第2話 衝撃的な出会い

 聖者の剣を抜けたラルクは早速、途方に暮れてしまう。


 勢いに任せてパーティーを抜けたラルクであるが、今後のことなど何も考えていなかった。


 パーティーを抜けたことでラルクは職を失ったのも同然だ。


 まずは職探しからしなければならない。


 とは言え、今のラルクは新たな職を探すような気分でもない。


 そのため、ラルクは王都を何も考えずに適当に歩いて回る。


 そして、ラルクは自分がパーティーを抜ける判断を下すことになった事件を思い出す。


 あの時、ラルクたち聖者の剣はBランクダンジョンの調査を行っていた。


 ラルクたち聖者の剣は冒険者協会と呼ばれる組織に属しており、その組織から依頼が斡旋される。


 また、冒険者協会ではランク制度というものが存在し、冒険者協会に所属する冒険者はEからSSランクの七段階で区分けされている。


 基本的に最高到達点はSランクとされており、SSランクは伝説の勇者クラスの実力がなければなれない特別なランクである。


 そして、聖者の剣はAランクという高ランクのパーティーであった。


 そんなAランクパーティーである聖者の剣は冒険者協会が定期的に行っているダンジョン調査の依頼を受け、Bランクのダンジョンに潜っていた。


 この世界にはダンジョンと呼ばれる迷宮が存在しており、ダンジョンにも冒険者のランクと同じようにランク分けされている。


 冒険者はこのダンジョンからドロップする宝具や魔物の素材などを売って生計を立てている。


 また、冒険者協会では依頼などを受けることもでき、この依頼で生計を立てている冒険者もいる。


 ラルクたちも今回この依頼を受け、ダンジョンの調査を行っていた。


 ラルクたちが潜ったダンジョンはランクがBとされている。


 そのため、Aランクパーティーである聖者の剣にとって調査対象であるダンジョンは低難易度であった。


 特に彼らはAランクパーティーの中でも最もSランクに近いと言われているほどの実力者集団であるため、すぐに終わるような依頼であった。


 しかし、彼らに不幸が訪れる。


 本来ならBランク相当のダンジョンのはずなのに、彼らの前にSランクダンジョンに出てくるような魔物が現れたのだ。


 それもただのSランクではない。


 Sランクの中でも最上位に位置するダンジョンのボスレベルの魔物が複数現れたのだ。


 ラルクたちはこの異常事態の中、必死にダンジョンから脱出するべく行動した。


 しかし、聖者の剣でもヒーラーを担うニーナが魔物の攻撃により重傷を負ってしまったのだ。


 それは魔物がラルクへ向けて放った攻撃から守るために負った怪我であった。


 その後のことはラルクはよく覚えていない。


 何とか脱出することに成功したラルクたちは直ぐにニーナを診療所に連れて行った。


 彼女は重症であるものの、ラルクが回復魔術をかけていたことが功をなし、ニーナは一命を取り留めることができた。


 ラルクはニーナが一命を取り留めたことに安堵した。


 だが、ラルクがヘマをしなければ、ニーナがこんな大怪我をすることはなかったことに気がつく。


 ニーナは後衛の支援職だというのに攻撃職のラルクを庇って怪我を負ったのだ。


 本来ならラルクが助けなければならないニーナに庇われた。


 これはラルクが聖者の剣において足手纏いである証拠である。


 ラルクはそう思い、なあなあでパーティーに残り続けていたことに激しく後悔した。


 そして、大切な仲間を守るどころか、重傷を負わせてしまった自分に失望した。


 そうして、ラルクは聖者の剣から抜けてしまった。


 自分が聖者の剣を抜けた理由を思い出したラルクはいつの間にか城門の上にやって来ていた。


 ここはよく聖者の剣のメンバーたちと景色を眺めに来た思い出の場所である。


 そんな場所に一人やって来たラルクは心の中にパーティーを抜けたことに後悔する自分がいることを思い知らされる。


 だが、ラルクは今後聖者の剣に戻ることは決してないだろう。


 ラルクにとって聖者の剣は大切な仲間たちであるため、そんな彼らを危険な目に合わせることは絶対に避けなければならない。


 そして、その原因になりかねない自分は絶対に戻ることはできない。


 ラルクは大きなため息をつく。


 自分にもっと才能があれば、仲間たちの元から離れずに済んだのに。


 ラルクはそう思いながらため息をついていると、自分の横を通り過ぎる少女の姿が目に入る。


 その少女は美しく長い銀髪を靡かせている。


 年齢は12歳くらいだろうか。


 まだ成人していないことが見て取れる。


 そして、銀髪の少女をラルクはどこかで見たことがあるような気がした。


 一体、どこでこんな少女のことを見たのだろうかとラルクが頭を捻っていると、少女が城壁の柵に手を乗せる。


 彼女も自分と同じように何かあって黄昏に来たのかと思ったラルクであるが、彼女の顔をもう一度見た時、その考えは変わった。


 次の瞬間、少女は城壁の柵を乗り越え、その場から飛び降りようとする。


 少女は溢れる恐怖から一雫の涙が目からこぼれ落ちた時、誰かが彼女の手を掴む。


 少女が驚いたような表情で顔を見上げると、そこには自分の手を掴むラルクの姿があったのだった。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る