第16話 まだ見ぬ脅威
「アルゲン…ダヴィス…」
「待て、6機生み出されたアルゲンダヴィスシリーズは全て撃破されたんじゃ無かったのか。それも全て、アストラル大陸連合によって」
オーケアノス艦長の吾妻が呟き、司令長官のハントが時雨に問い掛けた。
アルゲンダヴィス…記録に残っている重型ヴォイドの中では、オリジナルリヴァイアサンをも凌ぐ強さを誇るヴォイドだ。数百mに及ぶ体躯を持ちながら空を自在に駆け、躰のあちこちには火砲や子機の格納スペースを備えており、数多の人類勢力が奴らに殲滅された。
しかし、今ハントが言ったようにアストラル大陸連合はこのアルゲンダヴィス6機全ての撃破に成功しており、この名声によって勢力を拡大した筈だ。故に、時雨が言った事は筋が通らない。
「…生産工兵型ヴォイドが、我々が撃破したアルゲンダヴィスの残骸を掻き集め1機のアルゲンダヴィスに修復してしまったんだ。我々がこの事実に気づいたのは2ヶ月前、戦闘哨戒に出ていた空中艦が消息不明になった事が発端だ」
そう前置きし、時雨は静かに話し始める。
「消息を絶った空中艦の捜索を行った我々は、墜落した残骸の艦内データに残された、被撃墜までの映像記録を確認した。生憎この空中艦のデータには明確な姿は捉えられていなかったが、雲の狭間に映っていた鈍色の巨大な翼から、空中艦を撃墜したのは巨大な飛行型ヴォイドであると予想を立てた」
「…続けてくれ」
ハントの言葉に頷き、時雨は司令室を歩き回りながら再び口を開く。
「この時点で我々は、飛行型ヴォイドの正体がアルゲンダヴィスだとは予想していなかった。だがその事件を皮切りに多数のTFや空中艦が消息不明になる事件は多発、事態を重く受け止めた連合議会は一連の事件についてに調査団派遣を決定した」
そして見つけたんだ、
「これが問題の、アルゲンダヴィスNo.7だ」
巨大な翼を広げたその姿は鋼鉄の大鷲を彷彿とさせ、ホログラムモデルにも関わらずこちらに大きな威圧感を与えてくる。
-これがアルゲンダヴィスですか…タイタン艦隊のデータベースに詳細な情報が無かったので、後程情報の所得を試みたいですね-
-えぇ…俺から話し掛けるの…?-
-何か問題でも?-
いや、問題はない。問題はないけど、女性との関わり皆無なのにいきなり俺からいくのはハードルが高いと言うか何と言うか。
「……から話せるのはこの位だ。何か質問があれば遠慮なく聞いてくれ
「一先ずは問題ない。後程派遣する人員選別を行おう」
「そうか、頼んだ」
ん?話終わったか?途中でセンチネルと話してたせいで内容が…まぁあくまで俺は傭兵だし大丈夫だろ。
◇
「で結局、時雨は何を司令部に話してたんだ?」
《大雑把に言えばアルゲンダヴィス討伐の協力要請ですね。対価として幾つかの資源プラント艦を提示され、タイタン艦隊も承認した様です》
「なるほどね」
となると、艦隊の次の目的地はアストラル大陸って事か。数年ぶり大陸に近づく事になるな。
なおこの世界の大陸にはかつて人類が営んでいた遺跡が多数遺されている。廃墟と化した高層ビルに始まり、朽ち果てた電波塔や電車のレールなどなど…多くは100年程前のモノだが、探せば俺の時代の遺物も存在するはずだ。
それこそ、
《マスター、今後大陸に上陸した後、場合によっては陸上戦闘を強いられる可能性があります。今から多少なれど感覚を思い出しておいた方が良いかと》
「そうだな、この世界の来てから碌に地に足つけて戦ってないからな」
でもそうなると誰かしらに相手をして貰いたいんだが…デルタチームは忙しいし、ガンマチームはちょっと実力差が…
「良ければ、私が貴殿のお相手をしようか?」
「ッッ!?!?」
いきなり声をかけられ、慌てて振り返る。
そこに立っていたのは…
時雨・フィオーナだ。
「時雨…さん」
「はははっ、すまない、驚かせるつもりは無かったんだ。ただ偶々貴殿の姿が目に入って近づいたら、そちらの人工知能との会話が聞こえて思わず声を掛けてしまった」
《マスター、彼女が普通に接近していたのに気付かなかったのですか?》
「いや、少しばかり気配は隠していた、気付かなくても無理はない」
腰に下げたやや反った棒?を撫でながらセンチネルに答える時雨。
先の提案に関してだが…こっちとしてはありがたいけど、時雨の実力が分からない以上、素直にうんとは言えない。
…いや、まぁ、心の奥底で分かってはいる。目の前の少女は俺に匹敵する腕の持ち主だ。
彼女が乗っていた機体…朱月には目立つ武装が太刀一本しか無かった。要は近接戦闘においては俺を上回る可能性すらある。
だが、一応彼女は他勢力の人間だ。実戦以外でセンチネルの能力をあまり知られたくないし…………待て、何故彼女はセンチネルが話している事を自然に受け入れてるんだ?
視線を彼女の顔に向ける。燃え上がる様な紅い瞳は一切の曇りを持たず爛々と輝いていた。
この世界に存在する人工知能はあくまで人間の補助的存在でしかなく、喋るとしても定型文を用いることしか出来ない。つまり人間の様に言葉を操るセンチネルは異常な存在でしかない。だと言うのに…
「?」
目の前で首を傾げる時雨。裏がある様にはとても見えないが…聞いた方が早いか。
「なぁ時雨さん。答える前に一個聞きたい事があるんだが良いか?」
「む?構わないぞ?」
よし、なら単刀直入に…
「時雨さんは、何でセンチネルが喋ってる事に驚かなかったんだ?」
さて、どう答える。潰えた存在である擬似人格を知っていると言う事は、彼女の側には俺の時代の兵器が存在する可能性が高い。センチネルに匹敵する兵器がだ。
もし敵対する可能性があるなら、今この場でそう言った判断をする必要が出てくる。
しかし…彼女が次に放った言葉で俺の思考回路は停止した。
「?機体が話すのは当然の事では?」
「は?」
◇
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