第二幕:三年後

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第一幕では、頭の中がお花畑だったせいで、僕の人生はめちゃくちゃになった。そして三年の放浪を終えて故郷に戻ってきた。


後悔した。三年の月日は人生の破壊を一気に押し進めていた。

両親は二人とも神さまのところへ行って戻ってこない、

多くの友人たちは引っ越し、

いても僕が顔を出したら死神にでもあったように、僕を遠ざけた。

仕事先はなくなった。

最後に残ったものさえも、

僕を徹底的に打ち負かした。


かつて知の女神のような彼女が、

聖母マリアさまのように、子どもの手をひいて歩いてた。

いったい誰の子なんだろう。

彼女は金髪の髪なのに、

あの子の髪は黒かった。大きな水色の瞳をして、顔がふっくらしていたよ。

まるで小さな天使の微笑みだ。

彼女が急に立ち止まる。

そして僕に振り返る。

僕のかつての名前を呼んで、

彼女がゆっくり近づいた。


そこは本屋の前だった。古い本を扱う店で、僕はそこで立っていた。

既に昼は過ぎてたが、僕は何も食べずにいた。

「お久しぶりね」と彼女は言った。

「顔色が悪いけどーー大丈夫?」とも。

「僕は長い旅をした。君からも逃げたんだ。大丈夫?大丈夫なわけがない」

彼女は悲しい顔した。


天使は僕の子ではなく、新しい男の、子であった。

そいつは僕の親しい友で、

だけど冷たい男であった。

彼はどこかと彼女に聞いたら、一緒に住んでるというだけで、

会わないかとさえ誘わなかった。

こんな会話をするだけで、

苦痛はもっと増すばかり。

やるべき事があると彼女に言って、

逃げ出すように離れていった。


かつての友に、会おうとなんか、思うべきではなかった。

夜の都の冷たい闇が、文句を言えと囁きかけた。


彼女の家の近くに行って、月明かりとガス灯が、建物ぼんやりうつしだす。

僕が近くに来た時に、狙ったかのように家の扉が開かれた。

かつて友と呼んだ男の顔、灰色髪を肩まで伸ばし、だけど前髪が少し後退していた。額が人より広く見えた。その厳格な黒い瞳であたりを見回す。気品ある顔立ちだ。唇に浮かぶのは少しの微笑み。痩せて背が高い男だった。

三年前と大して変わらない。

だけど懐かしさよりも、薄気味悪さ感じたよ。彼の指の動きを見たら、それは地を這う蜘蛛のよう。

扉をしめる手の動き、まるでコソ泥みたいに慎重だった。


彼は石畳を慎重に歩き出した。

長い手足を不器用に振って歩く彼を見た。かつて友とバカにした、彼の歩きは、そのままだけど、何かが彼を変えていた。人の皮を被った何か、なんで彼女はあの男と、結婚したのかわからない。どこへ行くのか気になって、少し離れてついてった。


(こうして、第二幕は人の皮を被った何かにより幕を閉じる。)

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