第5話 新たな行き先

 ラルクは勢いに任せて行ってしまったが、よく考えれば、先ほどのセリフはとても恥ずかしいものであることに気がつく。


 それはまるで、プロポーズのようなセリフであったのだ。


 ラルクは勢いに任せて恥ずかしいことを言ってしまったと後悔するが、少女の力になりたいというのは本心である。


 だが、一つ大事なことを忘れていたことに気がつく。


 それは、


「今更感すごいんだけど、君の名前教えてもらってもいいかな?」


 少女の名前をいまだに知らないということだ。


 ラルクは彼女の顔をどこかで見たことがあるような気がしている。


 しかし、何も思い出せない。


 そのため、彼女の名前も分からない状態なのだ。


 ラルクから名前を聞かれた少女は目を大きく見開いて驚く。


 そして、柔らかい笑みを浮かべながら名前をラルクへ伝える。


「ふふ、まさか私のことを知らずに助けてくれていたとは思いもしませんでした。貴方はとても優しい方なのですね。それでは改めて自己紹介をさせてもらいます。私はアルグランド公爵家長女、ミア・アルグランドと申します」


 少女はアルカドラ王国の公爵家であるミア・アルグランドであったのだ。


 まさか、相手が貴族の中でも大貴族、公爵家であるとは思いもしなかったラルクは驚くかのように思えた。


 しかし、彼は特に驚いた様子はない。


 そして、ラルクは平然とした様子で話しかける。


「はえーアルグランド公爵家って、魔術師の大名門のところか。ミアは凄いところの出なんだね」


「あまり驚かれていないみたいですね。普通は畏まったりするものですが」


「まあ、驚いたには驚いたけど、ミアは既に勘当されてるでしょ?それなら、公爵家ではないから畏まる必要はないかって思ったんだ」


「ラルクさんは中々酷いことをおっしゃるのですね。私はまだ心の傷が治っていないのですよ?」


「まあまあ、ミアはあんまり実家のことが好きじゃないんだから、良かったじゃん。嫌な人たちと離れることができて。それよりもなんで俺の名前を知ってるの!?」


 ラルクはミアが自分の名前を知っていることに驚きを隠せず、声を荒げてしまう。


 そんなラルクを見てミアは不思議そうに首を傾げる。


「逆に聞きますが、王都で貴方を知らない者がいると思うのですか?貴方はあの王都最強と名高い聖者の剣のサブリーダーですよ?知らないわけがないでしょう」


 驚きを隠せないラルクへミアはさも当然かのように答える。


 ラルクは自身のパーティーが有名であることは知っていたが、自分の存在はそこまで有名ではないと思っていた。


 ラルク以外のパーティーメンバーは何かしらの突出した才能を持っていたり、肩書きが凄かったりなど、目立つことが多い。


 一方、ラルクはこれといった突出した才能もなければ、家柄も特殊ではない。


 そのため、自分だけパーティーの中で影が薄いと思っていた。


 しかし、実際はミアの言う通り彼もそこそこ有名であり、王都ならば彼を知らないものはいないとされている。


 一部では聖者の剣のおこぼれをもらっている落ちこぼれなどと言われたりもしているが、大部分の人は彼も最強の冒険者だと思っている。


 まさか、自分がそこまで有名だとは思ってもいなかったラルクは少しだけ嬉しい気持ちになる。


 だが、今となっては関係のない話だ。


 ミアが自分のことを知っているとなると、ラルクは自己紹介をする意味はないと省くことにする。


 そして、ラルクは本題に入る。


「まあ、自己紹介を省くとして、ミアは本当に頼れる人は誰もいないの?貴族なんだし、派閥の人とか親戚とかいっぱいいそうじゃん」


「そうですね、私は第三王子の反感を買ってしまったので、この国に頼れる人はいません」


「やっぱりかあ。貴族はメンツはそこらへんのしがらみが面倒くさいよね。王子の反感を買ってまで助けてくれる人はいないか」


「いいえ、一人だけ心当たりがあります」


 ミアはラルクへ覚悟を決めた眼差しを向ける。


 そんな彼女を見たラルクは固唾を飲む。


 そして、ミアはラルクへ告げる。


「私の母方の祖父なら助けてくれると思います。ですが、祖父はアルカドラ王国ではなく、隣国のサラミス公国の貴族なのです。なので、彼の助力を求めるには国を越えなければならないのです」


 頼れる祖父は隣国のサラミス公国であるため、国境を越えなければならないと。


 ミアから頼れる人物がいることを聞いたラルクは、


「おっ、サラミス公国か。あの国は凄く良い場所だからちょうど良いんじゃない?俺も久しぶりにサラミス公国に行きたいって思ってたところなんだよ。だから、おじいちゃんのところまで送ってあげるよ」


 特に困った様子もなく、サラミス公国に向かうことに乗っかってくれる。


 まさか、気軽に自分からの提案を受け入れてくれるとは思ってもいなかったミアは少し驚く。


「本当に良いのですか?国境を越えるのですよ?もしかしたら、二度と聖者の剣の皆さんに会えないのかもしれません。それでもついて来てくれるのですか?」 


「俺は言ったでしょ?君のことを助けたいって。だから、俺が責任を持ってミアをサラミス公国にいるおじいちゃんのところまで連れて行ってあげるよ」


 ラルクは驚いているミアに笑顔でそう答える。


 そうして、ラルクはミアと共にサラミス広告へ向かうことを決めたのだった。









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