第14話

 放課後、生徒会室に行くと既に綿矢が撮影の準備を始めていた。

 綿矢は俺の顔を見ると手招きをする。


「振り付けは覚えてきたんでしょうね」

「ばっちりだ」

「そう。じゃあ早速準備をして」


 俺は頷くと、氷織にアイコンタクトを送る。氷織は生唾を飲むと、俺の隣に並んだ。そこに蟻須を加えて俺たちは構える。

 音楽をかけ、リズムに合わせて踊ってみる。カメラ目線を意識しながら踊ってみる。

 隣を見ると、氷織の動きが硬い。振り付けは覚えているようだが、ダンスのクオリティが低い。


「ダメね。白雪さんが外れたほうがいいかも」


 綿矢にそう指摘され、氷織は肩を落とす。

 氷織が抜けて、俺と蟻須で踊ってみる。蟻須はさすがというべきか、ダンスのキレが段違いだ。俺も運動神経はいい方なので、キレよく踊れる。

 綿矢が頷き、オーケーを出す。


「とりあえずこれでアップしておくわ。本来なら副会長の白雪さんが入った方が良かったのでしょうけど」

「まあダンスはセンスも必要なので仕方ないですね~」


 二人に慰められ、氷織は肩を落とす。


「まあダンス動画が伸びるかどうかは置いておいて、他の項目に手を付けようか」


 俺がそう提案すると、氷織は目を見開く。


「校則の改正。やらないと」

「そうだな。とりあえず厳しすぎる校則を上げていくか」


 俺はそう言ってメモ帳に改正したい校則を羅列していく。


「髪型、制服の着こなし、遅刻時の罰則、不純異性交遊、買い食い禁止、こんなものか」

「待って。不純異性交遊は必要な校則でしょ」

「いや、これが恋愛禁止と取られてるからなくしたほうがいいって」

「でもそれで子供ができるような事態になったら、どう責任を取るの」


 確かに綿矢の言うことも一理ある。確かに学生で性行為をするのはどうかというのもわかる。だが、俺はむしろ学生のうちにこそ性行為を経験しておくべきだと思っている。正しい避妊の仕方を学び、相手とのコミュニケーションを学び、大人になっていく。

 世間的にそういう否定的な目があるからこそ、童貞率や出産率が低下しているのではないか。俺はそう思う。


「今時の学生で性行為が禁止というのは厳しすぎる。他の学校はそういうのも認めてるだろ」

「じゃあ妊娠した時はどうするのよ」

「それはその学生が悪いのだから罰則は必要だ。だが、今の校則だと退学処分が下るだろう。それはその子たちの将来にとっても良くない」


 俺の反論に綿矢は口を噤む。


「本来、妊娠はめでたいものだ。本来は周りが協力してお祝いしてやらなければならない。そのかわり、親になる二人はしっかり責任を果たさなければならないが」

「でも、それでそういう学生ばかりになったらどうするのよ」

「学生はそんなに馬鹿じゃない。そのためにきちんと性教育を充実させれば解決できる。性教育に対して批判的なのが悪い。もっと性教育はすべきだ」

「あなた、よくもそんな話を恥ずかしげもなく言えるわね」


 綿矢は顔を真っ赤にして、呟く。氷織も顔を赤くしている。

 まあ確かに女子にとっては恥ずかしい話だったか。


「恋愛ができないのは一度しかない青春時代を失うことに等しい。この校則は絶対に変えなきゃいけない」


 俺がそう言うと、氷織が頷いた。


「綿矢さんの意見もわかる。けど、私も楓に賛成。恋愛に否定的だと受験生たちに思われるのはマイナス要素だと思う」

「そうですね。あたしもこの学校に来たのは恋愛禁止だと思ってたからですし」

「お前は恋愛したくないのか」

「そりゃ好きになった人ならいいですけど、あたし中学の時毎日のように告白されてたんで、うんざりで」


 それはお前があざといからではと喉元まで出かかったが、俺はなんとか飲み込んだ。


「まあ、私は恋愛ができるようになったら面倒なので反対したいところですが、この生徒会の目的としては改正したほうがいいでしょうね」


 これで三対一。多数決なら不純異性交遊禁止は改正するべき校則だと決まった。


「わかったわよ。じゃあそれでいきましょう。ただし、妊娠が発覚した場合の女子と男子両名の罰則は外せないわ」

「ああ、それでいい」


 俺は頷くとメモを取る。


「身だしなみの部分はある程度は厳しくしたほうがいいと思うわ」


 綿矢はそう言って根拠を語る。


「進学する際の面接の合格率、就職率が高いのはうちの魅力よ。そこを損なうのは改悪だと思うわ」

「それはそうだな。身だしなみの部分はこのままでもいいかもな」

「ええ、私はそう思う」


 これは綿矢の意見が正しい。入学希望者を増やすために学校の良さを失くしてしまうのは改悪だ。うちの学校は進学率、就職率ともに高い数字を誇っている。


「まあ今日はこんなもんか。とりあえず方針は決まったから、その方向で進めよう」

「わかったわ」

「わかりました~」


 全員頷き、今日の生徒会は解散する。俺と氷織は戸締りをして、職員室に鍵を返却しにいく。今日は氷織もついてきてくれた。俺は鍵を返すと、氷織とともに職員室を後にした。ダンス動画が伸びるかどうかは明日判明するだろう。


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