雑魚スキルの反逆者~クソ雑魚スキルを最大限利用するために努力してきたのに、異世界からやってきたチート能力者がズルいので〇して元の世界に返してやろうと思います~

ヨモギ丸

プロローグ 

幼少期から、異世界に転生するようなファンタジー作品に囲まれて生きてきた。

中学の頃に本格的にハマり、社会人になった今でも、その季のアニメの人気作を2作品くらいは追うようにしている。


(はぁ…今日もこっぴどく叱られた…。)


「なんで、君はこんなこともできないのかな?同期はみんな出世して…ブツブツ」


歩きスマホはよくない、作品の更新を確認することは命と比べればほとんど価値もない。


「うわっ!?」


目が覚めると、そこは陰もない白い空間であった。


「俺は死んだのか…?」

「その通りです。ご愁傷様です。」


突然男の目の前に、女が現れる。


「うわっ!?なんだお前!?」

「あらあら、察しが悪いわね。前世ではあれだけ慣れ親しんだ癖に…。」

「もしかして…女神?」

「おー!ザッツライト!私は女神でーす。あなたの世界担当のね。」

「女神が出てくるってことは、つまり俺は…転生するのか…!?」

「いいね、その思考。最近死んでくる人たちみんなそんな思考で助かるよ。ほんと。」

「そしたら俺は…転生ボーナスで最強スキルを得て…無双、ハーレム!ぐへへ…。」

「時々こういうのが来るから、転生者ガチャなんて言われるのよ…。確かに、あんたの言う通り、スキルをあげるわ。といっても私から渡せるのは一つだけ。」

「じゃ、じゃあ賢者!いや、魔法剣士!…こういう時はテイマーも捨てがたい…。」

「いや、選べないから。」

「は?」

「なに選べる気でいるの?こっちだってね、転生者に渡すスキルを選ぶ権利くらいあるわけ、あんたみたいな将来性も髪も薄い奴に渡せるよさげなスキルなんてないわけ。」

「そ、それって…。」

「クソ雑魚な余ったスキルを貰ってね。あ、一応人里に落とすし、見た目もボーナスで若くしてあげる。」

「は、まだ話は」

「それじゃ、いってらっしゃーい。」


男は光りに包まれて、気が付くと白い空間には女神独りになっていた。


「さーてと、次の転生はーっと…。はぁ、忙しい忙しい…。」


「はっ!?はぁはぁ…。ここは…?」


目が覚めると、ベッドの上にいた。

慌てて窓から外を見ると、レンガ造りの町、中世ヨーロッパをモチーフにしているかのような格好、闊歩する衛兵、馬車、活気づく出店。


「俺、ほんとに転生してきたんだ!」


男は自分の姿を鏡で確認する。


「見た目は、17歳くらいか?声もちょっと若いような…。てか!こんなことしてるばあいじゃない!スキル…ってどうやって確認するんだ…?一般的な作品なら、大体…。」


――ステータスオープン!


目の前にウィンドウが現れる。


「来たー!これこそ異世界って感じ!えーっとどれどれ…。」


ナマエ::ユウキ カトウ


「こんなの良いんだよ!」


そのままスクロールしていくと、「スキル」という欄に辿り着く。


「よし…行くぞ…。」


スキル欄を押すと、こう表示される。

視認温轢ヴィジブル・ヒート・グラヴェル


「名前は格好いいな。」


更に押すと、説明文が現れる。


【目で見ている間だけ、石がちょっとだけ温かくなるよ。】


「は…?」


ユウキは、目をよくこすってからもう一度見てみる。


【目で見ている間だけ、石がちょっとだけ温かくなるよ。】


変わらない、一言一句変わらない。


「いやいや、これで一気に上げまくって火の玉にしたりできるかもだしな。」


できない。


「よく考えたら暖が取れるし、悪いモノじゃないかもしれないし。うんうん。」


この世界には、暖炉が一般的に存在し、持ち運ぶカイロのようなものもある。


「いやぁ…雑魚スキルっぽいけど、結局実は解釈によっては、チートスキルになるんだろ?」


ならない。


「いやぁ、ワクワクするぜ、俺の異世界無双ハーレムライフの始まりだ!!」


始まらない。


この後、ユウキは実験の結果に絶望し、それでも異世界を無双するために世界を少しだけ変えるのだ。

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