百合ハーレムを築くまで〜モブキャラに転生したゲーマーの私〜【カクヨムコン11短編小説部門】

長谷川ひぐま

第1話 氷の女王と私

「は? うそでしょ?」


気が付くと私は、大人気恋愛シミュレーションゲーム『リッケルト魔法学園』の世界に転生していた。

ただし転生したのは主人公ではなく、モブキャラの『アンナ』という女の子で、クラスのいじめられっこ的存在だ。


現世でもクラスのいじめられっこだった私にはお似合いのキャラだな、と自虐的に思った。

でも、せめてこの世界ではいじめられないようにしたい。


「ステータス」


そう言うと、ステータス画面が開く。


「見事にどのパラメーターも低いわね……」


私は軽く絶望した。

ここから人気者になったり、主人公と良い関係を築くのはまず無理だろうなと思った。


「はぁ……どうやっていじめられないように生きてけばいいのよ」


思わずため息が出る。

――と、その時だった。


「そこのあなた」


抑揚を欠いた、氷にも似た印象の声が私の耳に届く。


「廊下の真ん中に立たれては邪魔よ。今すぐどきなさい」


(で、出たー!!)


私は思わず心の中で叫んでしまった。

そこにいたのは、透き通った白銀の髪に、氷の彫像を思わせるような美貌をたずさえた生徒――この学園の生徒会長にして氷の女王とも言われる、エミリー・アルホフだったのだ。


攻略難易度は最高難度のSS級!

だが、私はこのこの子の攻略法を知っている。エミリーはその氷のような性格から周囲と壁を作り安く、優しくされるのに慣れてないのだ。

いじめられないためにも、氷の女王と恐れられる生徒会長と仲良くしておくのは悪くないことだろう。

そう思い、私はエミリーと友情を築くことにした。


「すいませんでした、エミリー先輩」


そう言いつつ私はエミリーの前からどけた。

そして――


「それ、重そうですね。半分持ちますよ」


私は書類の束を抱えているエミリーに向けて言った。


「……あなたには関係ないことだわ。手伝ってもらわなくてけっこうよ」


とりつく島もないとはこのことだ。ツンとした態度で断られてしまった。さすが氷の女王と言ったところか。

だが、ここで引き下がってはいけないのが攻略のポイントだ。


「まぁまぁ、ここで会ったのも何かの縁ですし。遠慮しないでください」


攻略のポイント。それは、エミリーのツンとした態度にもめげず、グイグイ攻めることだ。


「な、なんなのあなた。しつこいわね」


たじろぐエミリー。

しかし――


「で、でも……ありがとう。じゃあ、半分だけお願いしようかしら」


若干赤面しつつ、エミリーは書類の束を半分渡してくれた。

どこかで好感度が上がった音がした。私はエミリーとの友情を築く第一歩を踏み出したのだった。

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