【竹之内美帆視点】
私達はペアシートの上で見つめ合う。彼の瞳は困惑しているのかグワングワン揺れている。その様子が可愛くて何処か愛おしくて不思議な感覚だった。でもそれ以上に自分の鼓動がドクンドクンと今までにない程、緊張している事の方がよっぽど不思議だ。
「私、やっぱり……」
彼に聞こえないように独り言を呟く。彼が私のことを恋愛対象として見ていないという事は何となく分かる。そしてとうとう、彼は我慢が出来なくなったのか私から目を逸らして真上のプラネタリウムを見てしまう。私は名残惜しいのと彼の可愛らしい様子に笑ってしまう。
ああ、やっぱり私もこの人の事を……。
あとがき───────────────────
書いててすごい終わりそうだなと思ったけどまだ十万文字いっていないし終わりません。
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