折り鶴と分からん恋

ぴ。ぴのら

第1話 ラブレターは折り紙を呼ぶ。

なんなのだろうと一人で考えた。


幼保園から折り紙は得意だった。作ったものも複雑でなければ見ただけで作れたし、新しく折り紙を開発して友達にあげたこともあった。そもそも作るという行為が好きだったのかもしれない。


………けれど、中学校に入って折り紙はやめることになった。


別に変な思い出ができたとかではないのだ。ただ、中学校の勉強が難しかっただけ。小学校ではノー勉が当たり前だったのだが、中学校ではそうはいかないと知ったのが初めての学力テスト。得意科目でも80点。苦手な社会は60点。これはやばいと思い勉強した。それからはいい点数を取り続けられたが、勉強をやめると点数はガタ落ち。折り紙も必然的に学習机から消えた。



のにだ。



目の前には緑色の折り紙があった。



……学校での昼休みのことだ。


『ねーシバノ〜、ファイルになんか入ってたぁ〜』

『おーおー、急遽確認してっから給食食器の片付け行ってこい』


ノロマな友達……ミヌレがスッタカタッタッター!と風の速さで食器を持って消えた。

………本気出すとはえーんだな。いつもそうしろよ。


『シバノー、これ〜」

『おー、お友達の柴野サンただいまノートとってるからまた今度』

『え〜!?10分休みにも書いてたじゃーん』

『ノートは授業で聴いたことを書くノートと、予習した時のノートを見て清書するんだよ。今は清書用』

『なになに、『柴野さんに渡しておいてください』だってぇ〜』


テッテレレン!とこちらを完全無視してコイツは叫ぶ。


『なんか白地に…赤いハートマークの手紙!?ベタですねぇ〜』

『………あ”ー、そいつに言っとけ。嘘コクなんて変な噂しか起きねぇよって……』

『中身は〜』

『話を聞けよ!!』

『………………』


急にミヌレは黙る。言い過ぎてしまったかと一瞬思ったが、コイツに限ってそれはないだろう。案の定、震えた手でこちらに中身を見せた。


『う、嘘でしょ〜』


手にあったのは…


『?折り紙…』

『ないわ〜!!!!』

『は?』


ミヌレは叫び出す。もうほんとなんなんだよこいつ。情緒不安定すぎるだろ。


『こんだけ期待させておきながら折り紙一枚ぃ〜?シバノー、安心してね!ミヌレがチャチャっととっちめるわ〜……』

『…………誰からだ、それ』


何にか言ってるミヌレを放っておいて、名前を確認する。

…………あ”ー。


『あんがとミヌレ、助かった』

『………え?まだ誰も殺してないよ?』

『殺さねーよ』


そのままファインティングポーズで固まるミヌレに礼を言って手紙を受け取った。


 たまに定期的に話す男友達が私にはいる。幼保園?よりもっと小さい頃から母親の仲がそれなりに良かったので、よく一緒に遊んだ……のは小学生の頃までか。勉強関係で最近は顔を合わせたら話すかー、ぐらい。

……最近、折り紙を買ったとか言っていたので、お裾分け気分でくれてもなんらおかしくない。


『これはラブレターでもなんでもねぇ。ただの…』

『あれ?なんかもう一枚入ってる〜』

『いい加減しばくぞ』

『わー、シバノーにしばかれる〜』


そう軽口を叩きながらもミヌレに見せられた手紙を確認した…瞬間に頭が宇宙へゴートゥーザヘブンした。


『…………………………』


ビリ、と手紙が断末魔をあげた。


『よし!』


犯人のミヌレは満面の笑みで__


『コイツ殺そう!!』


どこからか取り出したバッドを振った。


……………


一方で、まだ宇宙にいた私は静かに手紙の内容を思い出す。


『柴野さんへ。柴野さんが、僕は大好きです。かっこいいところも、器用なところも、全部全部好きです。僕と付き合ってください。ライライより』


消しゴムのあと。どことなく不器用な文章。だがそれは全部演技だと確信した。折り紙をあげようと考えたので、「ついでに意地悪でもしてやろー♡」なんてノリで多分こうなっている。けれどそれだけで行けるほど宇宙旅行は安くない。


『(返事はこの折り紙でネ♡)』


……………



短い宇宙の旅を終えて、柴野さんは戻ってきました!さて、感想をどうぞ!!!





「最悪だ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る