第7話 次の目的地
「遠征派遣団が発見、調査した太古の資源採掘プラットフォーム。我が艦隊の次の補給地になる可能性がある場についてだ」
司令長官の言葉で部屋の空気が張り詰め、あまりこういった場に慣れていない俺は思わず身を竦めてしまう。
「知っての通り、我が艦隊は〈ノヴァリアクター〉の恩恵でエネルギー不足にこそ陥らないが、損傷した艦の修復やその他資源に関してはそうはいかない。幾ら海底から回収したり、元素変換を行うにしても限界はある」
司令官が話すように、このタイタン艦隊の資源事情はかなり深刻だ。
食料や薬品等に関しては艦隊が擁するプラント艦が全て賄えるが、金属資源や希少元素等は常に不足していて、特にTFや艦船の装甲を構成する素材や実体弾等は損耗が激しく、ぶっちゃけかなり工夫してやりくりしていると言った現状がある。
また海底を掘削して資源を獲得すれば良いのでは無いかと思うかもしれないが、まず見つけるのが大変。その上、仮に見つけたとしても量が少なすぎれば意味無いし、何よりヴォイドの襲撃がいつあるか分からない世界だ。
回避航行を行いながら調査、採掘…何て真似は誰でも避けたいだろう。
だからこそ、タイタン艦隊は遠征派遣団を編成し有望な資源地を調査させ、会議の結果補給地として確定した後、補給を行うのだ。
「…今回遠征派遣団が調査した結果、彼のプラットフォームの下には大規模複合鉱脈が存在する事が判明した。周辺にヴォイド共のファクトリーも存在せず、補給地としては最適だろう」
ホログラムディスプレイを指し示しながら言い、部屋に集まった面々の顔を見回して続ける。
「大まかな概要は貴官らの手元のデバイスに配信させてもらったが、一応口頭でも説明する。クレア、頼んだ」
司令長官がそう言うと、今まで彼の背後に立っていた金髪の女性が前へ出て来てお辞儀をした。タイタン艦隊行動管理部、〈クレア・アーロン〉だ。
また同時に部屋の中央にタイタン艦隊が投影され、彼女の身振りに合わせて拡大、縮小をする。
「ではここからは私が説明させて頂きます。先ず目標となるプラットフォームは我が艦隊の現在地から方位1-3-3、距離560kmの海上に位置していて、プラットフォーム本体は縦1800m、横2400m、高さ500mを超えており、中には相当量の資源が備蓄されてると予想しています」
ホログラムに映し出されるタイタン艦隊がみるみる遠ざかり、点線が伸びていった先にプラットフォームの映像が投影された。
それを見ながら、俺は意識内でセンチネルと言葉を交わす。この方法なら今のような場でもコミュニケーションを取る事が可能だ。
-かなりデカい建造物だな、良く狙われずに残ってたもんだ-
-私が独自に分析したヴォイドの行動傾向と乖離した建物ですね。降り立ったら一度スキャンしてみましょう-
-あぁ。それに、何となく匂う-
遠征派遣団が調査した以上、プラットフォームがヴォイドの巣窟と化している…なんて事はあり得ないだろう。つまり金属を喰って成長するヴォイドにとって、あれだけの施設はご馳走に等しい。
だと言うのに、何故残っているのか。
「また、このプラットフォームの地下には簡易調査の結果クロナやシデル等、希少金属類を豊富に含んだ複合鉱脈が存在している事が確定しています。もしこれらを採掘出来れば、今後数年はこれら希少金属が理由の補給は必要ないでしょう」
彼女の放った言葉に、部屋はやや騒然となる。まぁ当然だな。
そして部屋が静かになるのを待ち、彼女は再び口を開く。
「既に採掘計画案は3本完成しています。後は皆さんの承認を頂くだけです」
言って、部屋中を見回すアーロン。
……反対の言葉は、無い。
「…では、後程作戦概要を詰めましょう。以上で説明を終わります」
◇
「…なんか、お前の前で皆頭抱えてない?」
会議が終わり、手持ち無沙汰になった俺は格納庫へと足を運んでいた。だがそこでセンチネルの前で頭を抱え首を捻っている整備員達の姿が目に入り、俺は何かあったのかと勘繰ってしまう。
《彼らが整備のために用意したケーブルなどが接続出来ず、困っているのでしょう。私は本来整備を必要としませんし》
確かに前世ではそうだったな…と思いながら俺は彼らに声を掛ける。
「おい大丈夫か?」
すると俺が声を掛けた整備員はギンっとこちらを振り向き、肩を掴んでこちらを容赦なく揺らしてきた。
「ちょちょちょ…」
「大丈夫じゃねぇよこの馬鹿野郎!とんでもない代物拾ってきやがって。装甲表面に常に力場が展開されてやがるせいで触れねぇじゃねぇか。オマケに内部スキャンも通らねぇから整備の方針も立てられやしねぇ。なんとかしやがれ」
お、おぅ…結構困ってたのか、かなり力が籠った感じで言われて面食らってしまう。
てか、何で格納庫内に居るのに〈ウィガール電磁装甲〉を展開してんだよ。
-マスター以外に触れられたくないからですが-
(…何とも答え難い返ししやがって)
兎も角、言い訳だけはしないと首が折れそうだ。
「あー、すまんがその機体の電磁装甲は古くなって融通が効かなくてな。自動修復機能はあるからしばらくは気にしないでくれて大丈夫だ———!?」
いだだだ!何で余計揺らせれてんだッ!?
「気にしないでくれで済むかよ、俺達整備員にもプライドはある。絶対整備してみせるからなッ!」
鼻息荒く言い放った整備員は腕捲りをし、すぐにセンチネルの方へ戻っていってしまう。まぁ整備と修復に関しては契約で彼らに一任してあるから、壊されでもしない限り俺から口出す事じゃないが…
「あー、その、無理だけはするなよ?」
「当たり前だ。だが俺達は絶対諦めねぇからな」
-私は絶対嫌ですけどね-
……何でこんな事で頭を抱えにゃならんのじゃ。
◇
TOF-007BW〈センチネル〉
全高:18.3m
本体重量:16t
全備重量:58t
標準武装
・TG5 頭部6連装ビームバルカン
・HB ビームブレード
・HW 両腕部ビーム砲
・SR-4 ビームライフル
・GH-6 背部大型ビーム投射砲
・GH-α 大出力⬛︎⬛︎⬛︎砲
ハルの愛機にして、現存するOF及びTFの中で最古の機体。特殊推進装置スターウイングやウィガール電磁装甲など、この時代には存在しない機能が備わっており、未出機体含め作中では最強の一角。
また本機が搭載する人工知能ユニットは、あまりそう言った面を見せることは無いがハルに対して並々ならぬ…それこそ執着と言える程のものを擁している。
主な弱点として、武装が標準的なものしか搭載されておらず初見殺しや特殊装備が必要な相手には不利である事。動力炉と直結するウィガール電磁装甲がダウンさせられると、一定期間動力炉の出力が低下すると言ったものがある。
ただし、ハルの卓越した技量と人工知能との阿吽の呼吸によって繰り出される機動は、これらの弱点をもはや無いものとして扱う事ができるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます