人数分
その離れは、いつも少年たちのたまり場だった。
母屋から少し離れた古い建物で、ゲーム機とテレビ、それから使い古したソファが置いてある。
バイクに乗るようになってからは、ツーリングの帰りに自然とそこへ集まるようになった。
その日も、5人だった。
健太、翔、直樹、亮介、そしてこの家の主である浩平。
5人はヘルメットを床に転がし、ゲームをしたり、テレビを眺めたり、取り留めもない話をしながらだらだらと時間を潰していた。
外はもう暗くなっていた。
コンコン。
ノックの音とともに、扉が開いた。
浩平の母親だった。
「あんたら、夜食かなんかいるか?」
5人は顔を見合わせてから、口々に言った。
「いる!」
「食べたいです!」
「腹減ってます!」
母親は苦笑いしながら、「ほな待っとき」と言って出ていった。
それからまた、いつも通りの時間が流れた。
テレビの音。コントローラーを叩く音。くだらない笑い声。
しばらくして、再び扉が開く。
今度は、どんぶりを載せたお盆を持った母親が入ってきた。
「はい、親子丼な」
「ありがとうございまーす」
5人が一斉に礼を言った、その瞬間だった。
浩平は、違和感に気づいた。
どんぶりが、6つあった。
(あれ?)
数を間違えたのだろうと思い、浩平は軽く言った。
「おかん、これ1個多いで」
すると母親は、少し不思議そうな顔をして言った。
「なんでやの。ちゃんと人数分作ってるて」
「いや、俺ら5人やし」
浩平はそう言いながら、1人ずつ指を差して数え始めた。
「健太で1人、翔で2人、直樹で3人、亮介で4人、俺で5人。ほら、5人やから5個でええやん」
そう言って母親を見る。
母親は、きょとんとした顔でこちらを見返していた。
「あんた……」
そう言ってから、少し困ったような、怪訝な表情になる。
「奥の子も入れたりな。可哀想やんか」
一瞬、意味が分からなかった。
奥の子?
浩平だけでなく、他の4人も同じだった。
視線が、自然と部屋の奥へ向かう。
そこには、誰もいなかった。
ソファも、テレビも、ゲーム機も、いつもと変わらない。
人が隠れられるような場所はない。
「……誰のこと?」
浩平がそう聞くと、母親は眉をひそめた。
「何言うてんの。ほら、奥におるやろ。金髪の子やんか」
その言葉で、5人の背中に一斉に冷たいものが走った。
全員が、息を呑んだ。
誰も、金髪じゃない。
だが、
彼らには、金髪の仲間がいた。
数か月前、事故で亡くなった友人。
いつもこの離れに来て、同じようにゲームをして、同じように夜食を食べていた少年。
金髪だったのは、そいつだけだった。
誰も、声を出せなかった。
母親は不思議そうに5人を見回してから、
「変なこと言わんと、はよ食べな冷めるで」
そう言って、どんぶりを置いた。
6つ目のどんぶりも、当然のように。
母親が母屋に戻ったあと、
5人はしばらく、誰一人として箸を取れなかった。
部屋の奥は、暗かった。
もしかすると、
あいつも、
また一緒に、ここに居たかっただけなのかもしれない。
そう思った瞬間、
誰かが、ぽつりと呟いた。
「……今日は、6人やったんやな」
誰も、否定できなかった。
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