第6話


めでたく小市民達の価値観をぶっ壊された翌日。

一成達は眠れない夜を過ごしたのち、駆動音のしないバスに乗りながら登校していた。

一成は昨日の食堂の光景を思い出す。

昨日の夕食はレプリケーターの使い方が分からない一同を余所にユラと藤原がテキパキと用意した。

フルコースを堪能しながらレプリケーターの設定について話す加茂河原・藤原・美しい波照間。

刺身定食をご飯とワサビ山盛りでパクついているユラ。

SF映画でしか見たこと無いようなペースト状のナニカを規則正しく食べる雲霧。

その横で消化に良さそうなうどんをすする他の面々。

食堂は混迷を極めていた。


「はあ…シンドい…。まだ2日目だよ…」

「常識が破壊されていくな…」


一成は苗生と大宮の2人と登校していた。

バスには佐野達や横浜達も乗っていたが、揃いも揃って眠れていない様子だ。

元気なのはユラと雲霧、加茂河原と藤原、そして美しい波照間の5人くらいだった。

バスに乗ること5分、学校に到着した。


「バスだと近いですね」

「歩くと20分くらいか…。これなら歩いて行けるな」

「良いじゃん今日くらい。昨日のインパクトがまだ残っているし…」


3人は昨日の一件で仲良くなったようだ。

教室に入り、少し話しているとホームルームのチャイムが鳴り、早乙女先生が入って来た。


「皆さんおはようございます。早速ですが今日の予定を話しますね。今日は身体測定を行ないその後に委員長決めを行なう予定です。皆さんは更衣室で支給されている運動着に着替えてください。その後に訓練エリア『アリーナ』に行ってもらう予定です。なにか質問はありますか?」

「地図では『アリーナ』まで目測30分くらい掛かりそうですけど?」


ユラの質問に答えたのは早乙女先生ではなく教室の外から来た人物だった。


「それについてはオレが今回に限り連れて行く事になった。オレは教官についている石尾いしお哲也てつやだ。着替え終わったら玄関に集合しろ」


石尾教官はそれだけ言い早乙女先生にパスした。


「というわけで着替え終わったら玄関に集合してくださいね。わかりましたか?」

「「はい!」」


クラスメイトたちは更衣室で着替えることになった。

学園から支給されている運動着は少し特殊なものだった。

それはまるでユニタードのような形状だった。

ジャージに感じられる野暮ったさは無く、身体のラインを完璧に拾い上げるスーツはまるで第2の皮膚のように感じられる。

腰のホルダーにキーデバイスをしまうとカチッとラチェット音が鳴りロックが完了した。


「随分と薄い生地だな…」

「うおぉ…!女子エッロ…!」

「面白いね〜コレ♪」


勝浦・黒鳥・ユラがそれぞれ感想を言う。

たしかに薄い生地で目のやり場に困る。

苗生と大宮に視線を向けすぎないようにしながら、玄関に向かう。

石尾教官が口を開く。


「集まったな。では行こうか!」

「行くってどうやって…?」


聞こうとした俺の目に飛び込んで来たのは光の本流だった。

光に目をつむると


「着いたぞ」


そこは全く別の場所だった。

視界に飛び込んで来たのは様々な地形を構築した訓練エリアだった。


「ここが訓練エリア『アリーナ』だ。今日はここで身体測定と異能測定を行なうぞ」


石尾教官は1年生を連れて行く。

連れてかれた場所は体育館のような場所ではなく光沢のある床と壁、そして様々な近未来的なデザインの機械が並んだ部屋だった。


「ここで身体測定を行なう。測定結果はお前達の持っているキーデバイスに随時送られるからプライバシーは守られている。安心しなさい」


石尾教官は並んでいるポッドを指して言う。


「先ずはお前達の身体情報を計測する。この装置は身長・体重・筋肉量・体脂肪率・骨密度に加えて神経伝達速度・関節の可動域・微細な細胞の活性度を測定することが出来る。まあ、健康診断と思ってくれ」


その言葉に唖然とする一行。


「さて、誰からやる?見ての通り5台あるが、出席番号か?」


クラスメイトたちが互いに目で牽制していると、加茂河原・藤原・美しい波照間・雲霧・ユラが手慣れた様子でスキャンポッドに入る。

石尾教官がスキャンポッドのスイッチを押すと数十秒ほどで出てくる。

ユラたちのキーデバイスに情報が送られたのか、それぞれが確認している。

それを見て一成達もポッドに順番に入っていく。


「全員終わったな…。では次だ、次は動体追跡と反応速度計測だ」


複数のセンサーが配置された空間で発生する光の球に触れていく計測らしい。

先ほどと同じ順番で行なっていたが、好成績を収めていた4人と違いユラだけは普通の身体能力だった。


「さて、最後はバイオメカニクス解析だ。先ほど行なっていた物とほぼ同じだが、これは指示通りに動くからさっきのとは少し違っている」


トレッドミルのような装置を走ったり、指定された動作を行なうことでAIが骨格の歪み・筋肉の連動・重心の移動などを計測していく。

案外、健康的な生活を送っていたと思っていたんだけどな…。


「よし、では次は異能測定だ。装置が見るのは異能の出力パルス干渉精度コヒーレンス計算回路ディフュージョンの3つだ。それと時々カタコトで聞き取り辛いかもしれないが我慢してくれ」


石尾教官が装置の準備をしながら言う。

カタコト…?


「異能の出力によってはバグるのでな…。それなら初めから処理の軽いレトロな合成音声を使えば良いと言われていてな。では、出席番号で行くか」





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