幼馴染と俺のラブコメディ

@z90-aaw

第1話 プロローグ

(すっかり春になったな)

 俺は心のなかでつぶやきながら晴れた空を見上げた。思えば年月が流れるのは早いものだ。この間まで中学生だったのに気付けば、もう高校生になっていたのだから。

 俺は、親戚と一緒に3年間お世話になる校舎へ足を運びながら心のなかでは色々なことを考えていた。

(高校生活はどんなことが起きるんだろうな、でもできるなら平穏に過ごせたらいいな)

 そんな事を考えていると叔父が俺に話しかけてきた。

「それにしても、よくやったな巧。色々大変なことがあったろうけど、ここまで来れたんだから、お前を誇りに思うよ。」

「ありがとう叔父さん」

 俺は叔父に返した。

 そんな事を話していると、学校の正門が見えてきた。近くには、新たに入学する生徒や、保護者を誘導する学園の生徒の姿があった。

 同級生や知っている生徒がいるかどうかそれとなく見回してみたが、俺の知っている人は誰もいなかった。

 まぁ無理もないだろう、そもそも俺自身誰かと親密になるということが苦手だし、色々な事情があって人と関わるのがあまり得意ではないのだ。これには色々と事情があるのだが、話が長くなってしまうのでまたの機会に話すとしよう。

 俺と叔父は入学式が行われる体育館へ到着し、所定の場所に着席した。

◇◇◇

 ほどなくして、式典が始まり校長先生や教頭先生、来賓の方などからの挨拶が行われた。

 挨拶などが終了し、しばらく経って司会の方から案内が行われた。

『これを持ちまして、式典を終了とさせていただきます。生徒の皆様および保護者の皆様はそれぞれ分かれて退出願います。』

 事前に行われていた案内では、この後保護者と生徒は別れて行動することになるとのことだ。今日は午前中で行事は終了するそうだが、なかなかに体力が消耗しそうだ。

 教職員の誘導のもとで、俺達生徒と保護者は、それぞれ分かれて退出を開始した。

 生徒はそれぞれの教室に案内され、俺もその教室に案内された。

 教室に行ってみると座席の位置と出席番号が書かれた紙が黒板に貼られており、俺は所定の位置に座った。俺の席は真ん中の列の二番目だった。

 俺も含めた生徒全員が着席して、しばらくするとこのクラスを担当する担任と副担任の先生が入室してきた。

 ほどなくして、先生方の自己紹介が始まった。

「皆さんはじめまして、1年間このクラスの担任を務める武田 勉です。みなさんこの度は入学おめでとうございます。」

「副担任を務めます藤本 奈美です。よろしくお願いします。」

 担任の自己紹介が終わった後、生徒の自己紹介となり、クラスメイトがそれぞれ自己紹介をしていった。

 しばらく紹介が終わった後、俺も自己紹介をした。

「皆さんはじめまして、海藤 巧と申します。1年間という短い間の付き合いとなりますが、よろしくお願いします。」

「そんな短い間でお別れするわけじゃないだろう。あと2年は学校に来るんだからな。」

 武田先生がそう言って、クラス中が笑った。俺は穴があったら入りたいくらい恥ずかしかった。

 そんなハプニングがありつつも紹介が進んでいった。

 しばらく紹介が続いて一人の女子生徒が自己紹介を始めた。

「岡田 夏美といいます。みなさんと楽しく生活できればいいなと思っています。どうぞよろしくお願いします」

 その名前を聞いて俺は心のなかで(おや?)と思った。どこかで聞いたことのある名前だが、それをどこで聞いたのかは思い出せなかった。

 それからしばらくして最後の生徒の紹介が終わり、伝達事項などが伝えられ、今日は解散となった。

 解散を告げられた生徒たちは各々で行動していた。どこの学校を卒業したのか尋ねる生徒、連絡先を交換しようと声を掛ける生徒など様々だったが、俺はこのまま帰宅することにした。

(やれやれ、アクシデントはあったけどなんとか無事に終わったな。あぁ、しかし疲れたな。)

 俺はそんな事を考えながら、教室を後にした。

 だが俺はこの後、思わぬ再開を果たすことになるとは思わなかった。そしてそれが、俺の学生生活を一変させるとは思ってもいなかった。


 

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