第12話 一緒にいたい人
「お〜い、そろそろ起きろ」
溝口が寝てから時間が経っているので、流石に起こしたほうが良いと思ったので肩を揺らして起こす。
「う〜ん。あれっ、今何時?」
「もう五時だな。一時間くらい寝てたぞ」
溝口は大きなあくびをして伸びをする。こいつ、俺が目の前にいるのにでかいあくびしたな。それお前、彼氏とかの前でやらない様に気をつけろよ。
「流石に今から何処か行くのも面倒な時間だな」
「そうだね〜。戸松この後、何もないならもうちょっとここにいようよ」
溝口は机に突っ伏しながら頭だけ上げてこちらを見てくる。お前可愛いんだからそういう仕草止めてくれ。めっちゃ照れる。
「それは良いけどさ、何話すんだ。残念ながら俺の会話のレパートリーは貧弱だぞ」
「ウケる。そんなんじゃ彼女出来た時、どうすんのよ」
俺に彼女なんて出来る気がしないぞ。それに引き換え、溝口はモテそうだよな。可愛いし、コミュ力もあるしフェンシングも全国レベル、それに実家も太い。男なんて選び放題だろう。
「やかましいわ。それより溝口は彼氏良いのか?いくら俺とは言え男と一緒に喫茶店なんか行ってるが」
「はあ?彼氏なんかいないけど。フェンシングが実質恋人みたいな」
へえ、彼氏いないのか。モテるだろうに恋愛に興味がないのだろうか。まあ、そこら辺はプライベートな事だろうし聞かないほうが良いだろうか。
「それとも私に彼氏がいないか気になるの?」
「ん?いや、別に」
「あっそ〜ですか」
溝口はまたプリプリしだした。こいつのプライド、めっちゃ分かり辛いな。今の会話に何に怒るところがあるんだ。話の流れからして聞いてこいということだろうか。
「いや、お前モテるだろうから彼氏いるんだろうなって思っただけ」
「まあ、告白されたことはあるけど……」
「まあ、そうだろうな。中学でか?」
「中学もあるけど、高校でも」
え、まだ四月なんだけど。告白したやつ、勇気とかやる気があるんだろうが気が早いな。そんなもんなのだろうか。
「その口ぶりだと断ったみたいだな。何処まで聞いて良いのか分からないが、あんまり合わなそうな感じだったのか?」
「いや、カッコいい人だよ。優しいしフェンシング部のキャプテンなんだけど」
え、男子フェンシング部のキャプテン。入学したばかりの新入生に手を出そうとしたんか。溝口なら可愛いし、おかしなことでもないのか?
「じゃあ、なんで断ったんだよ」
「……、言いたくない」
踏み込みすぎたか。俺達は友達だが話したくないことだって沢山あるだろう。彼女が言いたくないことまで聞く気はない。
「そっちこそ、どうなの?竹之内さんから何か言われたりしてないの?」
「はあ?竹之内さんが俺なんか好きになる訳無いじゃん」
「……」
溝口が俺をジトッとした目で見てくる。いや、あり得ないだろ。天下の竹之内さんが俺みたいな一般生徒を好きになるなんて。まあ、学力だけはあるが。
「それに住む世界が違うだろ。俺とお前らは」
「なにそれ……」
そう、俺とお前達とは住む世界が違う。俺の家だって別に貧乏という程ではない。だけど竹之内さん、溝口、そして太田さんもどっかの名家だって話だし。そんな人達とはワンランク、どころか何段もの差がある。別に親がどうとは思っていない。俺をここまで育ててくれた事には感謝しているし。
「意味分かんない。同じ芦月学園の生徒じゃん」
「そりゃそうだけどさ。友達として仲良くはなれるとは思うけどさ。恋人となると話は違うというか」
「アニメとか漫画読みすぎじゃない?今どき、好きな人同士で付き合うでしょ」
「え、そうなの?」
なんかそういう名家って恋人とかにも口出すってイメージなんだけど。そういう感じでもないのか。溝口はため息をついている。俺ってそういうルールとか詳しくないんだから優しくしてくれ。
「そうだよ。なんか身分違いの恋みたいな話がしたいんだろうけど私だったら気にしないかな」
「お前はそういうのフラットだからな。まあ竹之内さんもそういう差別みたいなのしなさそうだが」
「だったら気にする必要ないじゃん」
話していて思ったが何で俺が竹之内さんや溝口との恋愛が起こるかもみたいな論調で話してるんだ?滅茶苦茶不思議に思ったが指摘できるような空気でもないから言い出せない。
「そういうのは分かったけどさ。でも女子だってイケメンとか好きになるもんだろ」
「それはそうだよ。男子だって可愛い子と付き合いたいでしょ」
まあ、俺だってイメージ出来ないけど隣に可愛い子がいて欲しいとは思うだろうなあとは思う。果たして俺はどんな子と付き合うんだろうか。
「まあ、でも私は顔も大事だけど一緒にいて楽な人がいいな」
「ああ、それはそうかも。一緒にいて疲れちゃう人とかいるもんな」
「戸松は一緒にいて疲れるけどね」
え、今勝手に俺の事を不合格判定にしたの?
あとがき───────────────────
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