激走! 異世界個人タクシー 〜メーターは回るよどこまでも。稼いだ金を「スキル」に全ツッパしたら、勇者より強くなりました〜

@kotoha-houkago

第1話:いきなりのフリーズ演出(ステージチェンジ)!?

ポーン


『この先、300メートル、渋滞があります』


聞き慣れたナビの音声。


画面上部には【岡山市北区 中央町】の文字。


金曜の夜じゃ。飲み屋街からの客を期待して、わしは愛車「ジャパンタクシー(深藍)」をゆっくりと流しとった。


「はいはい、了解しました」


わしはナビに向かって短く答え、ハンドルを切ろうとした。


その時じゃった。


ザザッ……ザザザッ……!


突如、ナビ画面にノイズが走る。


周囲のネオンの光が、まるで停電したように一瞬でかき消された。


車体がガクンと揺れ、タイヤのアスファルトを噛む音が、ジャリジャリという乾いた土の音に変わる。


(あん? 故障か?)


わしは舌打ちを堪え、ナビ画面に目を落とした。


次の瞬間。


プチュン。


視界から音が消えた。


ナビ画面がブラックアウトし、暗闇の中に黄金色の文字がタイプライターのように打ち出されていく。


『 G P S 信 号 』


『 捕 捉 不 能 』


『 エ リ ア 更 新 』


ドクン。心臓が跳ねる。


そして、けたたましいファンファーレと共に、画面が再起動した。


バァァァァン!!


【アストラディア王国 西部荒野・ドラゴンの巣窟(デンジャラス・ゾーン)】


「……あ?」


ナビが表示した地名を見て、わしは老眼鏡の位置を直した。


窓の外には、紫色の空と、見渡す限りの赤い荒野。


そして遠くの空を、パチスロの役物(ギミック)のように巨大なトカゲが旋回している。


「……アストラディアって何なら!! どこならそこは!!」


わしがツッコミを入れたその時、ナビが冷徹な警告音(アラート)を鳴らした。


『警告:LPガス残量、低下。』


『残り走行可能距離、あと15km』


視界の端で、燃料計のランプが赤く点滅を始める。


スロットならまぁまぁ熱いが、これは激ヤバ、死亡フラグじゃ。


この車において、ガス欠は即ち「死」を意味する。


ガスが切れれば、エンジンで稼働している最強の【車体結界(絶対防御)】も消え、わしはこの灼熱の荒野で干物になるか、あのトカゲのおやつになるだけだ。


「……客だ。客を乗せて、金を稼ぐしかねぇ」


わしは血走った目で荒野を見渡した。


すると、バックミラーの端に、砂煙を上げて走ってくる集団が見えた。


金髪の青年、杖を持った少女……。


そして彼らの背後には、口から炎を漏らす本物のドラゴン。


『 チャンス キャラ 出現 ! 』


わしの脳内で、勝手にテロップが出た気がした。


あれは間違いなく「上客」だ。今、この瞬間に喉から手が出るほど「逃げるための足」を欲している!


「へっ、お出ましだぜ……!」


わしは左手で「空車」の表示灯を確認し、ハザードランプを点滅させる。


キキッ、とタイヤが赤土を噛む。


わしは絶妙なブレーキングで、走ってくる一行の進行方向に、滑るように車体を割り込ませた。


ウィィィン。


電子音と共にスライドドアを開け、わしはプロの顔(営業スマイル)で声を張り上げた。


「お客さん! ご乗車ですか!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る