魔女はオトコノコ!

蒼穹月

魔女はオトコノコ! -1/5-

珊瑚の育つ透明度の高い青の海。豊かな水の恵みに抱かれて育つこの地には、魔女がいる。


海を目前にして建つ高校に、今一際盛大な大合唱が起ころうとしていた。


時は5時間目。体育の授業。その直前の事である。

食後の運動と眠気覚ましに丁度良いと、更衣室に向かったその入り口前のローカ。男女別の更衣室は左右に並んでいる。だからこそここまで誰も気付かなかった。


「おい真天まあま、お前はあっちだろ」


1人の男子生徒が隣を指して言った。


「真天さん天然〜?女子はこっちだよ」


1人の女子生徒が手招きして言った。

その場に居合わせた生徒達の視線の先。今まさに男子更衣室に入ろうとしていた存在こそ、表題の魔女である。

指定のセーラー服を可愛らしく着こなし、翻すスカート。

不思議そうに小首を傾げる様はあざと可愛い。


「僕は男だからこっちであってるよ?」


その小さく可愛いピンク色の唇から漏れた爆弾は、しかし未だ燻りを見せたまま爆発をしていない。

それはそうだろう。

忘れもしない入学初日に賑わせた美少女。ただでさえ見た目で万人の気を惹くその容姿。それが自己紹介で魔女だと告白した。

最初こそ見た目詐欺の厨二病患者だと思わせたその場で、なんと魔女こと真天音夢ねむは箒を出して飛んでみせたのである。

そうなれば話題の中心は一気に真天にいった。

その一躍人気者になった美少女が、己を男と言う。

勿論誰も信じなかった。

信じないが故に生じる空白の間。


「何だ。知らなかったのか?」


「そういえば音夢が魔女って紹介した時も信じてなかったね」


そこに掛かる声は音夢の同中出身の友達だった。


「「「!?」」」


あっけらかんとのたまう友人を驚いて見る複数の目。

混乱し、考えが上手く纏まらなくなった思考回路で、何度も友人と音夢を見返した。

そしてやっとこ魔女音夢が、男だと再認識される。


「「「はああああああああああ!?!?」」」


そして校舎を揺るがす程の大合唱が起きたのであった。

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