2月14日 20:09 シティ・フィールド

 前半を終えて3-0。


 陽人が指揮官となってから、ここまで点差をつけられたのは初めてであるが、その点には動揺がない。


 しかも内容もそこまで絶望的ではない。点差は別として、もっとやられると思っていたが、思った以上に持ちこたえた。


 コールズヒルのU21、ハローズ戦と経験したことでやられてもやられたなりに動き、リカバリーする意識がついてきているのだろう。


 もちろん、ハイウェイがいっぱいいっぱい来ていないというのもあるのだろう。


 舐めているわけではなさそうだが、90パーセントくらいでプレーしていた印象だ。


 もちろん、9部のレンジャーズ相手にハイウェイが120パーセントの力を出す必要はどこにもないから、全くおかしなことではないが。



 点差は想定範囲内、内容は思ったより良かったということで、後半に向けて考え甲斐はある。



(後半スタートをどうするかだな)


 マルク・フサールと弦本を入れることは決めている。


 問題は、スタートから入れるか、少し置いてから入れるか、だ。


 後半少ししてから入れるというのは、陽人が時々やっていることだ。


 前半の対策をして後半、メンバーまで入れ替えたところで相手がやり方を変えてきたら、更なる大規模な修正が必要になる。それを避けたいので後半しばらく様子を見て、5分から10分くらいで交代すれば修正が少ない。


(ハイウェイが後半変えてくることはないと思うけれど)


 再修正の必要はなさそうだが、内容が物凄く悪いわけでもない。


 弦本はともかく、マルクはそれほどスタミナがあるわけではないので、少しでも短い方がいいだろう。


 後半少ししてからの交代、という形で陽人は決心する。



 その方針も含めて、選手達に話をする。


「さすがにこの相手だからスコアは仕方ない。むしろよくやれたと思う」


 そう切り出し、後半に交代した後の布陣などを簡単に伝える。


 もっとも、この説明が頭に入っていない選手も多そうだ。ハローズ戦に引き続いて全員が全力でやっている。目の前のことに必死で、陽人が説明をしてもすぐに入ってこないのは仕方ない。


(ま、仕方ないか)


 言葉で認識させるのは難しそうだが、練習ではやっている。


 マルクと弦本が入って実際に動き出せば、身体が勝手に思い出すだろう。



 既にプレーしている選手達、前半を必死に戦った選手達に戦術の細かい部分まで認識させるのは難しいが、それでも一つだけ変えたいことがある。


「もう接戦でもないのだし、セットプレーでは練習したことをやってみよう」


 このレベルの相手で試せる機会はもうないかもしれない。


 だから、できる時にやってみよう。


 そう提案し、アルバインも「よし、やってみよう」と言う。


「よし、あとは後半、できるだけのことをやってこい」


 そう言って送り出した。



 後半、スタートからマルクと弦本には準備万端の状態にさせて、臨むことになる。


 ハイウェイは交代なし。3-0とリードしているうえ、前半終了後に監督のブラフも満足そうにうなずいていたからこれは当然だろう。



 後半スタートもハイウェイが攻め込んでくる。


 レンジャーズは押されつつも何とかシュートを打たせる前で防いでいる。


 ただし、カイルソンとトレブの両サイドを完全に防ぐことも難しい。


 カイルソンの突破を止めようとして、ガルシアがコーナーに逃れた。


「さて、どうなるか……あれ?」


 コーナーキックになり、陽人は「いよいよか」と思ったが、ピッチの中では何も変化がない。


 前半と同じやり方である。


「マルク、弦本。アルバインもガムースも、後半からはセットプレーのやり方を変えることに同意していたよな?」


 自分の勘違いかと思って2人に聞いてみると、2人とも「同意していたし、全員に伝わった」と答えた。


 ということは、忘れたのか、あるいは怖気づいたのか。



 カイルソンがコーナーキックを蹴る。


 中でガムースがギューリトルと競り合うが、勝てない。


 ハイウェイに4点目が入った。



「冗談じゃないよ」


 文句を言っても仕方ないが、陽人はテクニカルエリアまで出て文句を言う。


 失点が増えるのは仕方ないが、陽人の指示に「分かった」と言いながら、変えずにやられたのはいただけない。言うことを聞かないなら失点するな、そのくらい言いたくなる。


「……たく、これなら後半開始から2人を変えるべきだったか。いや、変えない方が良かったのか」


 すぐにマルクと弦本を入れる準備をしながら陽人は考える。


 替えたら改善されていたとも言えないのかもしれない。恐らく「やはりリスクが大きいしやめよう」となったのだろうから。


 それで替えて言うことを聞かなければ、もう1人入れる必要があった。

 その無駄を考えれば、この段階で交代する方が良かったのかもしれない。


「100点取られてもいいから1点絶対取れとアルバインとガムースに伝えろ」


 陽人はそう言って、マルクと弦本を送り出す。



 後半6分、マクヘインとハミルトンを下げ、マルクと弦本を投入した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る