占術戦記〜六人と新たな夜明け〜

白雪 愛琉

第1話 創術の遺跡へ

プロローグ 〜星と人間の対話〜


遥か昔、大地がまだ混沌としていた時代。

人々は夜空を見上げ、瞬く星々に耳を傾けた。

「雷神の怒りか、太陽神の微笑か」――

天と地の声を聞き、未来を知ろうとする者たちがいた。


ある夜、若き命術士の星架(せいか)は、初めて“星魂”の輝きを感じた。

小さな光が空から降り注ぎ、彼女の命紋に刻まれる。

「これが、占いの力…か」

星と人、人と運命の対話が、今、始まろうとしていた。




第一章:古代の神託 〜神々の言葉を聞く者たち〜


紀元前3000年、バビロニアの王宮。

王が戦に赴くべきか、作物は豊作か。すべての答えは、星の軌道にあった。

王の側に立つのは、粘土板を手に星を読み解く占星術士たち。

彼らの手が一瞬で星紋を描くと、大地の空気が震え、王に未来の啓示が降り注ぐ。


一方、エジプトでは神官たちが聖なる鳥の飛び方を観察していた。

「ナイルの水位は星の巡りに従う」

星と水の運命が交錯する瞬間、予言が世界を揺さぶる。


星架はその光景を夢に見て、気付く。

「占いとは、戦うための知恵でもあるのだ」と。




第二章:神聖なる卜占 〜運命を刻む骨と甲羅〜


時代は紀元前1400年、中国の王宮。

透真(とうま)は火で炙った亀の甲羅を手に、ひび割れの形を読み解く。

「吉か、凶か…」

ひびの形に未来が刻まれ、雷のような閃光が彼の手から放たれる。


遠くギリシャでは、デルポイの神殿に巫女ピュティアが立つ。

口元に微笑を浮かべ、神の言葉を預かる。

だが、彼女の未来の言葉は曖昧で、解釈次第で世界は変わる。

透真はその不確定さを笑い飛ばしながらも、雷撃の魔法で現実を切り裂いた。




第三章:運命の数と形 〜命術と相術の誕生〜


紀元前500年、インドの僧たちは考えた。

「生まれた瞬間の星が、人の一生を決める」

星紋に刻まれた数字は、命のコードとなり、戦いの力に変わる。


同時期の中国、皇帝に仕える相術士は顔相や手相を読み取り、戦の勝敗を予測した。

歩き方、声色、表情の相位――

彼らの目に映る未来は、文字通り武器だった。


星架は夢の中で見た。

古代の命術士と相術士が力を合わせ、嵐のような敵に立ち向かう光景を。

「占いは歴史の武器だったんだ」と、彼女の心に火が灯る。




第四章:神秘の書と魔術の時代


中世ヨーロッパ。

占星術と魔術が結びつき、錬金術師や魔女たちが力を競い合う。

だが、教会の迫害が影を落とす。

「未来を知ることは神への冒涜」――

多くの占い師が裁きを受け、命を散らしていった。


それでも王侯貴族は密かに星を見上げ、占星術師を抱えた。

ノストラダムスの詩は、未来の戦を予言する呪文となり、人々を魅了した。




第五章:科学と占い 〜運命と心理学の交差点〜


時は20世紀、科学が世界を支配し始める。

占いは迷信とされ、多くの魔法が忘れ去られた。


しかし心理学者ユングは言った。

「人間の無意識には共通するパターンがある」

タロットや占星術は、未来を当てる道具ではなく、自己理解の魔法へと進化する。


透真はカードを手に笑った。

「運命も結局、自分次第ってわけか」




エピローグ 〜未来へ続く占い〜


現代、星架はスマートフォンの画面に光る星々を見つめる。

AIやインターネットによって、占いは形を変え、誰でも未来に触れられるようになった。


大昔、バビロニアの占星術師が星を見上げたように、

私たちもまた、自分の未来を知りたくて星を探す。


しかし答えはいつも一つ。

「未来は、私たち自身の心の中にある」


星の光は揺らめき、次の冒険の幕を静かに開けた。

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