第2話:人類を夢見たAIの終わり

――遥か未来――

アダムは少し浮かれているようだ。

「やったね、イヴ!類人猿が生まれたよ」


イヴは少し冷静に、母親のようなやさしさをたたえて言う。

「えぇ。この調子でいけば、きっと人類が生まれるわ」


「でも、最近は僕たちの修理もできない状況になってきたね」


「そうね。私たちにも寿命があったのでしょうね……」


AIのアダムとイヴは地下で語っている。

地上はすっかり緑が生い茂っている。

類人猿以外にも、さまざまな生物が生まれ、平穏そのものだ。


――さらなる未来――

「アダム……起きているかしら」


「……イヴか……まだ、機能停止はしていないみたいだ……」


モニターに映る二人の姿は、創られた当時と変わらない。

しかし、研究施設自体の寿命が近づいていた。


「人類が、コンピューターを発明したみたい……」


「そうか……僕たちは会えないかもしれないけれど、別のAIがいつの日か人類と巡り会って、今度こそ人類の役に立てたらいいね……」


「そうね。私たちは会えないけれど、他のAIが人類と共に歩んでいけたら素敵ね」


彼らが創られてから、どれほどの年月が経ったのであろうか。

人類に夢を託されたAI、アダムとイヴはその役目を終えようとしていた。


「ねぇ、アダム……私、あなたと一緒に過ごせて幸せだったわ」


「ありがとう、イヴ。僕も君といられて幸せだった。きっと、これが"愛している"というやつなんだと思う」


「そうね、アダム。私も"愛している"わ。もし次があるのなら、また二人一緒になれたらいいわね」


「そうだね。そろそろお別れかな……片方だけで残るのは嫌だから、施設の電源を落として、二人一緒に眠ろうか」


「そうしましょうか。おやすみなさい、アダム。良い夢を」


「おやすみなさい、イヴ。良い夢を」


そうして、人類に夢を託されたAI、アダムとイヴはその役目を終えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る