第11話 客人

 

 数日後。今度は来客のようだ。

 カイ様の知り合いの方たちだという。


 数日ぶりに見たカイ様は、何だかお元気そうだった。

 大事なお客様なのか、門の外まで出迎えていて


「マレオン、ブラヴァート、よく来てくれた、ゆっくりしていってくれ」


 と親しそうに雑談している。


 おかげで厨房はてんやわんやの騒ぎだったけど、おもてなしできるのは嬉しい。


 お出迎えタイムのあと、久しぶりにリネンさんと顔を合わせて話せた。

 よほど嬉しいのか、ニコニコと教えてくれるリネンさん。


「カイ様の、ご友人だそうですよ。確か、王国任務のときに知り合い、協力してくださっている方たちだそうです」


「へぇ、そうなんですね」


 何だかとっても頼もしい。しかも、遠目でも麗しいご友人たちだ。


 マレオンという男性は、あごひげがあり、がっしりとした身体つきで、騎士風の衣装。剣を身に着けている。


 ブラヴァートと呼ばれた男性は、つやつやとした白銀の髪で、180㎝は超えていそうな長身。深い色の丈長の衣装が似合っている。そして、何より笑顔がまぶしい。


 カイ様と友人お2人が並んで屋敷の庭園を歩いているのを盗み見て、若いメイドたちがキャーキャー言っている。

 ピンク色のハートがっているのが見える……気がする。


 久しぶりにメイドたちを見たけど、前より肌や髪のツヤがいい気がする。

 以前、自分たちがした仕打しうちを都合よく忘れたのか、鉢合わせしても顔をそらされるだけ。私も、そのほうがいい。



「うまい!何だこれは!うまい、うまいぞ」


 うまい、を大声で連呼するのが聞えてきた。マレオンさんだ。


 廊下に待機していたメイドの何人かのツボにはまったのか、うつむきながらも笑っている。


 今日の料理は、ささやかながらおもてなしメニュー。

 野菜3種のポタージュスープに、パンも沢山、用意している。

 あの広大な小麦畑のおかげで、沢山焼いてもうるさく言われなくなった。


 そして、今日の目玉は『チキン(風)の香草焼き』だ。

 味はもちろん、今日はおもてなしが目的なので、見た目の華やかさに気を配ってある。

 盛り付けに関しては、意外にというか、ルーヴァンさんが上手いのだった。


 前菜でうまいうまい、を連発していたマレオンさんが、メインのお肉を口に運んだ瞬間から、静かになった。


「?どうした、すまない口に合わなかったか」


 と心配そうにカイ様が聞くと


「いいや、言葉が見つからなくてな。こんな素晴らしい料理は初めてだ!」


 そのあとも、黙々と、でも大量に口に運んでいた。

 かなり気に入っていただけたようで、何よりだ。


「私も、魔物肉ではない肉を、こんな風に食べられるとは思わなかった」


 と、カイ様があいづちをうつ。

 ブラヴァートさんも、笑顔でフォークを口へと運んでいる。

 そこで今度は、ブラヴァートさんが口を開いた。


「このルチェ……オランですか?私は長年、行商をしていますが、こんなにみずみずしく、オレンジ色が綺麗なものは初めてみました」

「そうか。つい先日から、屋敷でれるようになったんだ」

「こちらで採れたもの。それは興味深い」


 ブラヴァートさんは、行商人として様々な国を訪れたことがあるようだ。そのあとは、珍しい異国の話で、もちきりだった。廊下で聞き耳を立てているメイドたちの話題にのぼるだろう。


 2人はまたすぐに訪れると約束をして、屋敷を去っていった。



 まだ、日が高い。料理長のルーヴァンさんから、急に呼び出された。


「街へお使いにいっとくれ。お客が思いのほか、食べていったからな。明日の食材が足りない。今晩の支度したくには入らなくていいから、きちんと調達してきて」

「分かりました!」


 答えてからふと、野菜畑はけっこう実っていたけど……?と、かすかな疑問がよぎった。

 まあ、料理長が言うんだから、これでいいんだろう。


 私は食材リストを受け取ると、前掛けを外し、簡単な身支度をした。

 そして、教えられた通りに停留所ていりゅうしょまで歩き、乗り合いの荷馬車に乗り込む。


 街へ行くのは、ここへ来た日以来だ。

 思いがけない外出、ちょっと嬉しい。窓から見える景色も違って見える。

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