『好きになったら負け』なはずなんだが、もしかするとお互いにずっと好きだったのかもしれない
α作
#プロローグ #好きになったら負け
「恋愛が神頼みになる時代が来るなんてな——」
スマホの画面に表示された広告を、ぼんやりと眺めながらつぶやいた。
そこには、ピンク色を基調とした派手なデザインで、こう書かれている。
『恋愛成就率、驚異の98.7%! 話題沸騰中の恋愛アプリ「恋むすび」』
若い男女に人気があって、SNSでも話題となっていた。もちろんクラスメイトたちの間でも、最近はこのアプリの話が絶えない——
「ねえ、聞いた? "両片思い"だったあの二人、ついに付き合うことになったらしいよ!」
「えーっ、凄っ!」
「恋愛が成就するって、ホントなんだね」
「なんか、本気で恋愛の神様が宿ってる感じするな」
「分かるかも! あたしも早く使ってみたいなー!」
その『神様』という噂は、どうやらあながち冗談でもないらしい。
このアプリ、縁結びで有名な神社が監修しているようだが、心理診断やAIによる分析を組み合わせて、驚異的な精度で『恋愛の未来』を導き出しているそうだ。
「別にそんなのに頼らなくても——」
今は恋というのが、自然に生まれるものだとも言いきれない。
なぜなら高校二年生の橘春樹は、恋愛が縁遠いどころか、まるで関係ない日々を過ごしてきたからだった。
(浮かれすぎだぞ、皆。落ち着けこの世界)
「……私、春樹とこれやりたい。い、一緒にやってみたい」
隣から、声が聞こえてくる。
顔を上げると、そこには幼なじみの桜庭 蒼依が立っていた——いつものように勝ち気な目を向けながら。
「は?」
「つ、付き合いたいとか、そういう訳じゃ、全然無いんだけど」
勝ち気な目を向けていたかと思えば、今度は自分の提案を、自分で否定する。
「春樹も素直じゃないっていうか。そ、それは私もなんだけど……」
「だから、どうしたんだよ」
いつもと雰囲気の違う蒼依。肩まで伸びた亜麻色の髪を何度か触ると、視線をそらしては、戻してを繰り返している。
「と、とにかく勝負して。このアプリは勝負のためだから」
「あんたが私を好きになったら、私の勝ち。私があんたを好きになったら、私の負け」
勝負とは、今の二人の関係を変える合言葉——
「蒼依。自分が言ってることの意味、分かってるのか?」
蒼依のことを、昔から知っていれば、負けず嫌いな性格にはきっと納得する——でも、この話を負けず嫌いで済ませるには無理があった。
「そんなのずっと分かってるよ。いつも何も変わらない——もう、このまま黙って過ぎてく時間にだって負けたくない」
こうして、二人は『恋愛勝負』に巻きこまれていくのだった。
自分たちの心と、関係性への勝負に——
「いつも喧嘩になっちゃうし」
「それは蒼依が喧嘩腰で来るからだろ」
「うるさい。だから、これで勝負するのよ」
「だってさ勝負って、お前——」
本当に分からない。『幼なじみ』のはずなのに。
きっと遠くない未来。この勝負に負けてしまうのは——果たして、どちらなのだろうか。
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