第十一話 誰を選ぶのかじゃなく


 秋斗の言葉は、真希にとって意外だった。

 あんなふうにまっすぐ言ってくれるなんて、正直、思っていなかった。


(――わたしのこと、ちゃんと見ていてくれたんだ。)


 そう思うと、涙が出るほど嬉しかった。

 でも、それと「好き」という感情は、やっぱりどこか少し違う気がした。自分の中でイコールにならなかった。

 それが何故なのか。答えは分からない。


 帰り道、ふと歩くスピードを緩めて、立ち止まる。

 スマホを取り出して、遼太の名前を見つめる。けれど、押せない。


 (――わたしはずっと“選ばれたかった”――)


 遼太に、見て欲しかった。自分自身を見て欲しかった。振り向いて欲しかった。

 でも――「選ばれたい」と思うことと、「好きでいたい」と思うことって、イコールにならないんじゃないか、同じじゃないんじゃないか?

 そう、最近、思うようになってきた。


 秋斗は真希のことをちゃんと見てくれた。

 でも、それを受け取るって、ただ甘えるだけになってしまう。それじゃあダメなんだと真希は思った。


 真希は、もう子供じゃない。立派な大人だ。自分で選ばなきゃいけない。


「遼太が私を好きかどうか」


 じゃなくて。

 

「私が、本当に遼太を好きでいる事を選ぶのかどうか」


 秋斗のまっすぐさを思い出すたびに、自分自身の曖昧さが浮き彫りになる。


 誰かに気持ちを伝えられるって、凄い事だし、素晴らしい事で、素敵な事だと思う。

 ちゃんと、自分の心を自分で抱えてるっていう事なのだから。


 ――でも真希はまだ抱えきれてない。

 遼太を想ってるはずなのに、秋斗の言葉に心が動いてしまっている自分がそこに確かに居たのだ。


 それは、きっと真希の中にも、新しい何かが芽生えかけているって事なんだと思う。


 その日の夜、部屋の灯りを消して、ベッドに横になりながら、ひとつだけ決めた事がある。


「私は、自分の気持ちに整理をちゃんと付けて、答えを見つめる。それから、選ぶ」


 人を好きになるって、きっと相手のこと以上に、自分を知る事なんだ。

 その時小さくひとつ、真希は成長を遂げた気がする。


「……難しいなぁ……」


 ボヤきながら、どこか楽しそうに思い悩む。

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