第1話 幼馴染だと思ってたのに
桜が舞い散る今日。
私は晴れて高校生となる。
靴を履いて家を出る。
「行ってきまーす」
外を出ると、しかめっ面でこっちを見る女の子がいた。
「遅い!」
「えー結構急いだんだけど」
「文句言わないの、早く行こ!」
この子は花園香里奈、私の幼馴染。
いつもツインテールをして、それがまた似合っているという美少女。
はっきり言って、私は釣り合っていない、でもいつも隣にいてくれる。
「香里奈ちゃん、頭良かったのになんで私と同じところに来たの?」
私が通う高校は普通くらいの学力があれば入れる高校だ。
香里奈ちゃんは勉強がすごくできる。
だから、それ以上の高校も狙えるはずなのだ。
「……鈍感」
香里奈ちゃんがボソっと何かを呟く。
「え?」
「き、気まぐれだから」
「気まぐれ?」
「もう!いいでしょ!私が決めたことなんだから!」
「ご、ごめん」
なんか怒られちゃった。
学校に着いてクラス表を見る。
私と香里奈ちゃんは違うクラスだった。
香里奈ちゃんを見ると、あからさまに暗い顔をしていた。
「どうしたの?具合悪い?」
「いや、違うから、その…」
香里奈ちゃんは私を見つめる。
「なんでもない!」
そう言って香里奈ちゃんは自分の教室に行ってしまった。
香里奈ちゃん、なんか顔赤かったけど……。
まさか私と同じクラスになれなくて悲しかったとか?
……まさかね!
ゲームじゃないんだから。
私もクラスの教室へと向かった。
入学式も終わり、クラスの教室で先生が来るのを待つ。
他の生徒は友達作りに励んでいるが、私はスマホで【リリー✕リリー】を起動する。
エスちゃんとエヌちゃんがホーム画面に映し出されて頬が緩む。
本当に可愛い…!一生推せる…!
なんと言ってもこの眠そうな目がお互いのピンチになるとかっこいい目になるのがギャップ萌えすぎる!!
「ねえ」
ニヤけている私に声をかけてきたのは隣の席の人。
「な、なんでしょうか…?」
「ずっとニヤけててちょっと引く」
グサッ!
「うっ……」
何かが刺さった感じがする。
冷たい言葉を浴びせてきた人、確か深宮冷希さんだっけ。
どれだけ手入れすればそうなるんだと思うくらい綺麗な髪を肩まで真っ直ぐ伸びていて、首にヘッドホンをつけている。
絶対に人気が出そうなくらい可愛い。
「ご、ごめんなさい……」
「別に、謝らなくていいけど、なに見てたの?」
「え、それは……」
「いかがわしいやつ?」
「そういうわけじゃないんですけど……」
「ていうか、敬語やめて」
「分かりま…」
深宮さんがジッと睨む。
「あ、ありがとう、深宮さん」
「それで、なに見てたの?」
「それは……ゲームだよ」
「ゲームなら、なんで言い淀んだの?」
痛いところを突いてくる。
絶対に引かれる、百合ゲーなんていったら。
昔、そうだったように……。
私は首を横に振って昔の記憶を払拭する。
同じ鉄は踏まない。
「きゅ、急に話しかけられたので」
「あ、ごめん」
「ぜ、全然気にしないで!私が人と話すの慣れてないだけだから」
「そうなんだ、私も一緒」
「そうなの?」
「あんまり人に興味ないから、一人の方が楽だし」
じゃあなんで私に話しかけたのだろう。
「変な人だと思ったから」
「心読んだんですか!?」
「顔に書いてある」
「うっ……」
ふふっと深宮さんが笑う。
その顔が天使かっていうくらい可愛い、反則だろ。
「変な人だからって話しかけちゃだめですよ?」
「そういう人は大概良い刺激をくれるから」
「刺激?」
「曲、作ってるの」
「す、すごい!」
「……そんなでもないよ」
深宮さんの顔が少し引き攣った。
何かあるのかな。
「今度、良ければ聞かせてほしいな」
「できたらね」
案外、深宮さんと話せてる。
一人っていう共通点が意外と話しやすいのかな。
ちょっと嬉しい。
HRが終わると、次々と生徒が教室を出る。
深宮さんが荷物を持って私のところに来た。
「明日も、声かけていい?」
「う、うん!私ももっと深宮さんと話したい!」
「怖くないの?私、結構怖がられるんだけど」
「うーん、最初は怖かったけど今は別に」
そう言うと深宮さんが少し微笑んで「そっか」とこぼす。
「花子、帰るよ!」
後ろから耳元でそう囁いたのは香里奈ちゃんだった。
ていうか、いつのまに来たの?
ぐいっと香里奈ちゃんが私を引っ張ると反対側を深宮さんが引っ張る。
「まだ話してる」
「もう帰るから明日にしてくれない?」
「何か用事でもあるの?」
「うっ、それはないけど…とにかく!もう帰るから!」
もっと強い力で引っ張られて教室を出た。
引っ張られた状態で廊下を歩く。
「香里奈ちゃん!」
「………」
ずっとこんな感じ。
私が声をかけても無言で私を引っ張る。
そろそろ手が痛い……。
「香里奈ちゃん!!」
私は思いっきり手を振りほどく。
掴まれた部分を撫でながら香里奈ちゃんに近づく。
「どうしたの?」
香里奈ちゃんは私の方に振り返るが、顔はうつむいたままだった。
「……私、ずっと怖かった」
「え?」
「拒絶されることが」
「拒絶?」
「でもそんなこと言ってられない、もう私が耐えれない」
下を向いていた香里奈ちゃんが私の目を真剣な眼差しで見る。
「花子は、女の子同士の恋愛ってどう思う…?」
ドキッとしてしまった。
もしかして、香里奈ちゃんに私の趣味がバレた?!
長年隠してきたのに、ついに、しかも高校始まって早々バレるなんて!
「あ、いや、別に、普通、だ、だ、だと思うよ?」
「なんでそんな焦ってるのよ」
「焦ってないし!」
危ない。
動揺をなんとか隠さないと。
香里奈ちゃんは少し考えてる素振りを見せてからよし!と拳に力をいれた。
「花子、一回しか言わないからちゃんと聞いてよ」
「は、はい」
「私、花子のことが好き、昔からずっと好きだった」
「……ほへ?」
「なにその声」
香里奈ちゃんがムスッとしてしまった。
いやだって、私の秘密がバレたことを言われると思ったから……。
そうじゃない!!
今、香里奈ちゃんが私のことを好きだって言った!?
香里奈ちゃんが私の指に自分の指を絡ませる。
「でも多分、花子はそんな風に私を見たことないでしょ?だから、これから私を好きにさせるから」
「あ…あ…!」
もうだめ、ドキドキし過ぎで頭がオーバーヒートしそう。
香里奈ちゃんの顔がどんどん近づいてくる。
「私がいないとだめな花子にしてあげる」
ゲームで似たようなシーンはたくさん見てきたけど……。
私には、耐えられない…!!
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