ヴェルナヴァ
タニザキ ノクト
第一章:はじまり
アストラの手記
私はアストラ。ギムラモンド先生の教え子の一人である。これは私が作った手記。またの名は、「勉強ノート」だ。
市街…………この世界では、国王から自治を任せられた者が治めている地域を言う。国ではなく、自治地域である。
しかし、最近ではそれら市街が国から独立する場合があるので、それを恐れた国王たちがその制度をやめていく為、廃れつつある。
追記……地域によって名はわざと変えられることもあり、
魔力…………「見えない筋肉」と呼ばれることがある、人間などに備わった不思議な力。人間の力を増幅させることができる。また、限界まで使えば使うほど魔力は鍛えられていく。
魔力の本質は脳にあると考えられている。魔法研究員であり我が師の「ギムラモンド先生」は言う。「それは神に似た力」だと。
魔法…………魔力を特殊な「詩」、「操作術式」で性質などを変えることで生じる効果。またはその術式のことを言う。強力で、複雑な効果であればあるほど、扱いは難しくなっていく。等級などは存在せず、魔力の加減によって、威力は決まるのだ。
魔法陣…………魔力を変化、操作させる術式のことである。また、「グリモワール」とも言われる。本来なら魔法発動時には見えないが、あまりにも魔法が強力な作用を施す場合に「現れる」。現れるというより、
魔術…………ギアル帝街でよく用いられる言葉であり、魔法と同意義である。しかし、最近では、強力で、魔法陣が漏れる魔法をそう呼ぶ場合がある。
我が師「ギムラモンド先生」も、「魔術の定義はしっかりせねば」と言っていた。しかし、あの市街の政治上、そんなことはしないだろう。
魔物…………ギアル帝街では「獣」と呼ばれる。己の魔力を制御できなかった生物が、適応できるよう恐ろしい変異を遂げ、理性を失った化け物のこと。「旧市街事件」によって、大勢の人が変異し、旧市街は、今や魔物の巣窟となっている。我が師「ギムラモンド先生」は一度研究を行っており、「あれは生物ではない」と言っておられた。そして「やはり脳か」とも言っていた。
機械…………あの「旧市街事件」以前から用いられていた物であり、主流だった物。名の通り、機械仕掛けの物体を指す。事件以降は廃れつつあったが、「
魔抑…………魔力は常に体から発せられており、感知魔法どころか、五感にすらすぐひっかかる。だから、体内に魔力をなるべく押し込み、発せられる魔力を抑える技である。しかし、完全に消せるわけではない。
旧市街…………主に「ヴェルナヴァ旧市街」のことを指す。昔はそこしか市街がなかった。「旧市街事件」後に「
旧魔法使い…………旧市街がまだ健在だった時代にいた魔法使い。その頃は魔法使いは少なかった為、魔法使いは残虐非道なものとして恐れられていた。確かに、その時代の魔法使いは恐ろしかった。今では、魔法使いではないものはいないと断言できるほど魔法使いはいる。
旧市街の悪夢…………この言葉に関しては私もどうとも言えない。ある人は「「旧市街事件」のことだ」と言い、またある人は「旧魔法使いが夜に行った、酷く残虐な行為のことだ」と言う。しかし、ギムラモンド先生はその言葉を聞いた瞬間、顔面蒼白となり、「それは旧魔法使い、または親からそのことを聞いた今の魔法使いでさえ恐怖する言葉だ」と言うと、「一度しか言わない。それは異名だ。魔法使い狩りの、一番魔法使いを殺した者の名だ。詳しくはジャン・バルシングの
ギムラモンド先生はその後、大酒を食らった。
言われた通り、ジャンの「旧市街の記憶」を探した所、絶版となっていたので、ギムラモンド先生に借りた。そこにはこう書かれている。
ページは四十四ページ目。
「暗黒の夜。恐怖は万人に等しくやってくる。
ああ、あれほど恐れた者はいない。
ああ、あれは人では無い、魔物でも無い。
悪夢だ。魔法使いが恐れる夢だ。
嗚呼、「逃れられぬモノ」が振るわれる」
――『旧市街の記憶より「恐怖」』ジャン・バルシング
また、百四十四ページ。
「悪夢は魔法使いに捧ぐ
死を、恐怖を、冷たき刃を
慈悲なき刃からは「逃れられぬ」」
――『旧市街の記憶より「走り書き」』ジャン・バルシング
まだある。最後のページだ。
「悪夢は止まらない。
傷すらつかない。
奴につくのは恐怖の悲鳴である。
あゝ誰か。
あの悪夢を止めてくれ」
――『旧市街の記憶より「旧市街の悪夢」』ジャン・バルシング
旧市街の悪夢で殆どの用語ページを吸われてしまった。
まあ、それ程、魔法使いにとっては天敵だったのだろう。
アストラの手記…………私が書いているこの手記。なんとあのヴェルナヴァ魔法学校の正式な辞書に指定される。ただの勉強ノートが辞書になった。喜ばしいことだ。ということだから、一部分しか載せれない。これ以上は、実際に入学して買ってくれ。「ギムラモンド先生」も喜んでおられた。
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