よるのゲーム話:幻想水滸伝II
「このゲームをやってないなんてマジで損してる、早くやれ」
中学生の時に友人にたいへん強く勧められ、私はプレイステーションのゲームディスクを手に取った。
『幻想水滸伝II』
『Ⅱ』と銘打っているのだから『Ⅰ』から勧めてくれれば良いものを、『Ⅰ』に彼女の推しキャラがいないという理由でⅡから勧められたのだ。
当時データコンバートができた『アークザラッド』というRPGはⅠでしっかりやり込んでダンジョンを制覇したりレベルを上げておく必要があったのだが、こちらは特にそういった要素はなく『前作で遊んだデータがあるとちょっと嬉しい』というライトなデータ引継ぎで単体でもストーリーの理解に支障はないとのことだったので、Ⅱから始めさせてもらった。
ストーリーが出だしからキツい。
主人公とその幼馴染が所属する少年兵部隊が、国境近くでキャンプをしていたところ(最前線に子供を出すのも如何なものかと思うが)隣国が突然同盟を破棄して攻め込み、部隊は全滅、命からがら逃げ延びた2人はその隣国の砦の捕虜になる……という、絶望のスタート。
しかしその奇襲は実は狂言であり、主人公の住む国で世論を隣国との戦争へ駆り立てるための舞台装置だった……というダブル絶望。
当時も結構ショックでしたが、リマスター版を最近遊んだところ大変ショックを受けました。このシナリオライター、人の心がない。
この主人公を取り巻く環境というのもかなり複雑でして、元々主人公は孤児であり、血の繋がりのない少女とともに義父によって育てられます。この義父が隣国の人間だった。
そのため主人公と少女(姉・ナナミ)は街の鼻つまみ者として、街外れの道場でひっそりと、しかし温かい家族として暮らしていた……という設定です。
さてこの主人公が捕虜になった砦のあるじがビクトールという男です。最推しです。
大人になってから気付きました。こいつ、めちゃくちゃカッコよすぎます。
中学生当時にはクマさんみたいなおっさんだなと思ってたのですが、今でもクマさんみたいなおっさんだと思ってます。(何言ってんの?)
「もしかしてコイツを主人公にしたかったのでは」と思うくらい、ドラマが詰まっている。当時のゲームの主人公は10代少年少女(ゲームプレイのターゲット層)がほとんどだったので、アラサーの彼が主人公だと受けなかったのかもしれません。サブキャラだったからこそ出せた味だったのかもしれませんが。
まず彼の故郷は吸血鬼によって破壊されています。その後なんやかんや放浪しながら1で傭兵として活動し、その後2でも最前線の砦のあるじ(傭兵砦)として、主人公と一緒に戦う傭兵として活動してくれます。
主人公の義父は隣国(都市同盟)の英雄でした。とある理由で追放され、主人公の国でひっそりと生涯を閉じるのですが、その理由を作った市長の娘(といっても、主人公よりかなり年上のアラサー)がこのビクトールとイイ感じの仲だった……という大人のドラマ。
ここの関係が大人になった今ものすごく好きでして、いざ戦争になりそうですとなった時に同盟軍の盟主である彼女、アナベルは各都市の市長に協力を呼びかけますが、それぞれ領内に問題を抱えていたり、利権問題があったりと一枚岩というわけではありませんでした。
その虚無感を抱えた会議が終わった夜に、ビクトールが酒を持ってアナベルを訪ねるのです。
粋過ぎる。惚れないわけないだろこんなの。
ストーリー上『なんで傭兵ビクトールと市長の娘アナベルが知り合いやねん』というのは明かされなかったのですが(外伝では語られてたのかもしれません、夜野は未プレイ)、このドライな大人の関係が堪らない。
恐らくお互いに想い合っていたのかもしれません。
「私の背がもう少し低かったら、あんたと良い仲になっていたかもしれない」
「今じゃあんたは偉くなりすぎて、俺じゃ釣り合いが取れねぇ」
これを直接目の前の人間に言える関係性。(なんかこんな感じの会話だった気がする)
このシナリオのすごいところは、この酒を飲んだ後、彼女は暗殺されてしまうところ。この直前に主人公に「あなたの義父の話をしてあげよう」と約束したばかりでした。(そして暗殺したのは主人公の幼馴染、ストーリーが深すぎる)
で、この主人公の義父について話してくれるのがビクトールです。このシナリオがすごい。ここでシュウ(正軍師)とかに語らせるのではなくビクトールに語らせることでアナベルとの関係性がしっかり出ている。上手いなあと思います。
これは中学生当時には理解できなかった関係でして、大人になってから遊ぶと違った感想を持つんだな、そしてシナリオの作りこみがすごいんだなと感動しました。伏線の回収が上手い。
別のゲームですがファイナルファンタジー8を大人になってから遊んだときも同じ感想を持ちまして、こちらはキャラクター造形が緻密に作られてるなという印象を持っております。FF8の話はまたどこかで。
大人がカッコよすぎるんですよ、このゲーム。
ちなみに一番共感したのはフリードさんです。いい上司に恵まれたんだ、彼は。
真面目な政務官っていいですよね。しかも美人の奥さんがいて庭付き一戸建て所有者。ガチの勝ち組です。羨ましい。
あと中学生時代に萌えていた(死語ですね。あえて使わせていただきます)赤い騎士と青い騎士。多分彼らが私の人生をブロマンスへと狂わせました。責任取ってください。
来年アニメになるそうなので、ぜひその世界観を味わってみてください。どこまで深くやるかはわかりませんが、気になった方はリマスター版のゲームを手に取ってみることをお勧めします。幻想水滸伝はいいぞ。バグ技全部使えなくなったけども。ビッキー、リマスターになったらテレポートに『マクドール邸前』とか追加してくれてもよかったじゃないかと思いながら、トランへの山道を今日も登るのである。
ちなみに中学生時代に勧めてきた彼女の推しキャラには私はハマりませんでした。残念!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます