第2話

 早速、連れ帰った子猫を両手に抱っこした。


 向かうは動物病院、私は財布などが入ったカバンを片手に速足で急いだ。自動ドアをくぐり、受付で事情を説明する。


「あの、先程に近くの公園で拾ったんですが。古い段ボール箱の中に入れられていまして」


「そうですか、なら。捨てられていた子でしょうね」


「はい、ちょっと弱っているみたいで。お金は払います、診てもらえないでしょうか?」


「……分かりました、こちらの問診票に記入をお願いします」


「はい」


 私は抱っこしていた子猫を一旦、座っていた椅子に降ろす。問診票やボールペンなどを受け取り、書き込んでいく。子猫は疲れたのか、小さくあくびをする。急いで記入を済ませると受付のスタッフさんに渡した。


「はい、記入は終わりましたね。順番が来るまでお待ちください」


「分かりました」


 頷き、私は子猫がいる椅子に戻った。頭をぎこちなく撫でてやった。


 順番がきて、子猫を再度抱っこする。診察室に向かうと珍しく女性の先生だ。三十代半ばくらいでベテランの域に入ったと言える雰囲気だった。真っ直ぐな黒髪をショートカットにして白衣を着ているのが様になっている。


「はい、今日はどうなさいましたか?」


「あ、私は。初診なんですが、先程に捨て猫を拾いまして。近くの公園に段ボール箱に入れられているのを見つけたんです。弱っている感じがしたから、こちらに来たんですけど」


「……そうでしたか、その猫ですね?」


「はい、診て頂けますか?」


「ええ、それが仕事ですし。さ、その子を台に」


 私は頷くと子猫を診察台にゆっくり降ろした。先生は手袋を履くと診察を始めた。


 結果は軽い栄養失調との事だ。先生は「お家に帰ったら、まずは体を洗ってあげてください。次に食事ですね」と指示も出してくれる。受付で猫用のシャンプーやトリートメント、処方された栄養剤やダニなどの駆除薬などを受け取った。治療費も払おうとしたら、野良だからと無料にしてくれた。まあ、シャンプー、トリートメント代は出したが。

 スタッフさんはさらに、「ペットショップに行って、必要なグッズも買った方がいいですよ」とアドバイスをくれた。ペットショップにも寄り、猫用のブラシ、おもちゃ、ケージなどを買い揃える。意外と高くついたが、仕方ない。私は店員さんがサービスでくれたトートバッグに子猫を入れる。両手にグッズを提げながら、帰宅の途に着いた。


 自宅に帰り、子猫を浴室に連れて行く。苦労しながら、買ったシャンプーで全身を隈無く洗ってやる。子猫はちょっと嫌そうにするが、容赦無くシャワーのお湯で泡を流す。トリートメントをして再度、流した。お湯を止めて洗面器から出し、バスタオルにくるむ。優しく濡れた毛を拭きながら、浴室から出た。

 ドライヤーで乾かしてから、ブラッシングもしてやった。


「……ふう、やっと洗い終わったわ」


 そう言いながら、ふわふわのもふもふになった子猫を膝に乗せる。ふむ、名前をつけてあげないとね。今は十二月だし、冬だからなあ。


「うーむ、毛並みが綺麗だしなあ。よし、あんたは今日からギンだよ!よろしく!」


「……ミャアー」


 子猫もとい、ギンは分かったと言わんばかりに鳴いた。奇妙な一人と一匹の共同生活が始まった。

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