第21話 お掃除にお洗濯にお買い物とおしゃべりと樹里ちゃん 安南目線

 昨夜のご飯は今まで以上に美味しかった。お献立はもちろん、お父さん、お母さんと一緒。もちろんふうくんも。


 お母さんと一緒にお片付けで、台所もダイニングもきれいになっていい気分。それが終わって


「安南、あとはお母さんがやっておくから、お風呂に入ってらっしゃい」


 そう今日から私はアンナから安南あんな。お母さんが自分の名前から一文字付けてくれた。本当にお母さんの子に成れた気がするし、あの女と決別できそうで、本当に嬉しい。


 お風呂に行ってまた驚いた。なんか銭湯みたいに大きな洗い場に、泳げるくらい広い浴槽。そこにはすでにお父さんとふうくんが入っていてすっごい気持ちよさそう。


 私が体を洗おうとすると、お父さんが


「安南、洗ってやるよ」


 と言ってくれて、それからみんなで湯船に


「あぁぁっぁぁどっこっいっしょぉ」


そうするとお父さん


「お前らはまだ言わなくても大丈夫だで」


って。お父さん続けて


「楓雅は明日お父さんと、安南はお母さんと一緒な」


なんかちょっと寂しいけど、別に少し離れても仲が悪くなるわけじゃないから、大丈夫だって。


と言って背中を流してくれた。


上がってパジャマに着替えて二人そろって


「おやすみなさ~い」


きれいでふかふかなお布団のふうくんと一緒。これから毎日ぐっすり眠れそう


 ひと足早く起きてエプロン姿で朝ごはんのお手伝い。お母さんはお店の残りのスープに野菜畑を入れて温め、ベーコンエッグを、私はお皿と食パンの用意。やっとパンの白いところが食べられる、そう思うとまた嬉しくなる。


 ふうくん起きて顔を洗ってきたタイミングで


「ごはんですよ~」


 明るい場所で暖かい朝ごはんを食べてもいいんだ私。一つ一つ噛みしめて本当に美味しい。お父さんとふうくんがパンをお替りのときは私がトースターにセットして、渡す。みんな美味しそうにたくさん食べているのを見るのは本当に嬉しい。


 食べ終わってお父さんとふうくんが出かけて、片付け終わったら今度はお洗濯。ランドリーバスケットに溜まった服を入れてスタート、その次はお掃除。お母さんに言われたところをするけど、壊れそうな部分は触らないようにして、あれば避けてくれる。


 次は洗濯したものをランドリーバスケットに入れて専用エレベーターに乗って屋上へ。屋上に物干しがある。屋上から見える富士山や東京、海や山々は素晴らしい景色しかも今日は雲が少ない晴れの日で、私もお母さんもなんかいい気分。


 下に戻って、お掃除の続きをしていると、呼び鈴が


「安芸ちゃんいるかやぁ」


「健蔵さん上に上がって」


エレベーターから上がってきたのは、お父さんと同じ年くらいのおじさんと、私と同じ年くらいの男の子。おじさんは沢山の餃子が入った袋を持っている。


「この子かやぁ、姉妹の妹ちゃん。色が白くてかわいいなぁ」


「やぁねぇ健蔵さん。ウチは兄妹よ。上の子は主人と一緒に出かけたわ」


「あぁぁわりぃわりぃ。女房が言うだよ。安芸ちゃんの子姉妹だって」


「麻ちゃんがそんな事言わないわよ」


「まぁともかく、安南ちゃんよぉいつものだけど食ってくんなぁ」


「おじさんありがとう」


そう言って健蔵さんから餃子を受け取る私。


「あっこの子はうちの孫だ」


「健之介だよ。よろしくね」


「私は安南。よろしくね」


健之介くんも女の子みたいな感じだけど、どこか悲しい雰囲気、私たちと同じような事があったのかも、そんな気配があった・・・・・


 健蔵さんたちが帰って、そろそろお昼の時間。餃子の他にごぼうのささがきと鶏肉の玉子ももらって、お母さんが豆腐のお味噌汁を作ってそれでご飯。お母さん


「健ちゃん家駅前通りの餃子屋さんなの。もともとお蕎麦屋さんだったけど、ラーメンとか餃子が人気で美味しいわよ。それとこの柳川煮も人気なの」


 餃子はほぼ初めてかも。野菜が多めで甘みがあって美味しいから何個でもいける。それと柳川煮はご飯に乗せると美味しい。


 お腹が一杯になってお母さんと一緒に絵本タイム。読み終わると


「洗濯物を取り込みましょ。それを畳んだら、おつかいに行きましょ」


 そう言って屋上の洗濯物を取り込んで畳むけど、お母さんの畳み方はきれいで私とは雲泥の差。丁寧に教えてくれるけど、上手くいかない。けどお母さん


「毎日やったら上手になるわ。がんばりましょ」


「晩御飯の支度するから、おつかいに行きましょ」


って専用エレベーターで下に降りて手を引かれてこの間の肉屋さんに行くと


「あらっまた可愛くなったわねぇ。今日はお母さんと一緒でよかったわね」


と肉屋のおばさんが声をかけてくれると、配達から戻ったおじさんにも声を掛けられた。


「この子たち好き嫌いしないでよく食べるのよ。今日は黒豚ロース700グラムね」


「安南ちゃんこの間煮物のお弁当買ってたもんね。余りのコロッケもおまけしてくわ」


 そして後ろから声が


「安芸ちゃ~ん。この子ね妹ちゃん。お姉ちゃんはお父さんと一緒みたい」


「ちょっとぉからかわないでよ。麻ちゃん」


なんかふんわりした感じのおばさんがお母さんに声をかける


「この子が安南よ、挨拶しなさい」


「こんにちは」


「安南ちゃんね。よろしく。おばさんねお母さんの友達なの、でさっきお家に来ていた健之介くんいるでしょ」


と言うとお母さんが


「健ちゃんのおばあちゃんよ」


すると麻子さんなんか微妙な感じ・・・・


だけど麻子さん、お母さんと比べてやわらかくて、爽やかっていうか・・・・


その後は八百屋さん、今度は外国なまりの人がお母さんに向かって


「ママーこの子ね」


「そうよ安南よ」


「かわいいぃ白くて溶けちゃいそうね」


その人も私と同じ年くらいの女の子を連れているけど、私から


「私は安南。お名前は?」


と聞いて


「あたし樹里。安南ちゃんよろしくね」


なんか太陽みたいに明るい子。エマちゃんみたいな感じ


お母さんと樹里ちゃんのお母さんイザベラさんのおしゃべりの横で私たち


「ねぇ安南ちゃんはどこの人?」


「ロシア人から産まれているけど、日本人だよ」


「私はスペイン人から産まれているけど、日本人」


明るくそういう樹里ちゃん、いっぺんに親しみが沸いた気がする。エマちゃんの時と同じように。


あっちのおしゃべりも終わって、私たちはいつか遊ぼって約束をしてバイバイした。


「お母さん今度樹里ちゃんと遊ぶ約束したんだ」


「あらっ良かったわね。お友だちが出来て、ずっと仲良くするのよ」


「うんっ」


 また一つ、大切な得られがあった私。そうした気分でするお手伝いは楽しい。今日の夕飯は、イワシの生姜煮、豚肉とピーマンと人参の洋風細切り炒め、ほうれん草と人参、油揚げの白和え、お父さん用にもう一品。


 まだ作っている最中なのに、出来上がってみんなが喜んで食べていることを想像するだけで、またほっこりしてくる、本当に幸せな気分。


 この街に来てから、ほんっと広がっていく私の世界。やれることも得られることも増え、堂々としていられる、安心していられる、あの女とあの街から別れられたおかげで。



 最後までお読みいただきありがとうございます。二人の行く末が気になる方は【★評価】や【フォロー】**で応援いただけると、とても励みになります。



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