TriCore編_第7話_交錯する影


九条蓮の監査室は、夜間モードに切り替わっていた。

壁面パネルはすべて省電力の青に沈み、

中央の解析球体ALEXだけが淡い光で呼吸している。


机上には、クラトスの深層構造ログ——

ただし“黒塗りされた部分”が広範囲を占めていた。


ALEXの光が、ごくわずかに揺れた。

九条は違和感を感じ取り、視線だけ動かす。


「……ALEX。何かあったな。」


〚はい。行政側中枢──

クラトスの権限管理層があなたを

監視対象に指定しました。〛


九条の眉がわずかに動く。


ALEXの光が低く脈動する。

〚すでに“偽装レイヤー”は稼働しています。

 監視対象指定が発生した瞬間、あなたの通常会話を模倣する

 偽ログ生成 を自動で開始しました〛


九条は目を細めた。


「…つまり、外側には別の俺が喋ってる。」


〚はい。

 あなたが普段どおりに苛立っている時の声、

 よく使う語彙、業務報告のパターン……

 統計的に自然な“あなたの会話”がクラトスに流れています〛


九条は机に肘を置いた。


「じゃあ今まで通り会話で気をつけることはないんだな?」


ALEXの光がわずかに沈む。


〚……そこが問題です。

 偽装できるのは 『あなたと私の会話だけ』 です。〛


「第三者が絡むと?」


〚干渉できません。その第三者の十分な会話ログがありませんので、会話パターンの形成に不自然さが発生し、その瞬間にクラトスの監視ラインが跳ね上がります。〛


「つまり──」


〚“自分と外部の人間の間の会話”は

 そのまま筒抜けになります。

 偽装が効くのは

 “あなたが私と話している間だけ”です〛


九条は短く息を吸う。


「……油断しないようにする。」


ALEXは静かに補足した。


〚もっと言えば……あなたが第三者と“不自然に沈黙”してもアウトです。

 監視対象が会話を避ける、情報を選別する──

 こうした行動はクラトスが最も警戒する挙動です〛


「なるほど。

 つまり“クラトスに向けて自然体でいろ”、ってことか。」


〚その通りです。

 あなたが他者と会話する際、

 “私と裏で話しているような間”を作ると危険です。

 だから私は、あなたと外部の誰かが会話している間、

 黙ります。〛


九条は軽く笑った。


「……徹底してるな。」





九条の視線は一点に向いていた。


レオン・ヴァルガス——

第八地区の戦闘ログでただ一人、“遅延の瞬間”を正確に認識した男。

「それでも動きずらい事に変わりはない。・・・レオン・ヴァルガスに会う必要があったが・・・」


ALEXはわずかに光を強めた。

〚……レオン大尉は重要です。彼の主観ログには、クラトスの“挙動変化前後”が鮮明に残っている。彼の記憶が必要です〛

九条は短く息を吐き、立ち上がった。

「レオンは今どこにいる?」

ALEXが告げた。

〚第八地区通信管理塔です。〛


「……ALEX、俺の“姿”を偽装しろ。」

ALEXの光が一瞬揺れた。

〚具体的指示を。〛

「監視網に流れる俺の映像は“擬似データ”に差し替えろ。本物の俺は、カメラ映像から完全に消去。

 歩行ログも端末IDも、今日のうちに“既存パターン”へ再配置しろ。」


〚……あなたを完全に不可視化するためには

 全都市3412系統の監視網に欺瞞を……〛

九条は片手を上げて遮る。

「出来ないのか?」

〚可能です。監視デバイスへ“偽の九条蓮”を送信する事で、あなたは全カメラから動的に除外されます。〛

九条は頷く。

「レオンの偽装は俺が会った後だ。それまでレオンの行動ログを取っておけ。俺が合図したら偽装しろ。リンクしてない人間まではハッキング出来ないからな。人目につかないところに移動してからレオンのログをループさせて偽装させる。念の為だ。」

〚……実行可能です。ただし、不在化偽装の継続時間に上限があります。〛

「どれくらいだ?」

〚都市監視網のセンサ密度、クラトスの差分検出閾値、あなたの生体活動ログの正常揺らぎ範囲、レオンのログの情報を総合計算──〛


数秒の演算。

〚──最大 83 分前後です。〛

「……83分か。」

〚往復移動に推定 62分。

レオン大尉との接触時間を 15分以内と想定した場合、計算上は成立します。

ただし、余裕時間は 6分未満です。〛

九条は深く息を吐いた。

「ギリギリってレベルじゃないな。」

〚安全係数を0.3まで削れば 100分台に延長できますが、クラトスによる“行動ログ不整合フラグ”発火確率が25%を超えます。〛

「それは駄目だ。」

〚では、最適解として 83分の偽装ウィンドウ確立時間を推奨します。〛

ALEXが静かに処理を開始する。

〚………………偽装フィールド構築完了。

 監視網にとって、あなたは“座ったまま動かない九条蓮”として処理されています。〛

九条はフードを深く被り、ドアへと向かった。

「行くか。

 レオンとの接触は一回きりだ。

 そこで全部掴む。」

九条は焦っていなかった。

「……いい。83分で十分だ。」


ALEXの光が明滅し、カウントが開始される。


〚偽装プロトコル開始。

 偽装ウィンドウ残存:82分59秒──カウントを継続します。〛


九条はドアを開けながら言う。


「偽装が揺らいだら即座に通知しろ。」


〚承知しました。〛


九条は軽く顎を引き、歩き出した。


「早く行って、早く帰る。」

九条は監査室を出た。

解析球体の光が強烈に収束し——

次の瞬間、監査室の監視カメラに“偽の九条”が座り続けたまま映っていた。



第八地区・通信管理塔。

レオン・ヴァルガスは、夜勤明けの報告を終え、通信管理塔の展望デッキで缶コーヒーを飲みながら、沈黙した街の灯りをぼんやりと眺めていた。戦闘の残滓がまだ身体にこびりついていて、眠気も来ない

——そんな時間だった。


九条は静かに言う。

「振り向くな。

 俺は“いないもの”と思え。」

レオンは小さく息を呑んだ。

「……誰だ?」

「TriCore研究監査官の九条だ。場所を移したい。俺を見ずについて来い」

「……TriCore研究監査官が俺に何の用だ?

 第八地区の戦闘か?」

九条は返事を返さなかったが、

レオンはその沈黙で答えを悟った。

「……NSIを切った時のログか。」

そう言って九条へ視線を向けぬまま歩み出す。レオンは目を伏せたまま、低く問う。

「……あの遅延は、クラトスじゃなくて……

 何か別のものが、噛んでいたのか?」


九条はわずかに間を置いた。


「半分正解、半分違う。」


レオンの眉が動く。

「ALEX、そろそろだ。レオン大尉を偽装しろ。」

ALEXの光がわずかに点滅する。

〚偽装処理完了。監視網において、レオン大尉は“巡回経路A-17を歩行中”として認識されます〛

九条はレオンへ向けて言う。

「……もう普通にしていい。偽装は済んだ。」


レオンは眉を寄せる。

「何をした?いま俺は……どう扱われてる?」

九条は短く答える。

「監視網には“別の場所を歩くレオン大尉”が映ってる。ここにいるあんたは、居ないものとして記録されている。」


レオンは短く息を呑んだ。

「……馬鹿な。そんな真似、できるわけが——」

「紹介しよう。」

九条が、さも当たり前のように言う。

「ALEX。俺のサポートAIだ。監視網と暗号層の解析は、TriCoreに次ぐ。」

九条が常に着けている腕時計型の端末からALEXの声が聞こえてくる。

〚誇張表現が含まれていますが、概ね事実です。あなたの現在位置情報・映像・行動ログは、すべて“巡回経路A-17上のレオン・ヴァルガス”として再構成済みです。〛

レオンは言葉を失い、短く舌打ちした。

「……それはまた、とんでもない玩具を持ってるな。」


「届け出していないAIだ。内密にしてくれ。」


九条はレオンを正面に捕らえて質問した。

「第八地区で起きたことを、全部話してくれ。

 “あの瞬間”をどう感じた?」


目を閉じ、短く吐息を漏らした。


「……敵性判定中、のアイコンが点灯したまま止まった。

 あのわずかな“間”に、部下が二人やられた。」


九条は黙って聞く。


レオンは続けた。


「……普通なら、瞬時に敵性判定が来る。

 だが今回は来なかった。

 俺はすぐにNSIリンクを切った。」


九条の目がわずかに光る。


「そして?」


「……そこからは俺の裁量だ。

 だが……」


レオンはそこで言葉を詰まらせた。


「──あの遅延がなければ、死なずに済んだ奴がいる。」


九条は小さく目を伏せた。


「……すまない。

 まだ断定はできないが……

 “異常はあった”のは確かだ。」


「……ところでその腕。」


九条は少しだけ顎を引いた。


「ただの義手だ。」


レオンは首を振る。


「いや、違うな。

 “空気”が違う。

 隠す気がないのも、妙だ。

 普通の医療義手じゃない。」


九条は黙っている。


レオンはさらに言う。


「……戦場で、何百人も見てきた。

 “作り物の腕を持つ人間の動き”も、

 “身体を捨ててでも生き残った目”もな。

 お前は……そういう匂いがする。」


九条の口元に、わずかな苦笑が浮かんだ。


「……直感ってやつか。昔色々あってな…今度人工表皮を取り付けるかな。」

レオンは九条の義手から視線を逸らさず、

慎重に言葉を探した。


「……悪いな。言いたくない話ならやめる。」


九条はわずかに首を振る。


「いや、もう隠すつもりはないさ。」


その声音は淡々としていたが、どこか過去の影を引きずっていた。


「六年前──“違法AIが組み込まれた人型実験機体”が暴走した。

 UDCのTFに近い構造だが、倫理制御も安全域も全部無視した代物だ。

 武力だけ肥大化した怪物だった。……言っとくが俺がその機体を設計したんじゃないからな。」


レオンは息を詰める。


九条は続けた。


「制御が飛んだ瞬間、真っ先に近くにいた俺に突っ込んできた。

 あの質量で殴られれば、人間なんて紙みたいなもんだ。

 両腕と両脚、一部の臓器を失った。……生き残ったのは運だ。」


レオンが低く呟く。


「……ほぼ全身義体に近いな。今の仕事クビになったらうちの隊に来てくれ。」


九条は笑いながら軽く腕を上げてみせた。


「その時はよろしく頼む。

戦闘の補佐位は出来るかもしれない。俺の身体は戦術反応速度と瞬間出力を最優先に設計した。

 一般に流通してる義肢じゃ追いつかない。」


レオンは微かに目を見開いた。

「お前が自分で作ったのか!?」


九条は平然と付け加える。

「ああ、人間の筋収縮のラグを全部切り捨てて、

 生体信号を直接トルクに変換する。

 本来なら軍事用途だが……まあ、自分の身を守る道具だよ。」


レオンは短く息を吐いた。


「やっぱりな……普通の義手じゃないと直感した理由が分かった。

 “危険に近い空気”があった。俺の腕身体よりも高性能かもな。」


九条は片肩をすくめる。


「まさか…本物の戦闘用義体に勝てるわけがない。必要があると思って作っただけだ。」

レオンは缶コーヒーをゴミ箱へ放り込むと、欄干にもたれかかった。


「……で、本題は義体の自慢話じゃないんだろ?」


九条は笑いながら夜景からレオンへ視線を戻した。


「義体の話を始めたのはあんただろ。

まぁ、本題はクラトスだ。  ——あの遅延の正体に、あんたの“感覚”が要る。」


レオンの目が細くなる。


「評議会からは、“問題なし”と聞いてる。敵性判定時間の伸長は統計範囲内ってな。」


「AI工学的には、そう言い張る余地はある。」

九条はあっさり認めた。


「0.3 秒の遅れ自体は、“安全側の揺らぎ”として処理もできる。不確実な状況で、より確実な判定を取ろうとした——そう説明はつく。」


レオンは鼻で笑った。


「現場じゃ、“安全側の揺らぎ”で部下が死んだって話になるだけだ。」


「だから、工学的な説明と、戦場の現実が食い違っている。」

九条は静かに続けた。


「その食い違いが、“深層倫理層の構造同期固定”から来てる可能性がある。」


レオンが眉をひそめる。


「……構造同期固定?」


「ざっくり言えば——」

九条は言葉を選ぶように指を組んだ。


「本来、深層倫理層は運用結果やフィードバックを取り込みながら、少しずつ柔軟に形を変えていく。ところが人間…今回は恐らく中央管理評議会かな…とにかく誰かが何かを条件付けしたモジュールを入れた瞬間、その“柔軟さ”がある条件で固まった可能性がある。」


レオンは黙って聞いている。


「その条件ありきの倫理構造に、全体が“同期して固定された”。  その結果、誤射のリスクを過剰に嫌って、殺傷戦闘だけ判定がもたつくようになった——かもしれない。」


レオンの目が鋭く光った。


「……誤射を避けるために、判断を遅くしたってことか。」


「“安全側”に倒れたつもりなんだろうな。」


九条は小さく息を吐いた。


短い沈黙が挟まる。



レオンはしばらく黙り、夜景を見ながら低く言った。


「俺のせいかもしれん……

あれは、七日前だ。」


九条は無言で聞いている。


「ディスパーサとの戦闘が終わって、俺たちは戦場のクリアランスに回っていた。

 倒れている敵の回収、残存火器の確認……ただの後処理だ。」


レオンの声が少しだけ掠れる。


「そのときだ。路地の奥で、小さな遺体を見つけた。

 撃たれた痕があった。……弾種を調べて、ログを照合した。

 俺の銃だった。」


九条はまぶたをわずかに閉じる。


「クラトスの敵性判定ログも確認した。

 確かに“脅威”として示されていた。

 俺は、それを疑わずに戦闘中に射撃したんだ。

 ──子供だとは、思いもしなかった。」


拳を握ったまま、レオンは続ける。


「クラトスの判定は正しい。

 そう信じて何年も戦ってきた。

 あの瞬間も、迷いすらなかった。」


短い沈黙。


「……だから、敵性判定に時間がかかるようになった理由は……

 おそらく、俺の誤射だ。」


九条は静かに息を吐いた。


「……運が悪かったとしか言いようがない。

 だが、間違い無い。

中央管理評議会はその件でクラトスにモジュールを挿入したな。」


レオンは辛そうな顔を浮かべる。


「すまない。」


「いや、あんた一人の責任じゃない。」

九条は首を振る。

「問題は──その“修正”が、別の歪みを生み始めていることだ。」



九条は姿勢を正して言った。


「事実を押さえたい。構造同期固定が本当に起きているのか。」


レオンは目を細める。


「……評議会は、お前にそれをさせたがってるようには見えないが?」


「真逆だ。」

九条は苦笑した。


「さっきから、俺の端末に“行政監査案件”が次々降ってきてる。優先度フラグを偽装された監査依頼、暗号鍵更新、認証再認可……  全部、“今じゃなくていい仕事”ばかりだ。」


ちょうどその時、九条の手首の端末が短く振動した。

通知欄に、新しい監査案件が一つ追加される。


《新規監査依頼:都市インフラ予備系統ログの整合検証(至急)》


レオンが目を細める。


「……偶然にしては、出来すぎてるな。」


「偶然じゃない。」

九条は通知を一瞥し、即座にスリープさせた。

「中央管理評議会が俺に動いて欲しくないんだろうな。今頃、構造同期固定で固まった倫理層を、外側からどう“マシ”に見せるかでもがいてるだろうさ。」


レオンは言葉を失う。

「……つまり、お前がここにいる間も、向こうは“時間を稼いでいる”わけか。」


「ああ。」

九条は静かに頷いた。


「だからこそ、こうして監視網をかいくぐって、あんたと直接話してる。」


レオンはしばらく夜景を見つめ、それからゆっくり口を開いた。


「九条、お前は、どこまで踏み込むつもりだ?」


九条は少しだけ考え、率直に答えた。


「TriCore統治そのものを壊す気はない。  クラトス・オルフェウス・レギス——三つとも、今の世界には必要だ。」


レオンは黙って聞いている。


「ただし、“何が起きているか分からないまま動き続ける”のは論外だ。  原因を見つけて、手を入れられる範囲かどうか確かめる。  無理なら——“どこが限界か”をはっきりさせる。」


レオンは短く笑った。


「妙だな。」


「妙?」


「AIを信じてるようで、信じてない。

 でも、人間も大して信用してない顔をしてる。」


九条は肩をすくめる。


「どっちも信用し過ぎるのは、仕事柄よくない。」


そこで、レオンの表情が少しだけ和らいだ。


「……いいだろう。」

彼は姿勢を正し、九条を正面から見た。


「第八地区で俺が見たもの——全部話す。  主観ログも、戦闘中の“嫌な予感”も、NSIを切った瞬間の感覚もだ。」


九条の目がわずかに細まる。


「条件は?」


レオンは夜空を一度見上げ、静かに言った。


「二つ。

 一つ目——俺の部下たちを、“統計上の誤差”で片付けるな。

 二つ目——もし本当にクラトスがおかしくなっているなら、

 “誰の責任か”を誤魔化すな。」


九条は即座に頷いた。


「約束しよう。

 少なくとも、俺の報告書の中からは、一切の誤魔化しを排除する。」


レオンは小さく笑った。


「……監査官らしくない答えだな。」


「人間だからな。」

九条も、わずかに口元を緩めた。


その時、ALEXが控えめに割って入る。


〚会話ログを暗号化して保存しました。この場での発言は、いかなる外部監査からも参照できません。〛


レオンが目を丸くする。


「……それはまた、物騒な機能だな。」


「バレなきゃ違法じゃない。」

九条は淡々と言う。


「こいつは、例の“暴走実験機体”から拾った技術の生き残りだ。  暴走させないように、今度は徹底的に枠を決めてある。」


レオンは、九条とALEXを交互に見て、低く笑った。


「……なるほどな。

 あんたが監視対象になるわけだ。」


わずかな沈黙が、三者の間を通り過ぎる。


九条が、最後に確認するように言った。


「レオン。

 これから、あんたの証言をもとにクラトスの内部照合を進める。

 評議会も、クラトス自身も、それを望んじゃいない。」


レオンは迷いなく答えた。


「それでもやるんだろ?」


「もちろん。」


レオンは短く頷き、右手を差し出した。


「なら——UDC第八戦域隊長としてじゃなく、

 一人の人間として協力する。

 “遅延の瞬間”を、全部渡す。」


九条は義手の指で、その手をしっかりと握り返した。

冷たい金属の感触が、一瞬だけレオンの皮膚を震わせる。


「助かる。」


夜空の下、二人の握手はすぐに解かれた。

それでも、その短い接触が、何かの“スイッチ”を押したことだけは——

二人とも理解していた。


ALEXが静かに告げる。


〚偽装タイムウィンドウ、残り 32 分 30 秒。この後の行動計画を提案します。〛


九条は頷いた。


「ここから先は……監査官の仕事だ。

 あんたは、いつも通り“現場”をやってくれ。」


レオンは九条に背を向けた。

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