種馬スキルの悪役貴族に転生した俺、断罪を回避し娘たちと自由に生きることにした。

みなもと十華@書籍&コミック発売中

第1話 転生したら最強の種馬だった件

 目が覚めたら、そこは見知らぬ部屋だった。

 凝った装飾の壁に、装飾付きマントルピースの暖炉、ふかふかの絨毯に、いかつい大きなベッド。

 そして俺の視界が低い。まるで子供のように。


「えっ、何だコレ? そ、そうだ、鏡はどこだ」


 部屋の隅にある大きな鏡の前に立った。

 映っていたのは、俺とは似ても似つかない少年だ。

 柔らかそうな茶髪に、鮮やかな青い瞳、整った顔には、どこか大人びた雰囲気を漂わせている。


 そうか、俺は異世界転生したのか。あの時、俺は死んで……。

 この世界で前世の記憶がよみがえったというわけだ。


 驚きはしたが、すぐに理解した。

 窓から見える街の風景。見覚えある建物。これは、俺が何度も遊んだあのゲーム世界だ。


『NTR OF DRAGONIA』じゃなかった。『TALES OF DRAGONIA』テイルズ オブ ドラゴニア。

 剣と魔法のファンタジー世界を舞台にした、人族、魔族、エルフにドワーフなど、様々なキャラが織りなす王道ファンタジーだ。


 ただ、ストーリーはR18で胸糞展開やNTR展開があり、一部から強烈な批判を受け度々炎上していたのだが。


 俺の名前は有馬ありまれい……まあ、どうでもいいか。クソみたいな元人生だから思い出したくもない。


 新しく人生をやり直せるのなら最高だろう。これでレアスキルでも手に入れたら儲けもんだ。

 そう思っていたけど……。

 一つだけ大きな問題がある! 


「そう、今の俺の名前が、悪役下級貴族のレイン・スタッドだということだ! なんじゃこりゃあぁああ!」


 種馬のレインといえば、このゲームでヘイトを一身に受ける胸糞野郎だぞ。NTR同人で主人公の女を奪う男キャラみたいな。


 何度も主人公の前に立ちふさがり、数々の嫌がらせをするゲス男。プライドばかり高く、主人公を妬んでは邪魔をする。


 そして一番問題なのが、何人ものヒロインと半ば強引に関係を持ち、脅して言いなりにする女の敵。

 しかも、散々ヒロインを泣かせた挙句、あっさり捨てる鬼畜さ。


 ファンの間では、『種馬のレイン』とか『レイン死ね!』とネタにされてきた。


 そして最後は、無様に命乞いをしながら主人公に断罪される運命だ。

 ボコボコに負け王都から追放されたレインは、ゴブリンに連れ去られ苗床にされるという意味不明な展開に。


「待て待て待て待て待て! ゴブリンの苗床だけは勘弁してくれよ! そもそも何だよ、ゴブリンの苗床って!」


 俺は頭を抱えてうずくまる。


 とにかく最悪のエンドだけは回避せねば。意味不明な苗床にされ、延々と苦しみ続けるのだけは勘弁してくれ。

 俺は穏やかに暮らしたいんだ。


 ふと俺はゲームシナリオを思い出した。


「ここがレインの屋敷だとすると、イザリル王国の首都イストファンか」


 窓から見える街並みは、ゲームで何度も見た光景だ。

 間違いない。


「そうだ、思い出した。レインが主人公に会うのが15歳のスキル測定の儀式だよな」


 その時にレインは、勇者スキルを持つ主人公に因縁を吹っ掛ける。それからずっと嫌がらせを続け、ざまぁ展開まっしぐらになるストーリーだ。


 今の俺は10歳、あと5年の猶予がある。

 大丈夫だ。俺には膨大なゲームの知識があるからな。

 今から準備すればバッドエンドを回避できるはずだ。


「やってやる! 俺の知識をフル活用して最悪のエンドを回避するんだ! あと、不用意に女と関係を持たないように。女性は大切に!」


 俺の、ささやかだが大きな抵抗が始まった。



 ◆ ◇ ◆



「あ、あの、レインお坊ちゃま」


 オドオドした態度で話しかけてきたのは、俺の専属メイドであるリズだ。

 原作ではレインの奴隷にされ、何度も泣かされていた。


 ここは優しく対応するべきだな。

 下手に扱いを間違えるとバッドエンド一直線だぞ。


「リズさん、疲れていませんか? 今日は休んでいて構いませんよ」

「えっ!? えええっ! お坊ちゃまが優しいですって!」


 俺が笑顔で声をかけると、リズは驚きのあまり後ずさって倒れそうになる。

 俺はとっさに彼女の腰を支えた。


「大丈夫ですか?」

「きゃあぁああ!」


 リズが悲鳴を上げた。


「な、何もしないですよ」

「えっ、いつもなら私の尻を打って躾けるのに。このメス豚って」

「そんなことしませんよ!」


 くっ、俺ってそんなクソガキだったのか? 完全に放送禁止じゃねえか。

 まあ、何となくレインの記憶もあるけど……。

 対応を間違えないようにしないとな。あと、絶対に手を出しちゃダメだぞ。


「リズさん、疲れているみたいなので休んでください」

「レイン坊ちゃま、何か変な物でも食べましたか? 変ですよ。変態ですか?」

「変態じゃないです。普通です」


 こうして俺は、屋敷の使用人や身近な女性を大切にして過ごした。

 バッドエンドの原因になりそうな芽をは全て摘む。


 そしてレベル上げも怠らない。

 どうやらこの世界の住民は、レベル上げやスキルの概念を知らないらしい。

 才能ある者が武芸や魔法を極めると、勝手にレベルが上がるといった、大雑把な感じだ。


 だが俺は違う。効率的なレベルの上げ方も、スキルの覚醒方法も、裏技的なゲームの攻略方法も、全て頭に入っている。

 なにより、俺には自分や他人のステータスが確認できるのだ。これは大きなアドバンテージだぞ。


 とにかく少しでもレベルを上げて、主人公の勇者に負けないようにせねば。



 ◆ ◇ ◆



 それから時は流れ――――

 十五歳になった俺は、スキル測定をする儀式に参加していた。

 この世界で成人になるとやるアレだ。


 やれることは全てやった。

 あとは勇者とトラブルを起こさないように……って、主人公の勇者が見当たらないぞ。

 シナリオ通りなら、何処かにいるはずだけど……。


 もしかして、俺がゲームシナリオと違う行動をしたから、歴史が改変されたのか?


「次の者、前に出よ」


 神官の声がかかった。俺の順番だ。

 レイン・スタッドのスキルは何だっけ? ゲーム内で開かされてなかったような……。


 不安な気持ちを押し殺し、俺は神聖石に手をかざした。


「おおおおおおっ!」


 スキルを解析する神官が、驚きのあまり仰け反った。


「こ、これは世界最強の天啓てんけいスキル、『天帝の種』じゃ! このスキルを持つ者は、この世の覇者になるであろう!」


 神官は高らかに宣言した。俺のスキルが世界最強だと。なんだそりゃ。

 もしかして、これは転生ボーナスなのか? やっと俺にも運が回ってきたってか?


 神官は続けて言い放つ。


「レイン・スタッドよ、そなたのスキルは世界最強の遺伝子を持つ、種馬たねうまスキルじゃ!


 は!? た、種馬…………?


「おお、なんと恐ろしいスキルなのだ! この天帝の種を使えば、伝説の勇者や魔王を生み出すことが可能であるぞ!」


 はぁああああああああああああ!?


 こうして、俺の穏やかな暮らしは壊され、異世界種馬生活が幕を開けるのだった。






 ――――――――――――――――――――


 不幸な身の上の男が転生し、愛娘たちと幸せになったり、悪党をぶっ飛ばしたりする物語です。

 敵が暗躍したり世界が混乱するけど、主人公は娘とスローライフするつもりです。


 もし面白そうとか期待できそうと思ったら、作品フォローと★評価を入れていただけると励みになります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る