第七話 本で性格を変える……エロ本の方が効果的では?
衝撃を整理しきれないまま屋敷へ戻る、詐欺師……だめだ……頭から離れらんねぇ……ガキの頃見た心霊番組より背筋が凍ったぞ……。
「ただいまー。」
「お帰りなさいませ……ご主人様。」
扉を開けるとセンシアが居た。
「ご主人様……ヘイムス・ヴィティズがゴブリンを拷問した所色々吐いたようです。」
そうだった……術師型のゴブリンをロンガ・シュタットにぶち込んでおけと指示してたな……。
「彼女達は地下からは余程の事がない限り出ません……ハル様の顔を見たくとも見られない訳ですので……行ってみては?」
「ああ……そうだな。」
ヘイムス・ヴィティズは寮長であるシックス・アイズしか会ってない……彼女達は表に出たがらないしな……彼女達の様子を見るのも主人としての務め……行かない選択肢はない。
僕は屋敷の地下室へ向け歩いて行く、西棟一階は物置だが巨大マンホールが存在する、暗証番号がありそれを押すと上へ伸び入口が出てくる、中へ入れば螺旋階段が現れ下に降りていけばヘイムス・ヴィティズの寮まで直ぐだ。
中は用水路になっており天井からは雫がポツポツと落ちている、中は迷路で外に通じる脱出路もあったり、ダンジョン的な役割も果たしている。転生前、他プレイヤーがここに無断侵入してきたがヘイムス・ヴィティズが総出で戦いPKした、一時期ネット掲示板にここの存在がプチバズしたのは良い思い出だ。
奥に進み彼女達の寮へ向かう……柵の扉に手を掛ける前に状態異常無効の魔法を掛ける、アイテムでもいいが、勿体無い……。
「入るぞー。」
扉を開けた瞬間腕に何かが巻き付く。
「ご主人様ー♡」
体は押し倒され蛇の体でぐるぐる巻き……UIを出してHPを確認すると徐々に減っている……。
「待ってましたよ……お預けとか……私達がどれだけ待っていたか……。」
この蛇の体の正体は『オロチ』種族は『蛇人』下半身蛇で上半身人間……職業は『ウォッチャー』『アサシン』レベルは88……。
「やっと来てくれたのね♡この『ドロシー』ご主人の頭に針ぶっ刺してイジイジしたいの♡」
「ぐ……それだけは勘弁だ……ドロシー……。」
急に顔に乗ってきては頭に手をかけて脳みそを露出させようとしてくる彼女は『ドロシー』でありモンスターで『オートマタ』職業は『傀儡師(上級職)』『ネクロマンサー』……レベル98の西洋人形風であり小学生ぐらいの身長……ロリ……いや……そんな事より死ぬうううううう!!
「ゴシュジン……エサ……マダ……?」
「ま、待てええええええ!!落ち着けえええええ!!」
次に出てきたのは『リン・インナット』モンスター?であり職業が『カニバル(種族職)』頭には紙袋をかぶっており、くり抜いた穴からこちらを見ている……。
「ゴシュジン……エサくれないら……ワタシハ……」
リンが腕を掴み引きちぎろうとしてくる、まずい!
「私の旦那様♡……私……毒でローション作ったんです♡……試してみませんか?」
この声シックス・アイズか?!
「さぁ……見せてください……旦那様の……いえ……ハル様のハル様を♡」
シックス・アイズがズボンに手を掛けてくる……まずい!!HPが八割を切った……このままでは死ぬううううううう!!
「騒がしいぞ貴様ら!主人の体力を見ろ!」
よ、良かった……常識人が現れたぞ……。
「でも……毒の性能を試したいの……弱酸性で……溶けるからそれでヌルヌルシコシコ出来るのに……。」
「お前、俺の息子溶かす気じゃねぇかああああああ!!」
例のシックス・アイズのローションを使われていたら俺は確実に死んでいた……下半身を露出した状態で死ぬとか御免だ……。
彼女達の暴走を止めてくれた『メラニア・ピテュス』は種族『堕天使』であり転生石を使ったキャラだ……レベルはカンスト……そして、職業は『スパルタファイター(最高職)』『マジカルライトオブダークネス(特別職)』でありこの屋敷の中で一番の強さを誇る……ミトラスよりもだ……。
メラニアのお陰でみんな止まってくれた……彼女達は強すぎるのだ……これが好意ではなく攻撃であったなら……想像に難くない……。
「旦那様はゴブリンの件で?」
「ああ、何か吐いたと聞いて……。」
シックス・アイズの後ろへ付いていき、拷問室なる場所へ行く。
そこには目を覆いたくなるような光景が広がっていた……。
「な、なんだこれ……。」
そこにはゴブリン術師が……仰向けで大の字に拘束されているが、問題はそこじゃない……。
「な、なんで……こんな事を……。」
「ご主人仕方ないことよ、だって忘れちゃったんだって……私達を見て記憶飛ぶとか失礼しちゃうんだから……。」
ドロシーは可愛くプンプンと怒るが、そんなんどうでも良い……これは人間であれば気持ち悪くなる……。
「……?旦那様……大丈夫?」
「ああ、ごめん……。」
シックス・アイズは心配してくれる……彼女達は善意でやっているのだ……否定はしちゃいけない……この仕事を僕が彼女達を信頼して任せた……その事実と成果を僕が受け入れるのが筋だ。
簡潔に説明すると、ゴブリンの頭がくり抜かれ脳に針が数本刺さっている……おそらくドロシーの仕業……体に酸の跡も見えるのでこれはシックス・アイズ……みたいな感じで拷問したのだろうな……。
「全て吐いたか?」
「ええ、忘れてた記憶は脳を弄って無理やり思い出させたの!海馬の所をグリグリってすると記憶が逆流して詳しく教えてくれたの!」
「偉いぞドロシー。」
僕が頭を撫でると「えへへ」と喜んでれた……マジでエグいな……だからと言って彼女達を嫌いになる要素は絶対ない。
吐いた内容を彼女達が詳しく教えてくれた、まず今日聞いたレナード男爵までの下は同じ……これにより確証を得た。次に知らない情報だが……帝国の化学兵器の持ち込みはガルバルド傭兵部隊によるものだ……まぁ予想はできるな……。
次になぜ街娘のマリーダを誘拐したか……どうやら彼女には毒や状態異常を鼻から無力化できる人間らしい……なので流行り病には掛からなかった、FOOのスキルのようにこの世界にも存在している訳でレナード男爵からプロフィールのUIが出たためこれを駆使して探るとしよう……FOOであれば性格と種族で序盤のスキルが決まるが、この世界では何が起因して決まるのか……また生まれ持って初めから決まっているのか気になるところ……。エナであれば大魔法一家……つまり一族から受け継いだスキルがあるのかも……。とりあえず、街娘のマリーダはマルクレイブ卿の下へ送られ何をするかはボスゴブリンしか知らなかったようだ。
最後に聖王についてだ……このゴブリン術師は何かと賢いようでマルクレイブ卿の後に付いては助言を流したりと共に行動する事が多かったとか……マルクレイブ卿の聖王謁見の際、聞き耳を立てては聖王国の内部事情をある程度把握しているようだ……転生石を手に入れた二年前に帝国へ宣戦布告……でも、踏ん切りがいかなかったのか小規模な争いばかりで大戦並みの戦争は起きてないのだ……その原因として聖王の娘である『モニカレーデ』姫が帝国によって誘拐されたようで、人質をとして囚われているとか……某ステージ8ら辺で救えそうな姫だな……。とにかく、これに関しては噂程度であり、聖王の居る王都……『アトロニクス』の住民に噂が漏れないよう立ち回っているようだ。
ここまでが、ゴブリン術師が吐いた内容……今日は頭に情報を詰め込み過ぎた……早く寝たい……。
「ありがとう皆んな、助かったよ。」
「いえ、私達ヘイムス・ヴィティズは旦那様の為ならば全身全霊を尽します。他の寮なんて目じゃありません。」
シックス・アイズは厚い忠誠を示してくる……因みに性格が『人懐っこい』なので元々結構ベッタリではある……。
「そういえば、あのゴブリン如何なさいます?リンの餌にでも?」
「いや、ミトラスに蘇生してもらう。」
「畏まりました。」
僕だって良心がない訳じゃない……ゴブリンとはいえ僕たちに協力してくれたのだ、せめてもの恩は返す……それにマリーダの誘拐もあるが元はと言えば食糧難で降りてきただけだしな……。
「じゃあ僕は戻るよ。」
「はい、また来て下さいね!」
振り返り手を振ろうとした瞬間、リンがイスに座って本を読んでいる……あいつ本なんて読むのか?
「どうしましたか?」
「シックス・アイズ……リンは何読んでんだ?」
「ああ……よくぞ聞いてくれました!これは人間の集合知であり私達に叡智をくれた書物!」
「ん、叡智?」
よく見てみると、リンの持っていた本のタイトルに『マスカキパレード』と書いてある……間違いない俺のエロ本ンンンン!!
「ああああああああああああああ!!」
「ど、どう致しましたか旦那様!」
「なんで俺の持ってたエロ本読んでんだああああああ!!」
今までのシリアスと世界説明の件に水差してんじゃねええええええええええ!!
「ゴシュジン……私もニンゲンにナリタイ……。」
リンが本を読みながら感動している……何に感動してんだあああああ!!
「リン!お前がコレを読んだからって何かが芽生える訳じゃないだろう?!」
リンを直視するとプロフィールのUIが出てくる。
「ソンナコトない……私だってユメミタイ……。」
プロフィールを確認……いつもと変わらん……。
「良いかリン?お前は女の子なんだ……だからと言って否定はしない……ただ……俺が読んだ本を共有されたくないんだ……。」
「イヤ……ワタシ、ニンゲンにナッテ……ゴシュジンと一緒にナリタイ……。」
その時UIに書いてある性格の項目がバグり始める……何が起きてんだ……!
「ご主人……この叡智の書……私達を強くしてくれます……。」
「はは……バカこと言っちゃって……全く可愛い冗談だ……。」
シックス・アイズが項目に指を刺すとリンの性格が『不思議ちゃん』から『夢見る不思議ちゃん』に変わった……。
「なんじゃこりゃあああああああ!!」
「どうやらこの叡智の書……私達の性格をさらに追加してくれるようです。」
なんだそれええええええ!!ゲームのシステムにこんなもん存在しねぇぞ!
「私のお気に入りは『目指せMモンマスター』私の性格が『人懐っこいドM』になりました。スキルである『マゾの探究』はレベル上限が150とかなり……」
「あああああああ!!だからかあああああ!!」
ここで一つ思い出して欲しい……ヴァリアンズが風呂に潜入した際の事だ彼女達は性行為がわかっていなかった……だが、今回シックス・アイズはローションを使いあからさまなテコ……ゴホン……そういう行動を理解していた……。
「Mモンゲットだぜ!」
「うるせえええええええ!!わざわざ口に出して言ってんじゃねえええええ!!」
「おい!どうしてこうなった?!」
シックス・アイズに代わってメラニアが説明に入る。
「それが、私達が転生した時にはご主人の私物は全部この地下に……。」
なんでだよ!俺は死んで転生して、私物は同時に召喚されたってか?!
「ですがご安心を……召喚されたのはご主人のベッドのみです。」
「安心できるかあああああ!!あれに夢が全部詰まってんだよオオオオオお!!あの夢は分ける為にあるんじゃねええええええ!!」
なんでベッドだけなんだああああああ!!他にももっとあるだろおおおおおおお!!
「因みにですが、私のお気に入りは『転生したら透明人間なので好き勝手しちゃいます、俺何かヤッちゃいました?』です。」
メラニアのプロフィールを見ると『生真面目』から『イタズラ好きの生真面目』になっている、性格増えるとは言えそんな矛盾ないだろ!!
ベッドを探し出し見つける、この引き出しを引けば……。
「あれ……おかしいな……いつもより本が無いぞ……。」
「ああ……ご主人が転生当日にルトロス先輩が来て八割方持って行きましたよ……。」
メラニアが淡々と答える。
「ルトロスうううううううう!!」
俺はヘイムス・ヴィティズの寮を抜ける、あれが拡散される前に俺は俺の財産を守るんだあああああああああ!!
——急いでカリス・ピスティソスの寮の扉を開く。
「ルトロス!!どこじゃあああああ!!」
「ああ……ルトロスは訓練場、ヴァリアンズ寮に行きましたよ。」
中に入るとパルマが居た。
「何しに行くって?」
「さぁ……ああ、でも教育が必要って言ってました……前にご主人が入浴中にカストディーアが入って行ったでしょ?だから、事故が起きる前に対策するとかなんとか……。」
「がああああああああ!!」
「ど、どうしました!?」
気が付いたら足が動いていた、間に合え!ルトロスの事だ!あの本の効果は知っている!
——「いるかああああああ!!」
またも寮の扉を開く。
「如何なさいましたかご主人様……。」
ルトロスとその隣にはカストディーアが座って本を読んで居た間違いない……その本は……。
「ちょっとご主人!ドアぐらいノックしてよ!着替えてたらどうすんのさ!」
プロファンダーレが叱ってくるが、そんなもん聞こえん……。
「一足……一足遅かった……いや……もう俺が転生してる時には遅かったのだ……。」
膝から崩れ落ち四つん這いになる……俺はここの主人だよな……プライバシーってなんだ……?
「ど、どうしたの?!何かイヤなことあった?」
「はは……プロファンダーレは優しいな……気にしないでくれ……。」
「いや、無理だろ。」
離れて見ていたマリブルが突っ込んでくれるももう……何も聞こえない……。
「安心して下さい……ハル様の童貞は私がお守り致しますので……。」
ルトロスがゆっくり近づく……。
「ヘイムス・ヴィティズはただでさえあなたへの執着が強い……組み合わせ次第では襲われちゃうでしょ?私に任せて下さい……。」
「もう良いよ……ただ……程々に……それで、カストディーアに何を渡した?」
「ご主人……。」
今度はカストディーアが近づく……本を持って顔を隠す……タイトルは『酒池肉林!!筋肉に愛され体!!』だ……この本を元にカストディーアを作った……俺は……もうおしまいだ……。
「なんかさ……この本私に似てるなって……コレからは行動改めるよ……でも、ご主人だったら……その……いつでも良いからね……痛いのイヤだから……する時は優しく……電気も……。」
「どうやら逆効果でしたね……。」
「お前……。」
カストディーアは『脳筋』から『脳筋乙女』に変わった。
第八話に続く……。
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