迷宮アドバイザーと歩む現代ダンジョン探索記~ブラック会社を辞めスローライフを始めた俺の邪魔をするのは猪でも熊でもなく腐れモンスター共!なので可愛い後輩や美人元上司と共にハクスラに勤しんでます

秋月いろは

?日目


「臥龍先輩、すみませんっす!

 二匹仕留め損なって――

 そっちへ向かってます!」


 威力偵察から奇襲を仕掛けた紫亜楓(しあかえで)の、焦燥に満ちた警告が飛ぶ。

 露出度を上げれば上げるほどクリティカル率が上昇するという、女版忍者である【クノイチ】の固有技能は敵が単独なら、かなり有能だ。

 だが――複数を相手取ると、その防御力の薄さと確殺率の低下がネックになる。

 無理をしてあと一歩を踏み込めないのが欠点ではあるな。


(それに……ほぼ水着に近いあの服装も難点といえば難点か)


 随分見慣れたといえ――強化レオタードの上に鎖帷子を着込んだ忍者服という退魔忍コスプレ並みに狂気じみた服装は目の毒だ。

 無論――仲間として意識しないように心掛けてはいる。

 とはいえ、毎度チラ見えする白い肌が集中を搔き乱すのも確か。

 俺は頭を振って煩悩を振り払うとアイに尋ねた。


「――敵は?」

「種族名:アイスサラマンダー。

 炎と氷の二重属性を持つ故、同属性攻撃に対する無効化能力を持ちます。

 また放たれるブレスは広範囲で後衛にも及びますので注意が必要です」


 視えないとはいえ沈着冷静に耳元で語られるアイの助言。

 さすがは唯一無二のダンジョンアドバイザーだ。

 アイに感謝しつつ俺は【賢者】である元上司、瑞希莉愛(みずきりあ)に尋ねる。


「近寄らせたら面倒か……

 いけますか、瑞希さん?」

「あ~瑞希って言った~

 莉愛でいいって言ったのに~」

「昔から呼び慣れてるんで急には変えられませんよ。

 それで――どうです?」

「ん。大丈夫よ~。

 おねーさんにま~かせて、臼汰くん」


 太鼓判を押すように胸を張り豊かな双丘を揺らす瑞希さん。

 こっちも別な意味で目の毒ではある。

 ただ間延びした口調とは裏腹に彼女の戦闘センスは抜群だ。

 大学時代からの付き合いとはいえ信用も信頼もしている。


「我が血の値を以って~

 地の智と為さん? 【アーススパイク】!」


 何故に詠唱末が疑問系なのかは分からない。

 だが的確に発動される瑞希さんの魔法。

 それは大地を隆起させ鋭い剣山と化し――

 宙を舞う二匹のアイスサラマンダーをその場に縫い留める。

 上手いな、瑞希さんは。

 有効属性である地属性を選択する事もだが、俺の動きに合わせて発動タイミングをきっちり合わせてくれる。

 無論、ここまでの間に俺が何もしていなかった訳じゃない。

 溜め時間の長い――侍【サムライ】固有スキルの準備は既に終えていた。


「絶技【草薙】!」


 腰溜めに放ったスコップから放たれた斬撃。

 不可視のそれはジタバタ足掻くアイスサラマンダーらを綺麗に両断する。

 抵抗すら出来ず砕け散り魔石と化す二匹。

 歓声を上げながら駆け寄ってくる紫亜と瑞希さんに微笑み返す。

 的確な助言をくれるアイの存在があるとはいえ、基本は試行錯誤の繰り返し。

 俺達の連携も大分形というか、様になって来たという実感が湧く。

 

(しかし――まさか現代社会でダンジョンの探索をするようになるとは、ね)


 勝利を喜ぶ二人の笑顔に、掛け替えのない幸福を感じながら――

 俺はホンの数ヶ月前の事を思い返すのだった。



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