第4話 楽しそうな竹之内さん 不満な溝口
「それってどういう事かな?」
「私の家はちょっと普通の家庭とは違う所がありまして」
そりゃ、天下の竹之内グループの社長の家だ。一般家庭とは全く違うのだろう。だがそれだけではないのだろう彼女の話を黙って聞く。
「私は今までお友達と一緒に外へお出かけなどをさせてもらえなかったんです。お付の人を付けてだったら許可貰えることもあったのですが」
いくら大企業の娘だからといってもそれは過保護すぎやしないかと思った。だが社長令嬢でここまでの美人なのだ。俺の思いもしないような危険があるのかもしれないと思った。
「ですが昨日は高校生になったということで少し無理を言ってお友達と一緒にお出かけする事になったのです」
「なるほど、あれっ、でも昨日は一人だったよね?」
「はい。お友達は皆、習い事や部活などで忙しいみたいで。それに彼女たちも私と同じであまり外出を許可されていたわけではないらしく……」
え、お嬢様達ってそれが普通なのか?流石に竹之内さんの周りの本物の上流階級の人達だけだとは思うのだが真実はわからない。
「そこで昨日、そういうのに慣れていそうな戸松君にお願いしたいのです。私に普通の高校生が生きそうなお店や遊べるお店を教えて欲しいのです」
「ああ、そういう事なら。一般人が行くような店なら紹介出来るよ」
「いえ、恐らく戸松君が思っているのとは違います」
一体全体どういう事だろうか。高校生が行くようなお店をピックアップすれば良いという訳では無いのか。
「私は戸松くんと一緒にそういうお店に言って頂きたいのです」
竹之内さんの一言で俺は吹き出してしまう。それって俺と二人で何処かに出かけたいということか?それって絶対まずいだろ!!竹之内さんと二人きりというのも勿論だが、それ以上に周囲の過保護気味の人達が許してくれないだろう。
「そ、それは流石にまずくない?お家の人とかお友達にバレたら怒られるんじゃない?」
娘の外出を許可していない家だし、周囲の人も男の俺が話しかけただけで泡を吹くような連中だ。最悪の場合、俺の身が危ない事になっては困る。
「周囲の人は関係無いと言いたい所ですが、戸松君のご迷惑をおかけしたい訳ではないので外で会うという形なら問題無いかと」
それだったらバレないからいいのかと思ったが、俺は悩む。竹之内さんみたいな可愛い子と一緒に出かけたいという本音と絶対面倒な事に巻き込まれるという疑念。いや、ほぼ確信がからだ。
「あ、勿論。一緒にお店に行く際は全て私がお金を出します。お願いする立場ですし」
「いや、それは駄目だよ。友達同士で奢り奢られはあるけど。一方的にお金を出してもらうのは健全じゃないと思うな」
俺がそう返すと、竹之内さんはぽかーんとしている。心底不思議そうな顔をしているな。お金持ちってそういう価値観まで違うのか?いくら持っているお金の桁が違うとはいえ同級生に一方的にご馳走になるほど飢えているわけではない。
「まあ、そういったお話はおいおい。では今日の放課後は空いていますか?」
「ああ、今日は暇だとおも……」
俺はここまで言って気が付く。今何と言った。これって今日出かける事を承諾したということではと。竹之内さんは俺の言質を取った事が嬉しいのかニッコリ笑った。俺はまんまと策にハマった事を察する。
「ありがとうございます。ではまた放課後よろしくお願いしますね」
俺が返事する前に竹之内さんは教室へ戻ってしまった。竹之内さん優しいは優しい様だが意外と計算高い所があるのかもしれないな。俺はう〜んと悩んで立ち止まってしまう。しばらく立っているといきなり背中がばしーんと叩かれる。
「いたああああ」
「今のどういう事なの?」
俺の背中を叩いたのは溝口だった。てか、その口ぶりだとコイツ、俺達の話を隠れて聞いてやがったな。溝口の顔は滅茶苦茶ニヤニヤしている。
「聞いた通りだよ。何か、二人で放課後出かける事になった」
「天下の竹之内さんと放課後デートだなんて大出世だね」
こ、こいつ、他人事だと思って好き勝手言いやがって〜。そりゃ可愛い女子と一緒に出かけるのは楽しいと思うが、懸念事項が多すぎるぞ。
「ねえ、そのデート、私も行っていい?」
「え?」
溝口からの思いがけない提案にびっくりするが良いのではないだろうか。竹之内さんだって男の俺より同性の溝口がいたほうがやりやすいだろうし。俺だって二人きりより溝口がいたほうが心強い。魅力的な提案だと思ったが……。
「いや、ちょっと待て。溝口今日部活は?」
「あっ」
その様子だと今日も部活あるみたいだな。前にフェンシング部は週二回休みとか言ってた気がするしそんな気はした。という事は溝口の参加は今日難しいみたいだな。
「う〜ん、今日一日くらい休んでも……」
「いや、入学したての一年生が勝手に休むのはまずいだろ」
コイツ、参加するために部活サボろうとしやがった。いくら何でもそれは駄目だろ。運動部ってそういうの厳しいって聞くし。
「私は今日も地獄の練習だって言うのに、二人でイチャイチャするなんてムカつく」
俺が反論すると溝口は面白くないのか機嫌が悪くなってきたのか嫌味を言ってきやがった。
「イチャイチャなんてしねえよ。店紹介するだけだぞ」
「それで済むならね」
溝口はそう言って俺のすねを軽く蹴った。痛っ、そこはちょっとの衝撃でも痛いんだぞ。俺はすねを抑えてうずくまる。その様子を見た溝口はそのまま教室へ戻って行った。あいつ、鬼か?一体何だというのだ。最後の一言はよく分からないが放課後は俺と竹之内の二人でお出かけする事が決まってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます