第30話:物流が変わると、世界が変わる
協賛ファンド――それはもはや、ひとつの国のための仕組みではなかった。
各国からの出資が正式に集まり始めると、“生活支援投資会社” の周りに、目に見える変化が起き始めた。
まず最初に変わったのは――道だった。
―――
投資会社が作るドーム、加工施設、倉庫――これらへ資材を運ぶため、各国はこぞってインフラを整備し始めた。
「道を広げなければ、物流が回らん!」
「橋を補強しろ、輸送量が桁違いになるぞ!」
「馬車を改良し、荷物の積載量を倍にするんだ!」
インフラ整備ファンドと協賛ファンドが重なり、道が広がり、舗装され、国と国が“線”で結ばれはじめた。
(今まで点だった村が……線で繋がっていく)
私は村の高台から景色を見て、胸に不思議な温かさを感じていた。
―――
次に動いたのは商人たちだった。
「加工品を運ぶなら、この村が中心になるだろう」
「農業ドームの近くに倉庫を建てるぞ!」
「この地域が“交易の中心地”になるぞ!」
そして――
「遠方に出るキャラバンと、村に戻ってくるキャラバンの“定期便” を作ってくれないか?」
と、商人たちが投資会社に依頼をしてきた。
(定期便……つまり物流の基盤か)
私はうなずいた。
「やりましょう。購入ファンドと連動すれば、全部効率化できます」
―――
こうして始まったのが――生活支援物流ファンドの試験開始だった。
これは以下のような仕組みだ。
●生活支援物流ファンド(カイのやさしい解説)
1. 協賛国から物流資金を出してもらう
2. 投資会社が「路線」と「倉庫網」を整える
3. 物流改善でできた利益を参加国に分配
これによって、
・遠方の国の作物が早く届く
・加工品が鮮度を落とさず流れる
・工業製品や魔道具の交換がスムーズになる
小さな村が、世界の物流の“起点”となっていった。
―――
協賛していた各国の役人たちの報告が次々舞い込み、私はその度に目を丸くした。
「食料品の価格が安定してきた!」
「暴落も暴騰も起きにくくなっている!」
「物が行き交う速度が、以前の三倍になっているぞ!」
さらに驚くべきことに――
「交易税の収入が増加しました!」
「物流が活発で、港が常に満杯です!」
といった報告までも届いた。
(……たった一つの仕組みで、ここまで世界が変わるんだ)
驚きと同時に、責任の重さを噛み締めた。
―――
協賛に前向きだった国は喜び、仕組みに乗らなかった国々は焦り始めた。
「農業ドームを持つ国が増えている……!」
「加工品の流入が増え、国産品が売れない……!」
「早く協賛しなければ、取り残される……!」
この現象は、まさに――物流改革による“世界の再編” だった。
―――
ある夜、私は机に広げた地図を眺めていた。
今までは、ただ色の違う国々の境界線。
それぞれの国が独立して存在するように見えた。
でも今は違う。
(線が……どんどん増えている)
道が、海路が、物流路が。
各国をつなぐ線が、まるで蜘蛛の巣のように広がっている。
それはまるで――
“世界が一つの大きな村のように”
近づいていく感覚だった。
父が隣で笑った。
「カイ……なんだか本当に、大きな世界を動かしてるな」
「そうだね……でも、まだ始まったばかりだよ」
―――
協賛ファンドの仕組みは、次の段階へ進み始めていた。
「物流網をさらに広げたい」
「次は燃料や馬車改良の研究ファンドはどうか?」
「我々の国にも加工基地を作れないか?」
各国が次々と新しい協力体制を提案してくる。
(もうこれは……ただの商会じゃない)
取引先は国、内容は国際投資、利益の分配は協賛ファンドで行われる。
おじいさんがぽつりと言った。
「坊……世界はもう、昔の形ではおられんぞい」
(うん……もう後戻りはできない)
―――
小さな村で生まれた小さな商会は、今、世界の道と海をつなぐ“中心線”になった。
物流が変わり、
価格が変わり、
働き方が変わり、
各国の考え方すら変わり始めている。
(次に必要なのは……この広がった物流を“守る”こと)
私は地図の線を見つめながら、未来への責任を静かに胸に抱いた。
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